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海外トレンドに見る、RFIDの可能性

− 第9回 −

〜上智大学 荒木教授が語る〜 流通業界での米国RFID最新動向 (2007年1月22日公開)

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 NPO法人「食品流通高度化推進協議会」は、昨年、4月に引き続き9月にも米国へRFID動向調査団を派遣した。Auto-ID Labsをはじめウォルマートなど主要企業の活動について、同協議会の理事長でもあり視察団のコーディネーターを務めた荒木勉氏に話を聞いた。

2012年には1セントICタグが実現

上智大学 経済学部経営学科 教授 荒木 勉氏

上智大学
経済学部経営学科
教授 荒木 勉氏

 NPO法人「食品流通高度化推進協議会」は、食品流通の効率化とトレーサビリティにより、食品に関する正確な情報を消費者に提供し、良質な食品を合理的な価格で安定的に提供することを目的に2004年に設立された団体である。RFIDの最新事例や技術を紹介することで会員企業の啓蒙を図る活動を行う一方で、実証実験や実用化に向けたソリューションの検討なども行っている。活動の一環として、定期的に海外の先進事例調査を目的とした視察団を派遣しており、前回の2006年4月に引き続き、9月にマサチューセッツ工科大学(MIT) Auto-ID Labsを皮切りに、全米の先進企業の取り組みを視察した。

 最初の訪問先であるボストンのAuto-ID Labsは、RFID研究を目的に1999年にAuto-ID CenterとしてMIT内に設立された。2003年にEPC(Electronic Product Code)ネットワークの標準化を推進するEPCglobalの設立とともに、現Auto-ID Labsとしてその研究開発活動を展開している。

 EPCglobalが策定を行っているEPCIS(EPC Information Service:ICタグのIDに関連する情報を提供するサービス)について担当者から話を聞くなかで、ウォルマートで現在使用しているICタグが10セントであることなどが話題に上ったという。

 「10セントというのはインレット(アンテナ付きICチップ)のことだと思いますが、約11円ということは現行のICタグとしてはかなり安い製品といえるでしょう。2012年にはさらに10分の1の1セントにすると語っていました」(荒木氏)

P&Gとメーカーの提携

 次の訪問先のP&Gといえば、2005年に同じくRFID研究のパイオニアであるジレットとの合併が話題になったが、今回訪問した研究所はP&Gの本社から30分ほどの所にある。研究所の入り口の看板にはP&Gの文字もなく、ごく普通の研究所の印象だったが、実際に中に入ってみて一行は驚かされることになった。

 そこには、体育館ほどの広さにウォルマートの店舗を模した研究施設があった。ずらりと並ぶ陳列棚にはP&Gの一連の商品が置かれ、さらに奥にはバックヤードを想定した施設があった。

 陳列棚からバックヤードまでは、スマートシェルフというRFIDリーダーを設置した商品陳列棚のシステムが組まれている。従来は棚全体がアンテナとなりフックにぶら下げた商品の動きをフック単位で検知していたが、ここでは棚の中に一定距離間隔ごとに複数のアンテナが設置され、買い物客が商品を手に取ったり、バックヤードから商品が補充された時点でリアルタイムな検知ができるようになっていた。

 また、通常はアンテナが複数になればサーバも複数台必要になるところだが、この施設ではサーバ1台で理論値として3000枚までのアンテナの監視が可能という。

 「リアルタイムに在庫から購買動向までもが把握できるという、ある意味スマートシェルフの究極の姿といえるものになっていました。特に、店頭で客が手にしたかどうかがカウントされ、潜在需要がつかめるようになったことは大きいですね。それに、何よりもメーカーがこれほどの規模で研究を行っていることに驚かされました」(荒木氏)

 荒木氏は、この取り組みをメーカーと小売りの情報共有が狙いではないかと分析する。1990年代にウォルマートとP&Gが製販同盟を結び、1日の販売数をウォルマートがP&Gに報告し、それを基にP&Gが適正量の生産を行うといった仕組みづくりに取り組んだことがある。しかし、今回はP&Gからウォルマート、つまりメーカーから小売りへ情報共有を提案するという点で、とても珍しいケースと言える。このためにはメーカー側が正確にデータをつかんでいることが前提となる。

 またこうした自主的に研究を行うメーカーの存在が、日本との大きな差であるとも指摘する。日本でも、荷物を運搬や保管するためのパレットをレンタルする日本パレットレンタル株式会社がデモセンターの研究施設を持ったり、ITベンダーでは、NECが10月末からRFIDイノベーションセンターを開設するなど、提供者側は実際のデモを通しユーザー企業にRFIDのメリットを体感してもらえる場を提供し始めている。しかし、RFIDを導入する側のメーカーが独自の研究を行うという具体的な事例は、まだ報告されていない。


詳細情報

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