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海外トレンドに見る、RFIDの可能性

− 第8回 −

農産物流通におけるトレーサビリティとRFID事情 (2006年9月29日公開)

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 食中毒事件やBSE問題など食に関する事件が相次いだことで、国民の食の安全・安心に対する信頼は失墜したといっても過言ではない。その失地回復の切り札として、生産から処理・加工、流通・販売に至る、食品トレーサビリティの実現への期待は大きい。その現状とRFID利用の効果、将来性について、全国各地で食品のトレーサビリティに関する実証実験やコンサルティングに携わってきた、農産物流通コンサルタントの山本謙治氏に聞いた。

食品のトレーサビリティとRFIDの現状

株式会社グッドテーブルズ代表取締役社長山本謙治氏撮影:宮濱祐美子

株式会社グッドテーブルズ
代表取締役社長
山本謙治氏
撮影:宮濱祐美子

 2000年の雪印乳業の加工乳による食中毒事件、2001年の国内初のBSE(牛海綿状脳症)感染牛の確認、2002年の山形県での無登録農薬使用問題など、食品は安全なものだという考えが打ち砕かれる事件が相次いで起こった。こうした事態を受けて、農林水産省は2003年4月に「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」を発表し、生産から消費者に至る食品のトレーサビリティの強化策を打ち出した。食品のトレーサビリティとは、生産から処理・加工、流通・販売のフードチェーンの各段階で、食品とその情報を追跡または遡及できることをいう。

 しかし、これ以降も消費者の食に対する不安は消えず、食品は必ずしも安全ではないという考えが今も定着したままだ。マスコミで頻繁に「食の安全・安心」という言葉が使われ始めたころ、農産物流通コンサルタントで株式会社グッドテーブルズ代表取締役社長の山本謙治氏も全国各地で食品のトレーサビリティに関する実証実験やコンサルティングにかかわっていた。その一つ、2004年2月に行われた北海道産の長芋を和歌山のスーパーで販売する実証実験は、EPCのICタグを農産物に利用した世界初の試みとして注目された。当時の印象を、山本氏は「和歌山の卸売市場で400箱を読み書きした時には、20分近くかかってしまいました。ICタグの電波が弱かったためハンディタイプのリーダ/ライタを使いましたが、やはり自動で認識させる手段が必要と感じました」と語る。

和歌山卸売市場での実証実験

和歌山卸売市場での実証実験

 その後、山本氏は幾度となく実証実験を経験し、一方では大手量販店のプライベートブランド野菜のトレーサビリティシステムの企画にかかわるなどして、トレーサビリティとRFIDの実効性について検証を行ってきた。その結果、山本氏が辿り着いた答えは「実はRFIDは安心・安全のための道具ではなく、物流効率化のために使われるべきものでした。例えば荷をパレットごとフォークリフトで運び、ゲートを通過すると同時にすべての商品がチェックされて送り状との突き合わせも自動で行われるというようなものが求められているのでした」と説明する。その理由として、コスト問題を解決できないということが第一に挙がる。

「顔が見える野菜。」の売り場

「顔が見える野菜。」の売り場

通常、単価が100〜300円の農産物の商品パッケージに貼付するシールの単価は、5銭〜3円程度といわれている。現状のICタグの単価は、まだこのような安価にはなっていない。また、一部で通い箱にICタグを貼って管理を行うという動きもあるが、その割合は全体の1割にも満たない状況にある。

 そこで、山本氏は「ICタグは食品流通のトレーサビリティ分野ではなく、そのほかの部分で効果を発揮する可能性が大きい。そしてその余力でトレーサビリティが実現できるようになるのが理想です」と説明する。食品流通のほかの部分とは、ウォルマートストアーズに代表されるバックヤード業務の高度化や効率化への利用のことだ。現実に可能性が最も高いこの分野の実用化を先に進め、その後に付加価値として食品トレーサビリティを消費者サービスとして提供するというのが現実的というのが、山本氏の考えである。


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