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先達に学ぶ決断の時

第31回

土井武夫の飛行機設計物語
〜ベターを重ねてベストに近づけよ〜
川崎重工業株式会社 航空機事業本部 元技術顧問 土井 武夫 氏

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「土井さんの案には、空力的な問題があります。これではダメです」日本航空機製造の設計部長東條輝雄は、10歳も年上の“部下”、設計者の土井武夫にこう切り出した。

東條が承認した日本初の国産旅客機YS-11のエンジンナセル(エンジンを覆う部分)の設計図面に土井が修正を持ち込んだのだ。たしかに元の図面は空気抵抗を最小限にするものだったが、これではオイルや燃料用のパイプはすき間をクネクネとぬってはい回ることになる。土井の修正案はそれを回避するためにナセルの幅を50ミリ広げ素直に通すことにしたもの。土井は一言こう答えた。

「いや、こうしなきゃできないし、これで特に問題はない」

「・・・・」

土井は各部分がベストでもそれを集めた全体がベストになるとは限らないことを長年の経験から身にしみて感じていた。一部分のベストではなく、ベターを重ねて全体のバランスの取れた機体をつくる、それが土井の飛行機設計哲学、そして、それこそが40年にわたり日本の空を飛び続けることができたYS-11の秘密だった。

(2003年10月6日公開)

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