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先達に学ぶ決断の時

第29回

服部正次の時計事業物語
〜世界中のテレビ画面に“SEIKO”を〜
株式会社服部時計店(現セイコー株式会社) 第3代代表取締役社長 服部 正次氏

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「東京オリンピックのオフィシャルタイマーをウチで取ろうと思う。競技用ストップウオッチの開発は任せたぞ」1960(昭和35)年5月、服部時計店(現セイコー)社長服部正次は、第二精工舎(現セイコーインスツルメンツ)の時計設計課長井上三郎に尋ねた。

「いや、社長、それは無理ですよ」

井上の意外な返事に正次は激怒した。「できないはずはないだろう。うちの時計は通産省のコンクールでいつもトップじゃないか。少し時間をやる。来週までに結論を出せ」

そして1週間後、正次は穏やかな口調で井上に言った。「どうだい、決心はついたかい」

1週間後、井上は、今度は、理由を細かに説明した。確かにセイコーの時計は国内では敵なしだ。だが、オメガやロンジンなど常に五輪のオフィシャルタイマーを手掛けているメーカーに比べればセイコーの技術、特にストップウオッチの技術は遅れている、と。正次はまた1週間考えろ、と言った。

この一言で、井上は正次が本気だと知る。井上は東京五輪用のストップウオッチの開発を決意する。セイコーの世界への挑戦が始まった。

(2003年8月4日公開)

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