米国市場の日本企業活性化策
− 第5回 −
米国市場におけるその他の事例と、日本企業の抱える問題点
変化を見せる海外の日本企業
過去四回にわたっていくつかの産業分野での海外の日本企業を取り上げてきた。様々な分野でそれぞれ活躍が見られる日本企業だが、では全体としてはどのような傾向があるのだろうか。ここでは米国に絞ってのデータを検証してみたい。
グラフ1:海外の日本企業の米国の割合
米国に進出している日本企業はおよそ2660社(注1)。海外に拠点を置く日本企業のおよそ16.4%を占める(グラフ1)。製造業1042社に対し、非製造業が1620社(表1/グラフ2)。この数字だけ見ると「モノ造りニッポン」から既に脱却してしまっているかのようにも思えるが、実は非製造業の中で最大を占めるのは「卸売業」に分類される項目で、これが非製造業の約半分を占めている。これはつまり日本企業が米国法人を設置する場合でも、直接ビジネスを行うというよりも、提携先や販売代理店への商品卸業務に留まるケースが多いことを示している。
製造業の中では「輸送機械」が30%程と、この連載で取り上げた自動車関連や鉄道などの売上げが大きいことを示している。これに続くのは「化学」分野で、およそ14%弱。非製造業分野では「卸売業」に続くのは「サービス業」の17%弱。ITを含む「情報通信業」は6%であるから、まだまだ製品の輸出販売という旧来の状況からの脱却が遠いことを示している。
これを裏付けるデータとして、米国法人の拠点分布がある(表2)。日本企業の米国法人が最も多いのはやはりカリフォルニア州(656社)。そして続いてはニューヨーク州(273社)で、お隣のニュージャージー州(135社)やマサチューセッツ州(36社)なども含めると500社近くとなる。このように主要都市に拠点を置くのは当たり前なのだが、実はこれらに次ぐのがイリノイ州(198社)、ミシガン州(161社)、オハイオ州(114社)といったように、自動車関連産業が多く集まる地域が上位に名を連ねる格好だ。税制優遇があり多くの企業が便宜上登記を行うデラウェア州(131社)を除外すると、事実上西海岸カリフォルニアと東海岸ニューヨーク一帯以外は、日本企業の多くが中西部の自動車産業の中心地に密集する格好と、いささか偏りの見られる状況となっている。
また、海外に進出した日本企業の進出時期の分布を見てみると(グラフ2)、プラザ合意後に円高となり、その為生産拠点を海外に移すケースが増えた1986-1995年の十年間が53.1%と突出して多く、それ以前の1976-1985年(11.2%)や、1996年以降は少ないという数字がある。日本国内の景気とも関連するこの数字からは、今後は再び海外へ進出する企業が増えるものと予想されると共に、企業の生き残りのためには海外市場を除外して考えることは出来ないということでもある。
日本国内では中小企業が大多数を占めるという状況だが、米国での状況はもう少し平均的だといい、自動車や家電など、大がかりな施設を必要とする産業分野が中心となって米国での日本企業の活動を牽引している状況故に、日本国内に比べ中小企業が単独で進出するケースが少なくなり、結果としてその割合も低い傾向がある。
また科学技術政策研究所の調べでは、日本企業の海外における研究開発施設は、その多くが小規模でかつ日本人の研究者は少数派であるという調査報告もなされている。研究開発の分野でも人的資源を投資出来ない現状は、先の経済産業省の発表通りに、製品販売が海外における日本企業の主たるビジネスというデータに一致するものだ。
多くの調査機関で、日本を思い浮かべると出てくる言葉として、自動車や家電などの大手製造業社が中心となる傾向は否めない。多様な産業分野で日本企業がもっと世界規模での成功を得られるようにしていくことは、官民併せてもっと積極的に推進していくべき問題ではないかと考える。
注1)
2010年経済産業省、調査統計部、企業統計室、国際企業統計グループ調べ。海外事業活動基本調査、2010年4月22日発表分より。

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執筆者 : 田中 秀憲(たなか ひでのり)
福岡県出身。
日本国内で広告代理店勤務の後、1999年に渡米独立。
2004年、リサーチ/マーケティング会社、NYCOARA, Inc.を設立。














