− 第5回 −
チェーン店とIT
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【2008年11月25日(火) 17時締め切り】
はじめに
さて、ニューヨークマラソンや大統領選挙も終わり、マンハッタンはようやく日常を取り戻している。摩天楼の間を急ぐ通勤者達はコーヒーを片手に横断歩道を駆け抜け、そんな交差点ごとに蒸気が噴き出すいつものマンハッタンの眺めだ。
ランチタイムにはいつものピザ屋やファーストフードレストランでは地元ニューヨーカーと観光客が争うように列をなす。ようやくいつものマンハッタンの景色が帰ってきたようである。
ところが、そのような日々の光景の中にも、実は今では多くのIT技術がふんだんに利用され、そして普通の人々の普通の生活に大きく影響を及ぼしていることをご存じだろうか。知らないところで稼働するIT技術によって、我々の日常が形成されているのである。
今回はイエローキャブに乗ってばかりではなく、少し街を歩きながら、様々な店を眺めてみたいと思う。普通の生活の普通の日常の中に行き渡っているITをご紹介していこう。
ファーストフードもIT化
ニューヨークの街を歩けば、様々な大手チェーン店を見かける。ファーストフードはもとより、レストラン、スポーツ用品、おもちゃ、雑貨や日用品など、あらゆる分野で「チェーン店」はアメリカを代表する企業形態だ。
街中のファーストフード
多数の店舗を持つチェーン企業は、その運営や管理においてITの恩恵を最も教授している企業形態といえるだろう(1)。全米に散らばる無数の店舗との連係やその管理運営など、人的資源では困難がともないコスト的にも制限が多かった問題が、しかし現在ではIT技術の導入で一気に解決可能となったことで、今ではほとんどの大手チェーンがそのあらゆる方面でのIT導入を積極的に行っている(2)。
今や日本でも有名となったクリスピー・クリーム・ドーナッツ。ドーナッツで有名な同チェーンは、ニューヨークでも馴染みが深いチェーン網の一つ。ある時期から特に東海岸での多店舗展開を推し進めたこともあり、一時期はいたるところでその店舗を見かけたものだ(3)。
その、彼らの拡大路線の一つの鍵となったのが、各店舗と本部との綿密な相互通信の実現と、詳細なデータのやりとりの上に成り立つサービスの充実であった。つまり、強行とも言える拡大路線の背景には、人的資源の質と量の不足を穴埋めすると見込んでいたIT技術の大規模導入があったと言われている
もちろん日本のコンビニエンスストアのPOSによるきめ細かいデータ収集システムと商品構成は、非常に高度に洗練されたものである。しかし、人種や出身国、宗教や食事の嗜好、更にはエリアごとに大きく異なる気候など、日本では想定しようもないほどの環境の差などにより、米国のチェーン店でのシステムは日本のそれとは違う困難さが求められる。
クリスピー・クリーム・ドーナッツ
クリスピー・クリーム・ドーナッツの場合、各店舗の責任者が店舗内の端末にアクセスする場合に、まず最初に現れるのが気象情報の画面であった。その日の天気や気温/湿度などを検討し、アイスコーヒーを昨日よりも多めに準備するべきか、クリーム味とチョコレート味のどちらを店頭に並べるべきかなど、各店舗における具体的な営業計画を検討する資料として、本社とのやりとりの中で店舗の責任者に気象情報が提供されていた。
しかもその情報は、一般的な天気予報の画面ではなく、専門の気象情報サービス企業との提携によるもので、今現在の気象情報や一日の推移といった一般の人でも入手可能な情報だけではなく、よりきめ細かい地域情報や気象状況に応じた分析までも配布する各店舗専用とも言える気象情報分析サービスが実現していたのだ。
実際に、米国ではこの種の気象情報サービスは安定したシェアを築いている。気象のデータだけを提供するのであれば、官公庁が運営するものを始め無数に無償のサービスが存在しているのだが、しかしそれらのデータから自身のビジネスにとってどのように分析を進めるべきかは、一般にはなかなか難しい作業である。
そのような需要に対して、情報だけではなく分析まで含めたサービスというのは、気象情報だけではなく様々な分野で今後シェアを広げていく可能性が高いと見られている(4)。
もちろん大手企業であれば自社内に気象予報士等の専門家を雇用することも可能だろうが、その場合でも一企業でこの種の専門家を複数人雇用することは希有な事例であり、その為に一個人のミスが全社的に大きな悪影響を与えやすいことから、やはり外部の第三者機関の専門サービスを受けることが主流となっている。
そのような気象情報サービスの顧客には様々な業種が名を連ねる。先に挙げたファーストフードはもちろん、ウォルマートなどの一般小売りチェーン。農業や漁業に従事する人々やそれらに関連する企業。また、屋内での開催が困難なアメリカンフットボールやモータースポーツ、ヨットレースなどのプロスポーツの競技団体や各チーム。催し物などを主催するイベントの運営会社。更には先物取引などの金融商品関連企業にまで、気象情報は重要な情報となってその積極利用が浸透してきているのである。
このように、企業と消費者との間には、商品の売買だけでない部分でもITの積極的な導入が進んでおり、目に見えない形で購買者である我々へその影響があるケースも非常に増えてきているのである。
企業内のERPやCRMといった社内のデータベース構築や、具体的なマーケティング手法の選定。広告展開や商品開発などの、売り買いだけではない部分でも、我々が知らないところでIT技術の進化と普及から受ける影響が大きくなっているのである。
(1)米国にはあらゆる分野の小売業に関して著名なチェーン店網があると言えるほどに、チェーンという業態が普及しているといえる。
(2)IT化によってチェーン店網の管理などの技術が飛躍的に向上したことによって、多くの大手チェーン店網は、その傘下に同様の様々なチェーン店網を所有するケースが増えてきた。これもまたITがもたらしたビジネス形態の変化である。
(3)同チェーンは、数年前に投資家の意向の元、ニューヨークを中心とする東海岸一帯で、店舗数を増やすことによる業界内のシェア拡大方針を採り急成長を続けていたが、その急激な拡大路線があだとなり結局は破綻を来してしまった。その後海外へのライセンス売却を目論見、今では日本でも韓国でも大人気だ。
(4)既に例えば金融情報などでは、この種の分析サービスは既に確固たる市場を確保していると言える。











