− 第3回 −
メディア界とIT
雑誌社
そして雑誌社だ。
これもまたいくつもの有名雑誌がこの街で創刊されてきた。短編やコラムに関してあまりにも有名な「ザ・ニューヨーカー」誌や「ニューズ・ウィーク」「フォーブス」「フォーチュン」等多くの有名雑誌がニューヨークの街から生まれてきている。
この業界も出版に至るまでの製作過程全てがIT化されたが、しかし雑誌は写真のクオリティやその携帯性/軽薄性などから、印刷媒体であることのメリットを生かすことが出来ており、カフェや地下鉄内などで読む(7)という、雑誌本来のスタイルを維持出来ていることから、インターネットとの直接競合という傾向は多媒体に比べ薄いといえる。
携帯性が大きな魅力であることの現れとして、市中の様々な場所であらゆる種類の雑誌(や新聞)が販売されており、空いた時間の暇つぶしに購入されていく。
街で売られる雑誌類
しかしながらその裏返しとして、その媒体としての特徴から単発購入が多いということとなり、確固たる読者層を長期にわたって維持するのは近年ますます困難になってきている。
また、IT化が進んだことにより、出版業への垣根が低くなってきたこともあり、中小以下の企業もしくは個人レベルでも出版が可能となり、多くのフリーペーパー等が溢れる結果となったことで、いかに高度に洗練された内容であっても、それだけで長く読者を引き留めておくことは非常に難しくなってきた。
この業界も他の媒体同様、何らかの現状打破を検討せざるを得なくなってきていたわけだ。しかしその媒体の持つ特徴から、ネットの影響によるものと言うよりは一般市民の社会生活の様式の変化の方が大きな影響を及ぼしてきたと見られている。
そしてとうとう、MAGHOUND(8)のようなサービスまで出現してきた。
MAGHOUNDは所謂雑誌の定期購読なのであるが、しかしこのMAGHOUNDにリストアップされている雑誌であれば、期間内であっても読みたい雑誌を変えることが出来るというものである。様々な場面でのPR(9)により、様々な層へ雑誌購読の再認識を促す新しいビジネスモデルである。
MAGHOUNDはこのような状況を打開するための出版社のアイディアであり、ネット以外の分野での起死回生策として出版業以外からも注目を集めている。
実はこのMAGHOUNDはタイム社(10)が行っているサービスである。
同社は「スポーツ・イラストレーテッド」や「ピープル」等の雑誌で有名な大手出版社。一見すると自らの首を絞めるかにも思えるこのサービスへの着手には、深刻な雑誌離れがあるのは言うまでもない。
特に長期の利益確保が安定して見込める定期購読率の低下は出版社には深刻で、経営の根幹に関わるほどになってきている。
タイム社の正面玄関入り口のオブジェ
その一方で、先に述べたように雑誌離れは進んでおり、常に何かしらの目新しい雑誌の創刊が必須とされている状況下での定期購読は困難であることも以前より指摘されてきた。
MAGHOUNDはそんな現状に対する雑誌社からの一手であり、他媒体にもこのような積極的且つ斬新なアイディアを求める声は大きい。
夕刻になった。イエローキャブは、まだ市中を徘徊しているのだが、そろそろ夕食を摂る場所へ向かってもらうこととしよう。
今晩は有名作家が多く集まり、深夜にはまるで文壇バーのような雰囲気となるアッパーウェストのイタリアンレストラン「エレインズ」か、それとも締め切りに追われる新聞記者でごった返し特ダネの宝庫となるステーキハウス「パーム」にしようか悩む筆者である(11)。
いずれもここニューヨークでメディアに関わる人間なら知らぬものはない名物店だ。もし観光でこの街に来られることがあったなら是非試してみていただきたい。
さて、今テレビをつけるとオバマ民主党大統領候補の顔を見ない日はない。
大統領という職が、ある意味人気商売であることを考えればこれは当然の傾向だ。選挙ではいかに資金力を持ち、より多くのテレビCM枠を購入できるかが勝敗の分かれ目だと言うし、多くのコーディネーターやサポート部隊が織りなす選挙運動の様は、まるでテレビの人気ドラマの制作風景と言えなくもない。
ということで、次回は大統領選挙間近ということで、選挙/政治とITとの関わりについて取り上げたいと思う。今回取り上げた各メディアをいかにして活用し選挙活動を行うのか。そして政策への評価や非難をコントロールするために、どのようにIT技術やインフラを取り入れているのか、様々な面から見ていきたいと思う。
そして今日のタクシードライバーも言うまでもなく海外からの移民(イエローキャブのタクシードライバーに白人は少ないのです)。有色人種である彼はまたオバマ候補を支持しているのであろうか?それとも、、、。じっくり彼の話を聞いてみたい。
今回も記事をお読みいただいた方へプレゼントをご用意させていただきました。今回はニューヨークシティのオフィシャルガイド冊子をセットでプレゼントいたします。
過去にこの街を訪れたことがある方には、旅の記憶を呼び覚ますきっかけに。そしてまだニューヨークを未体験の方々には、街を想像する扉として楽しんでいただければと思います。
ご感想をお寄せいただいた方の中から、5名様にプレゼントします。ふるってご応募ください。

※「ニューヨークシティのオフィシャルガイド冊子のセット」のプレゼントは9月29日(月)17:00をもって締め切りました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
執筆者の田中秀憲氏のブログです。ぜひご覧ください!
Wisdomブログ「ニューヨーク雑記帖」
(2008年9月22日公開)
(7) ニューヨークとは縁の深いかつての大作家、F・S・フェッツジェラルドは自身の作品を評し「歯科医の待合室で時間つぶしに読むには適した作品」と述べている。
(8) MAGHOUND http://subs.timeinc.net/timeinc/construction.jhtml
(9) ただ、現時点ではその広告宣伝はオンラインが中心であり、ネットユーザーと大きく重なる潜在的読者層へのアピールであることは言うまでもない。
(10) 同誌はニューヨーク・タイムズのレポーター、ロス夫婦によって創始された。
(11) いずれも作家や編集者、記者などが多く集まる名物店。有名作家らと出会えることも多く、ファンも多数集まる。











