− 第3回 −
過去の失敗から成功を引き出す
もちろん利用者の共感を得るための企業努力も怠ってはいない。宅配の時間厳守に関しては比較的ルーズなアメリカ、ましてや渋滞の激しいマンハッタンでありながらも、指定時刻にきちんと届けられるシステムの構築とそれを可能とする社員ドライバーの教育。扱う商材が生鮮食品故に、その管理には細心の注意を払っているだろうし、その商品開拓と選別には高い能力が要求されるだろう。そして見事に成功しているようだ。利用者からの評価は非常に高く、今では同社の配送トラックをマンハッタン内で見かけない日は無いといって良い。またkozmoの失敗要因の一つに客単価の低さがあったが、その対策としてFresh Directでは企業向けのサービスも開始することで、客単価の向上と利益率の向上も目指している。
Fresh Directの本社はニューヨークである。しかしその場所はマンハッタンではなく、対岸のクイーンズ区ロングアイランドシティという地区で、倉庫街の一角にひっそりとたつ古いビルが創業以来の同社の本拠地だ。ネットバブル華やかしき頃は、kozmoに限らず、かつてのシリコンアレーベンチャーの多くは家賃が高いマンハッタン高層ビルやSOHOのロフトに拠点を構え、(今となっては馬鹿騒ぎにしか思えないが)日々華やかなパーティーと、「経営」と言う言葉とはほど遠い企業運営を行っていたのに比べ、Fresh Directは何とも地味で堅実に見える。過去の事例から失敗要因を取り除き、そして堅実で地道な経営を上質の従業員とともに心がける。顧客の満足度を高めるための努力は怠らず、扱う商品は価格に見合った良質なものに限り、提供するサービスもやはり質の高さを維持する。同社の成功要因とは、ビジネスの基本を踏まえ、地道な努力を続けていたことであろう。
当然のことながら同社の成功事例は米国でも他社への刺激となっているようだ。つい先日もAmazonがやはり同様のビジネスに乗り出すとの報道が飛び込んできた。
Amazon Freshというサービスは、
- 1. 場所はシアトル近郊限定(=サービスエリアの限定)
- 2. 冷凍が必要なもの、配達時間が厳守のものに限定(=鮮度が高いもの=付加価値が高く客単価が高いもの)
- 3. 提携する地元のスーパーでもピックアップが可能(=配送コストの低減に留意)
- 4.大手Amazonによる経営(=経営が堅実+オンラインショップに関して配送業務網の整備など各種の基盤と事業の運営ノウハウがある+資金が豊富)
と、やはりFresh Direct同様に過去の失敗例で問題となった部分はことごとく解消されていることが見て取れる。

Amazon FreshのWebサイト
そして実は既にいくつもの同様なビジネスモデルが米国各地に存在している。例えば、
・Simon Delivers
1999年ビジネスを開始。ミネソタ州の一部でのみ営業
・Pink Dot
2006年ビジネスを開始。カリフォルニアの高級住宅地三カ所に限っての営業
また既存の大手スーパーマーケットチェーンまでもが同様なビジネスに取り組み始めている。
・Stop and Shop
Peapodとの提携で1989年よりオンライン宅配ビジネスを開始。米国東海岸北部を中心に展開。
Fresh Directがkozmoなど過去の失敗例から抽出された成功事例であるように、今後もしかしたらFreash Directのビジネスモデルをさらに研ぎ澄ませることで成功を収める新進気鋭のベンチャー企業が生まれてくるのかもしれない。また他の失敗事例を21世紀の手法で再生させる起業家が現れるかもしれない。それはまた非常に楽しみなことでもある。
(2007年9月28日公開)











