− 第3回 −
過去の失敗から成功を引き出す
過去の失敗事例とその失敗理由
読者のみなさんは「e-dreams (2001年)」という映画をご覧になったことがあるだろうか? 1990年代末における、シリコンアレーのITベンチャーの創業から倒産までを描いた半ドキュメンタリードラマ(注1)だ。 特に大ヒット作品というわけではないのだが。実在したITベンチャー企業がモデルであることや、ニューヨークが舞台であること。そして描かれている馬鹿げたパーティーや度を超した悪ふざけなど、誇張したかのような演出が、実は事実を下敷きにしているということなどから、特に地元ニューヨークのIT関係者の間では結構な話題となったものだ。
この映画のモデルとなったITベンチャーとは、「kozmo.com(以下kozmo)」。オンライン・コンビニエンス・ストアともいうべきITベンチャーだ。当時の同社のビジネスモデルは以下の通り。
- 1. 利用者がオンライン経由で注文をしたものを、kozmoの配達係員が利用者の指定する場所まで30分以内に配達を行う
- 2. kozmo自身は販売する商品を一切持たず、各エリアでkozmoと提携する小売店の商品を代行購入の上配達する
- 3. kozmoの収益は、販売額に対する一定の割合の手数料
言うなれば、日本的な「ご用聞き」をオンラインで実現したのがkozmoだ。折しも同時期に著しい出店攻勢をかけていたスターバックス・コーヒーや、アイスクリームチェーンのハーゲン・ダッツ。その他にも大手スーパーマーケットやレンタルビデオ店。ファーストフードチェーンや地元の有名ピザ店などと提携を結び、多忙な都会のビジネスマンには人気を博していた。
提携先が多岐に渡っていたため、仕事帰りのサラリーマンがスポーツジムのマシンの上でエクササイズをしながら(注2)、「スーパーマーケットで夕食の材料を仕入れ、デザートにはアイスクリーム。ペットフードはペットショップから。深夜に見る映画のビデオと一緒に夜食のピザとコークを二人分」などというわがままな注文にも一度のアクセス/注文で済むわけで、人気を博したのも十分理解できる。配達時間も指定できたため「あと30分プールで泳いで帰ろう」などというときにも対応が可能であった。さらに疲れた体で混雑するスーパーのレジに並ばなくて良いと思えば、少々の手数料も納得できるというものだ。
さて、そのkozmo、倒産した後でもそのビジネスモデル自体は高評価であったのが興味を引く。同社の会員数は最盛期には40万人以上ともいわれていた。ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコといった都市部においては黒字化を果たしていたといわれ、経営方針の失策が倒産を招いたというのが一般的な評価である。
注1)このころ、IT関連を中心としたベンチャーの成り立ちを題材とした映画がいくつか作られた。
・『Pirates of Silicon Valley』(1999年)
マイクロソフトのビル・ゲイツ氏とアップルのスティーブ・ジョブス氏を対比させたドキュメンタリー。
・『Startup.com』(2001年)
govworks.comという行政向けのサービスを行っていたITベンチャーを題材としたドラマ。
注2)当時既にマンハッタンの高級スポーツクラブのエクササイズマシンには液晶のモニタとインターネットに接続された内蔵PCを備えたものが多く、テレビを見ながら、もしくはネットサーフィンをしながら汗を流すのが一般的であった










