− 第1回 −
今後の米国IT界をシリコンアレーから占う
地に足がついたビジネスと立身出世の夢〜新しい傾向のITベンチャー
かつてのシリコンアレーのITバブルが、安易な人為的な所作による錬金術的な面があったのに対し、今後出現するベンチャーはそれよりは若干なりともまっとうな姿での起業が行われるものと見られている。また金銭的な成功もさることながら、社会的にその行為を認められることや、場合によっては社会貢献などを目指すケースも増えてくるだろう。
実際幾つもの予兆は見られる。まず、シリコンアレー、そして周辺エリア、ひいてはニューヨーク郊外から東海岸北部の広範囲にわたってITベンチャーが続々と名乗りを上げているのだ。過去の失敗例を再度取り上げ、失敗要因を排除した上で改めて起業した例や、またITベンチャーの範疇には入るのであろうが、あまり技術的に高度なものではなくても、そのビジネスアイディアで勝負しようとするものが増えてきたことも、かつての事例とは若干異なっている。市場独占が絶対的な最優先事項だったかつての戦略には敢えて背を向ける、エリア限定、対象層限定のビジネスも多くなってきた。彼らは金銭的な成功「も」求めはするが、しかし自身のアイディアやビジネスモデルの正当性と先進性を世に知らしめたい。こういう宝庫旺盛のようである。このような本来の意味での立身出世の「野望」を持つ若者はいつの世でも消えて無くなることはあるまい。
またシリコンアレーの例を見るまでもなく、かつてビジネス・インキュベーターとして重要な役割を果たしていたのは大学である。スタンフォード大学がシリコンバレーの中心地であったことは良く知られており、そしてそれは今も変わりはない。そして東海岸にはボストンという優秀な教育関連機関が集中するエリアがあり、ニューヨークとの距離はそう遠くなく、またその間にもいくつもの教育/研究機関がある。そしてこの2つの都市は東海岸でもっとも大きな都市でもある。最近の起業家が拠点としてはニューヨークに固執せず、しかし市場としてのニューヨークには可能性を見いだしている理由となっているようだ。
ソーホーを脱出、もしくは見向きもせずに、しかし市場としてのニューヨーク/東海岸には可能性を見いだす。既成概念に囚われることなく、またまっとうなやり方での成功を目指す起業家が新たな波となって現れてきているのだ。またシリコンアレー創世記においては、実質的なインキュベーター(企業/起業家育成)と単なるインベスター(資金提供者)との境界があやふやで、エンジェル(注3)と呼ばれる投資家達の側もまた、経験や実績が不足していたことは否めない。しかし今ではそれぞれが貴重な経験を積み、また過去の事例から多くを学ぶことも出来るようになってきている。真の意味での成功事例は、実はこれから生まれてくるのではないかと筆書が予想するのはこういう理由からである。
かつてシリコンアレーで無数に見かけた看板〜ここがあのシリコンアレーですよ、と謳っていた〜は今はもう見ることはなく、NYITCビルの正面にあった大きなマウスのデザインも今は撤去されている。しかしシリコンアレー政策は確かに成功し、そして今の世代に伝わる何かをきちんと残したのは間違いない。次回は、このような流れの中で生み出された幾つかの最新ITベンチャーを例に取り、現場の視点から米国東海岸のITベンチャー/ニュービジネスを考察してみたい。
注3)エンジェル=個人投資家の一種。無名の新興企業へも出資を行うなど、大手金融機関では関与しにくい分野への投資を行うケースを指す。
米国では税制優遇も制定されるなど、積極的な活動を行政からも後押しされており、日本でも今後の成長が期待される。
(2007年7月30日公開)











