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ニューヨークITトレンド

− 第1回 −

今後の米国IT界をシリコンアレーから占う

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名を売りたい若者と成功したい若者〜起業の目的と社会背景

 しかし何も金銭的な成功だけが起業家の夢ではない。人種や出身国、教育レベルや宗教、文化風習や言語など多様な環境下で構成される米国社会は、また戸籍制度の不備や事実上の差別/階級制度が存在することにより、何らかの手段で立身出世を目指すことがある種の行動基盤となっている。その為無名の若者が何らかの手段で自己主張を行いたがるのは希有なことではない、その手段が学歴/就職であったりスポーツであったり音楽であったりするわけだ。もちろんITベンチャーの起業も金銭的な成功だけではなく、自己の正当性を認めさせたいという社会的な地位の確立も大きな要因となっていたのは言うまでもない。

 それは、例えば日本ではMIXIなどで良く知られるようになった、ソーシャル・ネット・サービス(注2)などにもその兆しを見ることができる。米国でのソーシャル・ネット・サービスブームの火付け役となったベンチャーにMyspace.comというものがある。このMySpace.comは、無名のミュージシャン志望の若者達が、自己主張の場として利用されるケースが多かったことで初期の成長を続けてきた経緯がある。同サービスは順調に成長し、現在ではMyspaceは米国人口の1/4近くの会員数を誇り、更に増加中という。自己の主張を望む社会背景故にMyspaceは大人気を博したのであり、その意味においてはかつて無数に出現したシリコンアレーの起業家達とその本質的意味合いは何ら変わることはない。

 かつて、外部からの資金導入を果たした若きITベンチャーの起業家達は、ソーホーに立派なオフィスを構え盛大なオープニングパーティーなど馬鹿げた振る舞いで自己の成功を吹聴していたものだ。ITベンチャー企業の創立記念パーティーに、ニューヨークで評判のハンバーガーショップから数百個のハンバーガーを注文し、パーティーの参加者に無料で配布する。このような馬鹿げた騒ぎには枚挙にいとまがなかったのがこの時期である。金銭的な面だけはなく自身の所作に対する賞賛を得たいという気持ちは、当時の起業家達も持っていたと思うのだが、目の前の莫大な金銭的成功に圧され、いつの間にかどこかへ追いやられてしまったのだろう。

 また資金を提供した側も、同じそのパーティーで騒いでいたなどというケースも結構多かったといい、功名心溢れる野心家という括りから見れば、金融街のスーツ族とMyspace上にギターをかき鳴らす自身の姿をアップロードし続ける若者達と、かつてのシリコンアレーの寵児たちとの間にたいした違いはない。

。

シリコンアレーのもう一つの中心地、ソーホー。アップルは自社のショールームをニューヨークに開設する際にはまずこの場所を採択した。

 しかし既に述べたように最終的な金銭的成功だけではなく、自身の価値を世間に認めさせたいという要求は決して無くなったわけではない。これは起業家に限った話ではなく、投資家側も同様だ。既に金銭的には充実している投資家達が、しかし更なる新規事業に目を向けるのは何も預金額を増やしたいためではなく、その成功の証を再び手に入れたいからに他ならない。だからこそ彼らは様々な手段で自己の正当性を証明しようともがき続けるのだ。

 *ただ、残念ながらMyspace自身はNEWSグループに買収されてしまった。しかしMyspaceは既に事業として大規模になってからの売却なので、早期での売却とは一線を画すと筆者は考えている。一方YouTubeは規模は拡大しつつあったものの、法的面での解決策を見いだせず、また具体的な収益構造の確立も出来ない時点での売却なので、往来の「早期売却」の範疇に入れるべきだと考えている。また大手による買収は、買収される側にはあまり選択肢が残されないことが多く、致し方ない面があるのも事実だ。



注2)ソーシャルネットサービス=SNS 会員同士のつながりを重視したコミュニティ型ネットサービス。

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