VOL .2
営業担当者のスキルと利便性を向上
ネットワークの進展による恩恵が最も端的に表れるのは、もしかしたらこの部署かもしれません。そう、営業部門です。個別に社外で活動することの多い営業担当者にとって、必要な情報に簡単にアクセスできる環境は、もはや欠かせないものと言えそうです。
それぞれが個別に活動することの多い営業部門。そのため、企業では営業ノウハウや知識が個人にしか蓄積せず、全部門的なスキルアップにつながらないことが課題となっています。
そこで、ボックスホビー社では、営業活動の進捗や結果、顧客情報などを共有するシステムを構築。ネットワークを活用し、日本全国の拠点から情報を収集することで、営業担当者のスキルの標準化を目指しています。
具体的には、まず顧客企業ごとの訪問回数や取引額などの情報をデータベース化。外山氏が見つけた「幼稚園や保育園との取り引きの多い取扱店」も、このデータベースから見つけたものです。また、それぞれの営業活動履歴も保存されているので、イベント開催時のノウハウなど、他の営業担当者の知識を活用することもできます。
一方で、特に顧客情報などは、外部への漏えいにも注意しなければなりません。もちろん、ボックスホビー社では、そうした点にも注意しており、万全のセキュリティ体制でネットワークを保護。加えて、情報を更新できる、もしくは閲覧まで、というように部門や役職ごとに権限を管理することで、そうしたリスクを排除しているのです。
他の多くの企業と同様、スタートイ社でも、営業ノウハウの属人化という課題を抱えています。営業担当者に義務付けている業務報告書や定例ミーティングなどで解決しようと考えているようですが、効果のほどは、上の足田氏と営業部員のやり取りを見れば一目瞭然。
「あの案件、担当したのって誰だっけ?」「誰かこんな資料持ってない」、こんなやり取りは日常茶飯事。情報の共有うんぬんというようなレベルではありません。もし、九州地区にいるというスーパー営業マンのノウハウを共有することができれば、全部門的なスキルの底上げも可能になるのかもしれませんが…。それ以前に、そもそも営業活動の進捗や履歴がうまく管理されていれば、商品の深刻な在庫不足におちいることもなかったでしょう。
しかも、仮に目当ての情報が見つかった場合も、その書類のやり取りに使われるのはeメール。誤送信などで顧客の情報が漏えいしてしまうリスクは当然高いのですが、あまり気にしていないようです。

営業担当者にとって、仕事のメインステージはやはり社外。したがって、外出中にどれだけの業務をこなせるかが、業務効率的や生産性向上の大きなカギを握ります。
そこで注目を集めているのがリモートアクセスです。これは、簡単に言うと、モバイル端末とネットワークを使って、社外でも社内と同じ環境を実現しようというもの。例えば、外山氏のようにオフィスに届いたメールを外出先から確認したり、社内システムにアクセスし、必要な情報(過去の営業履歴や新製品のカタログなど)を入手することが可能になります。
ボックスホビー社がこうした環境を整えていることは、言うまでもありません。ですから、同社の営業担当者は、(1)自宅から得意先へ直行し商談、(2)移動時間を利用して次に訪問する予定の得意先の情報などを入手、(3)2番目の得意先を訪問、(4)商談時に求められた資料をその場で提出、(5)アポの合間を利用し、社内のメールサーバに届いたメールをチェック、(6)社内システムにアクセスし、営業報告書を提出、(7)外出先から直帰、というような営業スタイルも実現できるのです。
ちなみに外山氏が、在庫を確認していたデータベースはRFIDを活用し、リアルタイムに商品の在庫がわかるようになっています。
こうして営業活動の効率化を実現したボックスホビー社では、以前に比べ、営業担当者の1日の訪問社数が飛躍的に増加しているそうです。
外出先では、できる業務に制限の多いスタートイ社の営業担当者。携帯メールへのメール転送くらいは行っている人もいるようですが、受信にタイムラグが生じたり、容量によっては受信できないなど、うまく機能しているとはいえません。その結果、今回の足田氏のように、顧客への対応は遅れてしまいがちです。
そもそも今回のトラブルの発端は数日前にさかのぼります。星壁社長たちの地道な努力の結果、同社にはインスタント・マッスル・ヨーヨーの在庫が多少あったのですが、足田氏は得意先の社長に「在庫はない」と言ってしまったのです。その時点で、足田氏には、正確な情報を入手する方法はありませんでしたから、仕方ないのかもしれません(社内的には、在庫はないというのが共通認識だったのです)。しかし、実際には…。在庫がないと聞いていたのに、他の同業者には納品されているという話を聞いた得意先が怒るのも当然です。
このように、スタートイ社の営業担当者はトラブル対応に追われることもしばしば。必要な資料の提出を求められる度に帰社する、わざわざ謝罪におもむく、こうした時間まで計算すると、同社のムダは相当なものになりそうです。

ネットワーク技術の進展により、「いつでも」「どこでも」「誰でも」が、必要な情報にアクセスできるユビキタス情報社会が実現しようとしています。企業の営業部門は、今後こうした環境をいかに活用するかが勝負を分けそうです。
次回は、開発/生産部門におけるネットワーク活用法を紹介します。ここでは、果たしてどんな差が生まれてしまっているのでしょうか。
(2006年9月22日公開)

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