− Vol.4 −
通信コスト削減に加え、アプリケーション連携で
ビジネススタイル変革の原動力になるVoIP
効率的なコミュニケーション環境を実現できる社内LANと音声の統合
現在も、VoIPはWANでの導入が一般的ですが、社内LAN上で音声/データを統合する企業も増えています。数千ユーザから数万ユーザに及ぶ大規模なVoIPの構築に着手する企業もあります。
LAN上に音声を統合する利点の一つは、異動やオフィスレイアウトの変更にともなう電話機の移設・増設のコスト削減が可能になることです。人事異動で部署が変わる場合、ユーザが自分のIP電話機を異動先の情報コンセントに接続するだけで済み、大掛かりな配線変更工事が不要になるだけでなく、工事期間中の業務の停滞を回避することができます。人事異動が頻繁に行われる企業では、内線電話をIP化することで大きなコストメリットが生まれ、ある企業の情報システム担当者は「VoIPの導入費用は1、2年で回収できる」と見ています。
また、内線電話のIP化により、ビジネススタイルを変えることも可能です。最近は、社員に決められた席のないフリーアドレスのワークスタイルを採用する企業も増えています。社員は出社時に自分のキャビネットからIP電話とノートPCを取り出し、好きな席で仕事をしています。同様に、部署を横断するプロジェクトチームを結成する場合、メンバーが一カ所に集まって仕事ができ、会議のための場所や時間の確保も柔軟に行えます。
社内の音声/データ統合に適したIP-PBXやサーバベースの交換機(コールエージェントなど)も各種提供されており、LANスイッチを介して容易に内線網を構築することができます。また、IP電話機は「あらかじめユーザのIPアドレスを割り振るタイプ」のほか、「ユーザがIPアドレスを入力するタイプ」などがあり、フリーアドレスを採用する際、後者のIP電話機はデスクから片付ける手間を省くことも可能です。このほか、無線LAN対応のIP電話機も提供され、会議などで離席中でも重要な電話を逃すことなく確実に着信できるなど、モビリティを高められます。
LAN上に音声を統合する場合、データトラフィックの影響で音声品質が低下することもあり、QoS制御が可能な高速LANスイッチなどへのリプレースが必要になる場合もあります。新たに導入するのであれば、LANケーブルを介してIP電話機に給電できるPower over Ethernet対応のLANスイッチが適しています。
そして、社内LANと音声の統合により、各種アプリケーションと連携した効率的なコミュニケーション環境の構築も可能です。例えば、IP電話機の機能を PCとソフトウェアで実現するソフトフォンを用い、相手とPC画面を共有しながら通話するなど、より緊密な情報共有が行えます。また、グループウェアと連携し、音声、FAX、電子メールの情報を一元的に扱えるユニファイドメッセージにより、顧客の音声メールの内容を電子メールで関連部署に配信する、あるいは電子メールの内容を音声合成で聞くといったさまざまな使い方が可能です。
このほか、相手の状態が確認できるプレゼンス機能も便利です。通話相手が在席していれば電話をかける、離席していればメールを送るなど、相手の状態に応じて連絡手段を使い分け、「電話をかけたのに不在だった」などといった、業務の無駄を排除することができます。プレゼンス機能を有効にするためには、例えば離席するたびに自身のPCに離席の情報(会議や昼食、外出など)を入力する必要があり、面倒という人も少なくないようです。そこで、一定時間、PCを操作しなかった場合、離席と判断してプレゼンスを表示するといった工夫が図られています。
低コストの音声ネットワーク構築が可能なIPセントレックス
VoIPの導入でIPセントレックスが注目されています。これは、各拠点にPBXの機能をIPネットワーク経由で提供するものです。例えば、本社などの主要拠点にIP-PBX(呼制御サーバ)と通信回線を収容するゲートウェイを設置するもので、リモート拠点はゲートウェイを設置するだけで内線通話が可能になります。つまり、リモート拠点はPBXが不要となるため、機器コストはもちろん、運用コストの削減が可能になるのです。また、リモート拠点の追加・変更など、ビジネスの変化にも柔軟に対応できます。
IP-PBXやゲートウェイを導入して自営のIPセントレックスを構築する方法のほか、事業者のIPセントレックスサービスを利用することでIP電話機以外の音声通信設備を持たずに、機器の導入・運用をアウトソーシングする方法もあります。
これまでVoIPの呼制御プロトコルは、ITU-T(国際電気通信連合-電気通信標準化部門)が標準化したH.323が一般的に使用されてきました。しかし、IPセントレックス対応のIP-PBXやサーバ、IP電話機などでは、SIP(Session Initiation Protocol)が主流になりつつあります。SIPはインターネット技術の標準化機関IETF(Internet Engineering Taskforce)が規定(RFC2543)した呼制御プロトコルで、IPネットワークとの親和性が高いことも特徴です。エンド・ツー・エンドの通信属性の交換とセッション管理により、IP-PBXやゲートウェイなどシステムをアプリケーションレベルで通信できるほか、テキストベースのプロトコルのため、機能の追加・拡張が比較的容易に行えます。
また、小規模拠点の場合、VoIP導入の手段としてサービスプロバイダのIP電話サービスを利用する方法もあります。内線電話はIPセントレックス、外線はIP電話サービスというように組み合わせて利用することで、効率の高い音声ネットワークの構築も可能です。IP電話サービスは、ブロードバンドサービスの一つとして個人ユーザを中心に拡大してきましたが、最近は法人向けのサービスも充実しており、企業の選択肢が増えています。ただし、現在のところIP 電話サービスは、110番や119番の緊急電話やフリーダイヤルなどが利用できないため、一般加入電話を併用する企業も少なくありません。
また、企業ではセキュリティ対策としてファイアウォールを導入しています。そのため社内のプライベートアドレスと社外のグローバルアドレスを変換する NAT(Network Address Translation)機能により、SIPのセッションが維持できないという問題があります。それを解消するため、いわゆる「NAT越え」に対応する VoIPゲートウェイも各種提供されています。
自社でVoIPを構築する、IPセントレックスサービスを利用してアウトソーシングする、あるいは割安なIP電話サービスのいずれを選択する。いずれにせよ、VoIP技術はもはや成熟しているといってよく、企業の導入事例も豊富なことから、アプリケーション連携を含め他社の活用方法を参考にVoIPの導入を進めるとよいでしょう。
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