備瀬 部下をもつ立場の方は、ストレス要因とは何かを知っておいて欲しいと思います。仕事については時間と自由度の2つの軸で考えてみてください。拘束時間を短くするか、裁量権を与えるか、どちらかを配慮する必要があります。自由度のない単純作業なら、作業時間を短くしてあげることで、作業自体はつまらなくても余暇で楽しみを得ることができます。時間も長く自由度も低いとなると、大きなストレスになってしまいます。また、メンタルヘルスの自己管理においては、睡眠をしっかりとることが最も重要です。精神的なトラブルでは睡眠が必ず乱れてきますから、これだけはきっちりとってください。もし、「眠くて仕方がないのになぜか眠れない」という状態になってしまったら、一度診察を受けた方がいいでしょう。毎日の睡眠時間を記録して、「自分は5時間睡眠が2日続いたら、どこかで仮眠を取らないとマズい」などと感覚をつかんでおくと良いと思います。また、自分の感情や自分のおかれている状況についても日記を付けていくと、自分の感じやすいストレス要因が発見できて、自己管理の助けになります。
高畑 自分は何のために仕事をしているのか、その価値観を明確にすることが必要だと思います。僕は自分に厳しい課題を与えて、苦しい状況に追い込むのが好きで、自分はストレス中毒じゃないかと思うんです。忙しい中、単行本を1カ月で書くことになって、移動中に必死で原稿を書いたりしていて、凄いストレスを味わっているのですが、同時に、そんな自分に対して「頑張っているな、オレ」って、酔っている自分もいるんです。自分が納得する人生を送りたいためにやっていることだから、自分で自分を励ますことができるんですよ。
備瀬 いま、「酔っている」とおっしゃったけれど、ある種の自己対話をしているのだと思います。苦しい状況を客観視できたら、ストレスは軽減されます。うつの治療においても、認知行動療法というものがあります。気持ちが塞いでいたり、寝不足だったりすると、向こうで誰かがお喋りをしていても、自分の悪口を言われているように思われて、その場を避ける行動をとってしまう。そうした時、自分で紙に書き出してみるんです??「誰かが喋っている/感情的に嫌だなと感じる/悪口を言われているようだ/その場から逃げた」。すると客観視できて、本当にそうなのか?事実はあそこで2人が単にお喋りをしていただけではないか、自分の受けとめ方の問題ではないかと気づく。こうした自己対話は私自身もよくやります。ストレスはなくならないのが前提ですが、スキルを学べば対処することは誰にでもできます。また、会社の中でストレス要因への理解が深まれば、組織の生産性の向上にもつながると思います。
(6月30日、国立にて)
備瀬哲弘
精神科医。1972年生まれ。聖路加国際病院麻酔科非常勤医。ほかに複数の精神科クリニックで精神科医として勤務。1996年琉球大学医学科卒。琉球大学付属病院精神科、都立府中病院精神科勤務を経て、2005年5月より現職。著書に『精神科ER
緊急救命室』(マキノ出版)、ブログ「こころの自己管理力」
http://blogs.yahoo.co.jp/tetsubise/
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*Part2では、解説「仕事でストレスを感じてしまう本質的な原因を考える」を紹介します。
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