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トップマネジメントメンタルトレーニング第3回
ビジネスパーソンのためのメンタルトレーニング
第3回 高ストレス時代を強く生き抜く心をもつ Part1:対談「組織の中で心の健康度を上げる方法」
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高ストレス時代を強く生き抜く心をもつ
“心の風邪”にも予防の努力が必要

備瀬 経済不況などを背景に社会的要因や心理的要因が増加したため、ここ数年、うつになる人が増えています。4〜5人に1人の割合で、一生のうちに一度はうつで診察を受けるという統計的推測もあり、いまや誰でもかかりうる病気といえます。にも関わらず、一般的には十分に理解されていないのが現状で、「根性が足りないからなるんだ」といった精神論で受けとめられたりしています。うつは言ってみれば、“心の風邪”。皆さん、体の風邪に対してはうがいや手洗いなど、予防意識が高いのですが、心の風邪に対しても健康を保つ努力が必要なんだ、という認識がまだまだ普及していないようです。また、一人ひとりが取り組むだけでなく、会社全体がストレス要因に対する理解をもつことで、組織の健康度の向上を図れると考えています。それには高畑さんのメンタルトレーニングの考え方を取り入れることが役立つだろうと思っているのですが、いかがですか?

高畑 時々、会社の新入社員研修に講師として呼ばれるのですが、そうした時、僕がまず話すことは、「この会社、3年後に辞めようよ」(笑)。なぜかといえば、独立するまで3年しかないのなら、その3年間で会社から最大限のことを吸収しようとするからです。だから、全力で仕事に取り組む。実際に辞めるかどうかは3年経った時に考えればいいんです。それよりも、3年間と区切ることで意欲を高められることが大事です。

備瀬 3年なら3年という区切りで目標をもつというのは大変有効なやり方だと思います。たとえ他人から指示されて仕事をするにしても、時間を自分で管理する意識があれば、個の力を発揮できるでしょう。

自信をもつことより、信念をもつことが大事

備瀬 最近、診察室に通ってこられる患者さんの中にこんな方がいらっしゃいます。大変に有能な方で、4月からあるプロジェクトに任命されたのですが、そのプロジェクトの上司に企画をもっていくたびにダメ出しをされてしまう。最初は、期待されているレベルが高いのだと考えて、なんとかこの人に認められようと頑張るのですが、なんのアドバイスももらえないまま却下されて、ただ、頑張れと言われるばかりで、そんなことが3カ月も続いて、だんだん苦しくなってきてしまいました。話を聞いていると、どうも上司の方が感情的に対応してしまっているみたいなんです。「反りが合わない人」というのはいるものですが、そこで感情的になったら、互いのメンタルヘルスを損なうだけです。その辺の理解がもっと得られると良いのですが。

高畑 二軍の野球選手とコーチの関係でもそういうことはあります。僕はそういう選手に「おまえ、コーチとの根比べだね」と言ったりします。コーチに無理に認められようと頑張る必要はないのですが、かといって野球自体を投げてしまったら元も子もない。コーチを気にせずに自分の野球をやっていれば、そのうちコーチが交替して、ポンと一軍に取り上げてもらえるかもしれない。そのための力をいま蓄えておけ、ということです。ずっと干されていた選手が、新しいコーチになって抜擢されたら首位打者になったという例はプロ野球にも見られます。上司が替わるたびにその上司に気に入られようとしたら、自分を見失ってしまいます。上司に評価してもらうことを目標に頑張るのではなく、自分の哲学をもって仕事をするべきだと思いますね。

備瀬 評価を気にしすぎる人には、そういうアドバイスが有効ですね。よく、「自信がもてない」と言うけれど、自信よりは信念をもつべきなのです。自信は評価されないと揺らいでしまうけれど、信念は揺らぎません。

自己対話と自己管理でストレスを乗り切る

備瀬 部下をもつ立場の方は、ストレス要因とは何かを知っておいて欲しいと思います。仕事については時間と自由度の2つの軸で考えてみてください。拘束時間を短くするか、裁量権を与えるか、どちらかを配慮する必要があります。自由度のない単純作業なら、作業時間を短くしてあげることで、作業自体はつまらなくても余暇で楽しみを得ることができます。時間も長く自由度も低いとなると、大きなストレスになってしまいます。また、メンタルヘルスの自己管理においては、睡眠をしっかりとることが最も重要です。精神的なトラブルでは睡眠が必ず乱れてきますから、これだけはきっちりとってください。もし、「眠くて仕方がないのになぜか眠れない」という状態になってしまったら、一度診察を受けた方がいいでしょう。毎日の睡眠時間を記録して、「自分は5時間睡眠が2日続いたら、どこかで仮眠を取らないとマズい」などと感覚をつかんでおくと良いと思います。また、自分の感情や自分のおかれている状況についても日記を付けていくと、自分の感じやすいストレス要因が発見できて、自己管理の助けになります。

高畑 自分は何のために仕事をしているのか、その価値観を明確にすることが必要だと思います。僕は自分に厳しい課題を与えて、苦しい状況に追い込むのが好きで、自分はストレス中毒じゃないかと思うんです。忙しい中、単行本を1カ月で書くことになって、移動中に必死で原稿を書いたりしていて、凄いストレスを味わっているのですが、同時に、そんな自分に対して「頑張っているな、オレ」って、酔っている自分もいるんです。自分が納得する人生を送りたいためにやっていることだから、自分で自分を励ますことができるんですよ。

備瀬 いま、「酔っている」とおっしゃったけれど、ある種の自己対話をしているのだと思います。苦しい状況を客観視できたら、ストレスは軽減されます。うつの治療においても、認知行動療法というものがあります。気持ちが塞いでいたり、寝不足だったりすると、向こうで誰かがお喋りをしていても、自分の悪口を言われているように思われて、その場を避ける行動をとってしまう。そうした時、自分で紙に書き出してみるんです??「誰かが喋っている/感情的に嫌だなと感じる/悪口を言われているようだ/その場から逃げた」。すると客観視できて、本当にそうなのか?事実はあそこで2人が単にお喋りをしていただけではないか、自分の受けとめ方の問題ではないかと気づく。こうした自己対話は私自身もよくやります。ストレスはなくならないのが前提ですが、スキルを学べば対処することは誰にでもできます。また、会社の中でストレス要因への理解が深まれば、組織の生産性の向上にもつながると思います。

(6月30日、国立にて)

備瀬哲弘
精神科医。1972年生まれ。聖路加国際病院麻酔科非常勤医。ほかに複数の精神科クリニックで精神科医として勤務。1996年琉球大学医学科卒。琉球大学付属病院精神科、都立府中病院精神科勤務を経て、2005年5月より現職。著書に『精神科ER 緊急救命室』(マキノ出版)、ブログ「こころの自己管理力」
http://blogs.yahoo.co.jp/tetsubise/              

*Part2では、解説「仕事でストレスを感じてしまう本質的な原因を考える」を紹介します。
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