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トップマネジメントメンタルトレーニング第2回
ビジネスパーソンのためのメンタルトレーニング
第2回 集中力を高めて、自分の能力を最大限に引き出す Part1:対談 能力を引き出す心と体の良いプログラミング
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能力を引き出す心と体の良いプログラミング
大事な場面で集中力を発揮するための準備

編集部 今回は、スポーツ・トレーナーの菊池さんをゲストに迎えて、高畑さんと「自分の能力を十分に発揮するには」というテーマで対談をしていただきたいと思います。2人で同じスポーツ選手を心身の両面からサポートされることもあるそうですが、菊池さんのなさっているのはどのようなトレーニングなのでしょうか?

菊池 私は水泳を中心としたスポーツ選手のトレーナーをやっています。最近、トレーナーの分業化が進んでいますが、筋肉を鍛えたり、体作りをするトレーニングを指導するのは、フィジカルトレーナーと呼ばれています。それに対して、マッサージなど体のケアをするのがメディカルトレーナーです。私は接骨院を開業していますが、元々はフィジカルトレーナーで、ベッドサイドの治療から競技の現場まで一貫した流れでサポートをしたいと考えています。

高畑 はじめに、勝負どころにどう臨むか、という話をしたいのですが、僕はよく選手に、「落として」プレーするようにと言うんです。意識を丹田に集めて、あまり頭で考えすぎないようにしろということです。

菊池 考えれば考えるほど混乱してしまうということはありますね。試合で選手が気を付けるべきことはたくさんあるのですが、人間はそんなに多くのことを一度に気を付けられない。だから、そうした点をできるだけ試合前の準備段階でつぶしておくよう、私もトレーナーとして心掛けています。そして、たとえつぶし切れていなくても、試合になったら一つだけ気を付けてほしい点をコーチに伝えることにしています。地方の大会などを見ていて思うのは、いい選手を出しているコーチは、アドバイスをし過ぎない。そうすると選手も落ち着いてプレーできるようです。

高畑 昔から、「人事を尽くして天命を待つ」と言うじゃないですか。結果を100%コントロールすることはできない。それなのに、多くの人は自分でコントロールできないことまであれこれ悩んでしまう。そうすると、その分、コントロールできるはずのことに割ける努力が減ってしまいます。目の前のやれることに集中するべきですね。

良いプログラミングをインプットする努力

高畑 大事な場面に向けてもう一つ、僕が選手によく言うことは、「弱気は最大の敵」とはよく言うけれど、「強気も最大の敵」だってこと。「よっしゃ」と思って心が力むと、体も力んで固くなってしまうんです。

菊池 それをフィジカル面の例から説明すると、クロールで思いきり水を掻こうとすると、腕を伸ばす筋肉だけでなく腕を曲げる筋肉にまで力が入ってしまう状態。つまり伸ばす筋肉と曲げる筋肉のスイッチがタイミングよくON・OFFできないため、しっかり腕が伸びなくて前の水が捉えられないし、反対側の腕は最後まで掻ききれない状態です。「中枢神経のプログラミング化」といって、同じ動作パターンを何度も繰り返していくことで脳にフォームがインプットされていくのですが、力む選手はトレーニングを通して筋肉をタイミング良くON・OFFするプログラムをインプットしていく必要があります。ただ、それをやっても、本番でメンタルの揺らぎが生じてしまったら、また力みは出やすいのですが・・・

高畑 プログラミングということでは、思考回路も同じように習慣で作られるんです。よく思考回路を川筋に例えるのですが、生まれた時には2つの細い川筋があったとします。一方がプラスで他方がマイナス。親からネガティブな言葉ばかり言われたり、本人がネガティブなことばかり考えていると、水はマイナスの方にばかり流れて、そちらの川がどんどん太くなっていく。そうすると、ますます水はそちらにばかりに流れるようになる。だから、一生懸命にプラスの方に水を流す努力をする必要があるのです。流せば細かった川も太くなるんです。物事を始める時に、マイナス思考の人は、よくもまあと感心するほどに「できない理由」を次々と思いつきます。でも、プラス思考で取り組めば、物事の進み方は非常に違ってくるはずなんですよ。

菊池 また固定概念を外さないと新たなプログラミングができない場合もあります。スタートは膝を使って高く遠くへ跳べというのが、従来の常識ですが、私の考えでは高さや飛距離をイメージするより、重心の位置・移動や股関節・ハムストリングス※を意識した方が大きなパワーを生み出し速いんです。実際私の提案を試してくださったコーチがいて、従来の考え方を忘れた選手ほど成果を上げているそうです。

※ ハムストリングス:大腿二頭筋など、太股の後ろにある筋肉のこと
自分自身で心理的限界を少しずつ広げていく

菊池 最近、日本の水泳選手は強くなってきましたが、課題も浮き彫りになってきました。それは自由形です。女子に関しては柴田亜衣選手がアテネで金メダルを取ったので少し打破されました。しかし男子100mは50秒を切った選手が世界に100人近くいるのに日本人は50秒の壁をずっと破れず、50秒台でダンゴ状態になっています。切れてもおかしくないと言われている選手もなぜか切れない。一方、この間のジュニア・パンパシフィック選手権を見ていて面白いなと思ったのは、そういう上の世代が苦戦している種目でも、アメリカやオーストラリアといった強豪を相手に競り勝ち、どんどん優勝している。それは、彼らより少し上の世代が「日本の水泳は強い」というイメージを作ってくれたから、「俺たちもいけるはずだ」という意識が出てきているためだと思います。

高畑 上の世代の活躍によって心理的な限界が外されたということですね。高校生のトレーニングを見てあげる時、50メートル走らせて、ストップウォッチをわざと早押しして嘘のタイムを伝えることがあります。すると、本人はアレ?という顔をしますが、その後、自分はそのくらい走れるのかも、と思うようになる。すると、だんだん記録がその嘘のタイムに近づいていくんです。これを自分一人でやることもできます。私は単行本を書くのに、出版社から4カ月でと言われたら2カ月で仕上げ、2カ月なら1カ月で、というように自分で早く書き上げるように課して、書くスピードを上げていきました。課題を与えられたら、自分でそれよりも少しきつく設定してこなしていくことで、日頃から少しずつ心理的限界を広げていくことができます。そうすることで、自分の潜在能力を引き出していくことができるのだと思います。

(4月14日、国立にて収録)

スポーツ・トレーナー
菊池 公之介
1973年生まれ。きくち接骨院(高田馬場)院長。鹿屋体育大学大学院体育学研究科修了。柔道整復師。2001年世界水泳選手権福岡大会競泳日本代表トレーナーをはじめ、競泳日本代表チームに多数携わる。携わった主な選手は沖田祥章(平泳ぎ)、森隆弘(個人メドレー)、今村元気(平泳ぎ)、柴田亜衣(自由形)など。               

*Part2では、解説「集中力の種類とそのトレーニング法」を紹介します。
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