話を戻しましょう。その選手は知らず知らずのうちに、内角に投げることのできない自分の姿を繰り返しイメージしてきてしまったのです。そのイメージの根底にあるのが、高校一年生の時に先輩にボールをぶつけてしまった映像なのです。そのようなイメージを持っていれば、そのイメージ通りの生体反応が現れるわけですから、実際に投げられなくてあたりまえなのです。
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| 球場でプロ野球選手の練習を観察し、気づいたことを選手にアドバイスする筆者 |
私はその選手に限らず、他のプロ野球選手にも気持ちを切り替えようとするのではなく、イメージの上塗り作業を行うように指導しています。例えば試合中にホームランを打たれたとします。そこで気持ちを切り替えようとする分だけ、ホームランを打たれたことに意識が向いてしまいます。では放っておいたらどうでしょうか。そうすると無意識にホームランを打たれたイメージが思い浮かんでしまいます。
だからこそ意識して、そのホームランを打った打者を打ち取った場面を自分なりにイメージするのです。繰り返し、繰り返し。そうすればホームランを打たれたマイナスイメージによる生体反応ではなく、プラスイメージによる生体反応を出しながら、次の打者へと向かっていけるのです。それくらいイメージトレーニングは大切なのです。
プラス思考の正しい手順とプラスイメージの作り方の2つの指導を中心にして、その選手を指導していく中で、その投手は内角にスピードとキレのあるボールを投げられるようになりました。もともと投げるための技・体は備えていたのですから。それを妨害していたのが心の部分だったわけです。心の部分さえ自分で上手にコントロールできるようになれば、それこそ自分が持てる力をすべて出し切れるようになるのです。
名前こそ、仕事の守秘義務によって出せませんが、その投手は今では誰もが知る球界を代表する投手として活躍しています。その投手が試合中に、打者のインコースをえぐるようなボールを投げ込むのを見るたびに、初めて彼が私の元を訪れた時のことが思い浮かびます。目に見えない心を扱うのは仕事として大変ですが、見えない部分だからこそ、私はこのメンタルトレーニングに無限の可能性を強く感じています。
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