− 第6回 −
人々が自律的に移動できる街づくりを、ユビキタスネットワークが実現する
北海道から沖縄まで日本全国で、場所に情報をくくりつける
自律的移動支援プロジェクト
自律的移動支援プロジェクト委員長である東京大学大学院教授/YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長/ユビキタスIDセンター代表 坂村健氏はプロジェクトの目的について、次のように説明する。「障害者や高齢者、外国人など、個人として自律的に移動することに、何らかの障害を感じている全ての人々をITでサポートして、人の手を借りなくても移動できるようにすることを目指しています」
視覚に障害を持つ人は舗道上の誘導ブロックを白杖で確認しながら、歩行する。そこで、誘導ブロックにチップを埋め込む。そして、白杖を感知すると、周辺の工事状況などをデジタル情報で流し、それを音声に変換して知らせるようにする。そうすれば、目が見えなくても、安心して街を歩くことができるようになる。「プロジェクトの最終目標は、北海道から沖縄まで、すべての道路や主だった建物に、電子タグやユビキタスマーカーと呼ばれる装置を付け、『場所に情報をくくりつけ』、様々な情報を発信できるようにするところにあります」(坂村氏)
健常者であっても、全く知らない街に行ったときには、その街の情報を知りたいし、工事個所などの情報は障害を持っているかどうかに関わりなく、すべての人に役立つ。「プロジェクトとしては直接的には障害を持っている人を支援することが目的なのですが、根底的にはユニバーサルデザインの考え方にもとづいて、すべての人の役に立つ、今まで世界のどこにも存在しない新しいインフラを作り上げることが狙いです」と坂村氏は強調する。
そのために、現在、同プロジェクトが進めているのが「ユビキタス場所情報システム」の実現だ。このシステムでは、「場所」、すなわち特定の空間のボリュームにユニークな識別情報を与える。そして、その場所の識別番号として、坂村氏が代表を務めるユビキタスIDセンターが提案しているucodeを使う。その上で、センターのアドレス解決サーバーで、場所に与えられたucodeから、ネットワーク経由のデータベースサーバーにある様々な情報やサービスを呼び出せるようにする。
一方、人はそれぞれ、同センターが開発したユビキタス・コミュニケータを持つ。これはRFIDや赤外線、無線LAN、ブルートゥースなどマルチモードの通信機能を持つ汎用端末で、それぞれの場所、それぞれのサービスに適した方法で、その場所のucodeを取得する。そして、取得したucodeとユビキタス・コミュニケータが知り得る「状況」情報を合わせてネットワークに送ると、目の不自由な人の持つコミュニケータには目の不自由な人に適したサービスが、耳の不自由な人にはその人に適したサービスが呼び出されるようになる。










