− 第3回 −
自分の医療記録がネットで見られる
〜医療の質を向上させる電子カルテ
いつでも見られる安心感医療機関同士の相互閲覧も

医療法人八女発心会 理事長
姫野 信吉氏
もっとも、開示用IDの発行数は年間30人程度で、累計でも約150人と多くはない。実際に電子カルテをインターネットで見に来る人も、月に5〜6件に過ぎないというのが実情だ。入院患者も病室で見られるが、「医師や看護師に聞いた方が早い」と、あえてパソコンを接続してまで見る人はほとんどいないという。
こうした状況に対して中村氏は、「患者本人が閲覧するというよりも、ご家族が見たいという要望がほとんど。ご主人が自宅から、また医師である息子さんが大学病院から、時にはご家族が海外から見られるケースもある」と患者にとってのメリットを指摘する。また、ある入院患者は「いつでも見られるという安心感と、隠し事をしていないという病院への信頼感が持てる」と打ち明ける。
姫野理事長も、「ある沸点を超えないと、患者さんの実需はそうは増えないだろうが、見ようと思えばいつでも見られる、あるいはほかの病院にセカンド・オピニオンを求めようと思えばいつでも求められるという"フリー・ハンドの状態"を確保しておいてあげたい」と、電子カルテをインターネット開示した狙いを話す。
厚生労働省はグランド・デザインの中で、医療情報システム構築の核となる電子カルテの普及目標を掲げている。それによると、「平成16年度までに全国の二次医療圏ごとに少なくとも1施設は電子カルテの普及を図る」「また平成18年度までには、全国の400床以上の病院の6割以上に普及させる」という。
99年4月からは紙による保存義務がなくなったこともあって、新規開業する診療所の約半数は電子カルテを導入しているといわれる。医療情報に対する社会全体の需要が高まっており、中でも電子カルテの必要性は今後ますます求められていくはずだ。
「セカンド・オピニオンあるいは別の病気で医者にかかった場合、前の医療機関で蓄積された情報をお互いに再利用しようというのが、電子カルテのもう1つの目的」と姫野理事長は語る。つまり、電子カルテを医療機関が共有化されることで、患者はより適切な治療を受けやすくなるという。
今後、電子カルテを含めた病院の情報化が進むことで、これまでのような「数時間待っても診察はほんの数分」という異常事態は解消されるとともに、患者に向き合う時間が増えて、より質の高いサービスを享受できるようになる。ユビキタス社会が医療の世界を変える日もそう遠くはない。
(2004年5月24日掲載)











