− 第2回 −
多様なサービスを可能にする新しい自治体像
700人のモニター宅にインフラを整備し動画で顔を見ながら証明書の申請・交付
岡山市の電子自治体構築に向けた第一歩は、1999年11月にホームページ上で発表した「地域情報水道構想」だ。ここで打ち出した「情報水道ネットワーク」は、超高速ネットワーク回線を整備することで、水道の蛇口をひねるがごとく、高速・大容量かつ低コストで情報を取得し、保健や福祉、医療、教育、市民サービス、情報交換、電子商取引といった多様なサービスを受けられるようにしようというものだ。
この計画に沿って早速、光ファイバによる基盤インフラの整備に着手した。2000年9月には、市内の御南地区と西大寺地区というそれぞれ約1万世帯が暮らす2エリアから350人ずつ、合計約700人をモニターとして募集し、各家庭への光ファイバの引き込み工事に取り掛かった。下水道管に光ファイバを通すという日本初の「下水道FTTH」で、2001年6月に工事を完了して運用開始した。

岡山市企画局情報政策部 情報政策課
電子自治体担当課長
粕谷 明 氏
「常識的に考えれば、インフラが普及する順番は東京や大阪が最初で、次に各主要都市へと順番に広がっていく。しかし、地方都市が生き残るためには、そうした順番を飛び越えて真っ先にインフラ整備する必要があると考え、いち早く敷設にこぎ着けた」。IT事業を推進する岡山市役所の企画局情報政策部情報政策課 電子自治体担当課長の粕谷 明氏はこう振り返る。
光ファイバを敷設したモニターの年齢層は30代と40代が中心で、50代、20代、60代と続く。パソコンの知識がある人は約半数だったが、岡山市ではこのモニターを対象にこれまで約40件の実証実験を行ってきた。その中で電子行政の新しい取り組みとして注目されるのが、映像対話型電子申請・交付の実験だ。
「e!(イー・びっくり) 市役所実証実験」と名付けたこの実験は、約230名のモニターを対象に2003年2月から2カ月間にわたって行われた。利用者は、自宅または公民館に設置された実験用パソコンから市役所総合案内へ接続でき、ビデオカメラ、ヘッドセット、申請情報の暗号化および申請者の押印の役割を担う電子証明書を格納したUSBキーなどが貸与される。ディスプレーに映し出されたお互いの顔を見ながら各種の手続きを行う。企画局情報政策部システム企画課・システム調整室長の大西一知氏は、「一番のウリは誰でも操作できること。年配者やパソコン操作に慣れていない人でも使えるように、機器の『開始終了ボタン』を押すだけで市役所の総合窓口担当者側の呼び出し音が鳴り、職員をモニターに呼び出すことができる。キーボードが打てない人の場合は、職員の方から遠隔操作も可能」と胸を張る。
光ファイバによるブロードバンド回線のため、画像はテレビ並みに鮮明だ。画面を通じて申請できるのは、所得・課税証明書や自動車納税証明書、身障者手帳の再交付申請など10種類。最初に応対した総合案内のオペレーターが該当部署の各担当者に引き継ぐ形で、各証明書の申請を受け付ける。該当部署に保留転送する際に特定の担当者を呼び出せるのは、IPv6機能を使った接続だからだ。申請が済むと、自宅のプリンタで証明書を出力して交付となる。申請だけでなく、担当者の顔を見ながらの行政相談もできる。
約2カ月間の実験期間中の申請件数は73件だったが、利用者の95%が「とても便利」と回答した。「ただ、ネットにすべてのサービスを移行させるわけではなく、あくまでも遠方で来所が困難な人や高齢者、体が不自由な人たちにとっての選択肢の1つと考えている。なかには市役所の窓口に来て顔が見えないと駄目という人もいる。申請や手続きにはいろいろなアプローチがあっていい」(粕谷氏)というのが基本的な姿勢だ。












