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ITビジネス ヒットエンドラン

− 第11回 −

人は、なぜ情報発信するのか。

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ひとはなぜ情報発信をするのか

 これまで、情報発信者は情報と引き換えに『対価』を求めているのか、求めていないのか、といった観点でひとびとの情報発信について考えてきたが、ここからいくつかの情報発信動機を見出すことができる。それは「物質的欲望(ビジネスによる経済的報酬など)」、「非物資的欲望(他人に認められたいといった社会的欲求など)」、「過剰資源(「時間」などの非物質的な財も含む)」の3つである(図表3)。

【図表3】情報発信の動機の3類型

【図表3】情報発信の動機の3類型

 例えば、上記3つの動機に刺激を与えるサイトの一例として、最近話題になっているプジョー207のスペシャルサイトを取り上げ説明する。

 このサイトでは、「207 AD CREATOR」というキャンペーンを行っている。サイトには、デザインツールが用意されており、色や大きさを変えながら車や背景となる町並みの画像などを自由に組み合わせることができる。実は、ユーザー自身に広告を作ってもらおうという大胆な企画なのだが、このツールの「遊び」の要素が実に魅力的であり、日頃からサイトへの書込みなどほとんど行わないし、まして広告の手助けをするつもりなど全くなかった筆者自身も、暇な週末につい時間と労力を費やしてしまったほどだ。こうして作られた広告は、数時間後には作品としてサイト上に掲載されるしくみで、筆者自身の作品も実際にアップされた。さらに、アップされた広告作品は、ユーザー同士の人気投票でランキングが決まるため、そうなると他人よりも高評価を得たいという社会的欲求が刺激されるものである。筆者自身も上位へのランクインを目指して、さらに作品を追加制作したほどだ。2007年5月30日〜7月31日の投票期間終了後には、上位入賞者にプレゼントが与えられることになっており、投票期間中には1日に1回のみ自分の作品への投票も認められている。プレゼントという物的な欲求に刺激されて、毎日サイトを訪れるユーザーもいるはずだ。このサイトのように、「ユーザーが情報発信をしたくなるような3つの動機」を作りだし成功したといえるサイトは、他に挙げたらきりがないだろう。

左:デザインツール。機能も豊富だ。
上:他のユーザが投稿した「作品」を一覧できる。



受け手が試される情報化社会

 これまでにも情報発信の動機や目的を明らかにしようとした研究はいくつかあるが、にもかかわらずはっきりとしたことは未だによくわかっていない。発信者である生活者自身に対して、アンケートなどの方法で直接「情報発信する理由」を尋ねてみても、明確な回答を引き出すことは難しい。発信の動機や目的をつかみきれない理由のひとつには、このような調査手法そのものに限界がある場合もあるし、例えば「社会的交換」によって必ず何らかの対価を得ていることを前提としている(これを「社会交換理論」という)ような、研究アプローチに問題があることも多々あるだろう。とはいえ、情報発信の理由について考えることは、「画家はなぜ絵を描くのか」を考えるのと同じようなことであり、はっきりとした答えがないのはある意味では当然といえる。

 いずれにしても、生活者が企業や芸術家などの情報発信を生業とする者と肩を並べ、情報発信ができるようになったこと、すなわち、情報化社会のひとつの基盤が整ったことについては相当の評価がされるべきだ。とはいえ、生活者が気軽に発信できるようになったことでネット上には玉石混交の情報が爆発的に増加しており、質の悪い情報、価値のない情報がたくさんあることに対して懸念する声も多い(拙稿「"クチコミ"の活用はどこまで進むのか〜Web2.0時代のマーケティング」参照)。情報化社会では意味のある有益な情報だけをいかに集めるかが課題ともなっている。したがって、本稿において解明を試みたように、発信者の発信動機を理解しようとする態度は、受信者が有益な情報を拾うために欠かせないものである。

 以上

(2007年9月18日公開)

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