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ITビジネス ヒットエンドラン

− 第10回 −

住基ネットはなぜ活用されないのか?
〜海外事例に学ぶ〜

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海外での住民情報データベースの活用事例

 日本では住基ネットや住基カードは上記のような状況であるのだが、海外に目を向けてみると、住民情報データベースや行政ICカードを活用した住民向けサービスが普及している国も多い。

 スウェーデンやフィンランド、デンマークといった北欧諸国では、住民の個人情報を国が所有する住民情報データベースで一元管理し、住民に様々な行政サービスを提供している。このデータベースは、行政機関のみならず、銀行や保険会社等の民間企業も利用することができる。個々の行政機関や民間企業は、一般市民から個人情報を収集したり、更新したりする作業から開放されるメリットがある。一方、住民サイドでは、行政機関や民間企業への数多くの届出が不必要になるメリットがある。公的PKI (Public Key Infrastructure)等を用いて住民自ら住民情報データベースにアクセスして、自分の登録情報を一定範囲内で更新することも可能である。

 また、バルト海に面した小国であるエストニアでは、住民情報データベースと様々なアプリケーションを連携させることで、国民IDカードが幅広い公共サービスで利用され、運転免許証や健康保険証の代替にもなる。公共交通機関の乗車券もインターネットで(おそらく国民ID番号を提示して)購入すれば、チケットレスで乗車でき、検札時には国民IDカードをカードリーダで読み取ってもらうだけでよい。

 もちろん、北欧諸国は国の規模が小さく、個人の所得情報は公の情報と考えられているなどプライバシーに関する意識が違う、議会や行政機関に対する国民の信頼度が高いなど日本とは国情が異なるため、直ちに同じような制度を導入するわけにはいかない。

 ともあれ、日本では、1998年の改正住民基本台帳法案の提出にあたって、政府が住民のプライバシーに対して様々な配慮を行った結果、「利用目的を住民の居住関係の確認に限る」「住民票コードの民間利用を禁止する」「住民による住民票コードの変更を認める」など、当初の青写真からはかなりトーンダウンして住基ネットの利用範囲が狭められることとなった経緯がある。このような数々の縛りが、我が国で住民情報データベースを有効利用する上で障害となっていることは否めない。住民向けサービスの充実を図るには、プライバシー保護には十分配慮しつつ、こうした法律上の縛りを緩くして、住基ネットの利用範囲を広げていくことが一つの処方箋である。



住基カードは個人認証機能に特化すべきではないか

 住民情報データベース(住基ネット)の有効活用によって住民向けサービスの充実を図ることが、住基カード以外の手段でも実現できるのであれば、例えば社会保障番号をIDとした「国民サービスカード」などで住民が利便性の高いサービスを享受できるのであれば、あえて住基カードの普及に固執する必要はないのかもしれない。しかし、住基カードが国民に定着することを図っていくのであれば、もう少し機能的に特化させるべきなのではないだろうか。

 電子政府、電子自治体の住民への普及の鍵となるのはオンライン上での個人認証である。鶏と卵の関係でもあるが、インターネット上で「どこの誰か」を証明する認証基盤が少しでも普及しないことには、オンライン行政サービスが普及しない。住基カードの最大の特徴は、その高いセキュリティ機能と行政による「お墨付き」にあるのだから、オンラインおよびオフラインでの個人認証のためのカードという位置付け(表2の(1)(2)(3))を明確にして、むやみに用途を広げない方がむしろ利活用されるようになるのではないか。例えば、商店街のポイントカードや図書館カードといった用途で写真付きの身分証明書を使うのは憚られる場合もあるし、こうした用途はカードの高いスペックとのバランスが取れていないので、住基カードに汎用性を持たせてお手軽な用途を追求することは止めたほうがよいのではないか。

 例えばフランスでは、CVQカード(日常生活カード)という国家プロジェクトが2003年に立ち上げられ、地方自治体により住基カードにも似た多用途ICカードが発行されている。電子マネー機能も付いたCVQカードは、学生食堂の予約や支払い、学校での出欠、レジャー施設利用の予約や支払い、駐車料金の支払いといった身近な用途に加えて、行政手続きにおける個人認証や電子投票といったありとあらゆる用途が想定されていた。CVQカードの現在の普及状況については要調査だが、同じく2003年にこれとは別に国家的な電子IDカードとしてCNIEカードが発表された。2008年の交付開始を目標とするCNIEカードには、ICチップに氏名、生年月日、住所等のほか、生体認証情報や電子証明書も格納される予定である。今後おそらく、高度な個人認証が必要な行政サービスはCNIEカード、身近な行政サービス(駐車料金の支払い等)はCVQカード、という形で住み分けが進むものと予想される。(であるので、住基カードも、上述の「個人認証機能に特化」する方向とは別に、むしろこのCVQカード的に市区町村発行の地域カードとしての特徴(表2の(4))を前面に押し出す方向性もあるかもしれない。)

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