− 第10回 −
住基ネットはなぜ活用されないのか?
〜海外事例に学ぶ〜
「宙に浮いた年金記録」5000万件の問題による世論の後押しを受けて、安倍首相が昨年から提唱していた「社会保障番号」の導入が急速に現実味を帯びてきた。社会保障番号構想は、年金や医療保険、介護保険に関する国民の個人情報を社会保障番号で一元的に管理しようとするものである。
政府ではかねてからICカード化した健康保険証である「健康ITカード(仮称)」の2012年度ごろの導入を検討してきているが、新聞報道によると、この健康ITカードを「社会保障カード(仮称)」という国民カードに発展させ、ICカードを使って年金、医療、介護の共同データベースに社会保障番号を識別子(ID)にしてアクセスし、自分の年金情報などを閲覧できるようにするとのことである。あわせて住基ネットと連携し、年金加入者の住所変更や氏名変更などの異動情報を住基ネットから取得することで、住民データの正確性も確保しようとしている。
社会保障番号については、基礎年金番号を国民全体に拡大する案と、住民票コードを利用する案、新たな番号を導入する案の3案があるようだが、いずれにしても統一的な「国民ID番号」であることには変わらない。我が国では非常にセンシティブに捉えられている問題であるので、2002年の住基ネット導入時のように、プライバシーや人権保護についての議論が再度必要となろう。
さて、「住民情報データベース(例:住基ネット)」「統一的な識別子(例:住民票コード)」「行政ICカード(例:住基カード)」この3つは、電子政府における効率的な行政業務の遂行と、住民にとって利便性の高い行政サービスの提供にとって基本的な要素である。

図1.電子政府の高度化に向けて活用すべき3要素
本稿では、後者の「利便性の高い行政サービスの提供」に焦点を当て、我が国で住民がより良い行政サービスや公共サービスを受けるためには、行政機関が管理している住民情報データベースをいかに有効活用すればよいか、海外事例も参考にしながら、住基ネットや住基カードのあり方について考えてみたい。










