− 第7回 −
シニア層が牽引する個人市場
〜拡大する「時間消費型」サービス〜
4.ITを利用した「時間消費型」サービスの充実
IT業界、とりわけパソコン業界としては、シニア層のITにおけるミスマッチを解消することが必要である。そもそも、シニア層の中には「ITは若者が使うものだ」と考えていることや、「利用したい機能やサービスが無い」と考えていることもある。そのためにはITを利用したシニア層向けの「時間消費型」サービスを充実させることにあるが、特に「テレビ」には無いITならではの使い方を提案することが重要であろう。
例えば、シニア層共通の関心事といえば「健康」や「お金」である。「健康」でなければ「旅行」等の余暇を楽しむことはできないし、そもそも「お金」に余裕が無ければ余暇どころではない。こうしたシニア層の関心事をオンデマンドで大量に情報収集したり、実際に相談や運用できる「インターネット」を利用したサービスは、もっと充実されるべきであろう。
また、趣味の多様化が進んでいる「団塊世代」にとっては、広く浅い情報が多い「テレビ」では物足りないはずで、同じ趣味を持つ集まりであるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等のサービスへのニーズは大きいと思われる。
米国SNS最大手のMy Spaceでは中高年のユーザーが増えており、55歳以上は11.0%(昨年8月時点)に達している。しかし、日本では未だシニア層には知られていないこともあって、SNS最大手のmixiでも50歳代以上のパソコン経由のユーザーは1.6%しかない(昨年12月時点)。一部にシニア層を対象、もしくはシニア層限定のSNSも出現しているが、ネットリテラシーの低い人でも参加できるように工夫する等、まだまだ改善の余地があろう。
日米大手SNSにおけるユーザーの年代別比率

5.世界を見据えたマーケティング強化が必要
いずれ訪れる高齢化社会を考えれば、今後シニア市場が拡大することは誰でも容易に想像できる。しかし、冒頭に示したように、ここ数年の消費を牽引しているのは既にシニア層以上になりつつあり、人口構造の変化以上に消費構造の変化は早く訪れている。
高齢化社会を迎えるのは日本だけではない。米国でも人口の2割を超えるベビーブーマー世代の大量退職がこれから本格化する。人口が急増するアジア諸国でも急速に高齢化が進んでおり、中国が今の日本並みの高齢社会に突入するのは2026年という予測もある。
これまでの消費トレンドを生み出してきたのは若者であった。特にITを利用した「時間消費型」サービスといえば、若者を中心に拡大してきた。事実、多くのサービス・ベンダーもこれまでは若者を意識した戦略を進めてきたであろう。中には、いち早くシニア層向けのサービスを充実してきたベンダーもあるが、新しい物好きの若者とは違って、過去の経験に裏打ちされたシニア層を取込むのに苦労しているようだ。
消費業界の中には「シニアは儲からない」という固定概念があるという。しかし、旅行のように、若者とは違った独自の価値観を持つシニア層の開拓に成功している事例もある。日本は高齢化先進国であり、シニア市場に関しては他国に先駆けた格好の実証実験の場でもある。日本でシニア層向けに対応した新たなサービスを提案することができれば、日本発のグローバル・スタンダードも夢ではないかもしれない。そのためにも「時間消費型」サービス業界には、世界を見据えたシニア向けマーケティングの強化が求められよう。
(執筆担当:天谷)
(2007年3月26日公開)










