− 第6回 −
ビジネスWeb2.0時代の到来
〜ソフトウェアのサービス化がもたらすインパクト〜
コンシューマーWebの世界を確立してきたグーグルが、ビジネスWebの領域にも本腰を入れ始めた。このところ、ビジネス市場をターゲットにした無償のネットサービスが相次いで発表されている。また、オンデマンドでCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)ソリューションを提供するセールスフォース・ドットコムも、着実にユーザ数を伸ばし、市場での揺るぎない地位を虎視眈々と狙っている。
彼らの特長は、パッケージソフトウェアを販売するのではなく、ソフトウェアの機能、あるいは開発プラットフォームを、サービスとして提供している点だ。いま、ビジネスITの世界では、パッケージソフトウェアを購入し自社のシステムにインストールして使うモデルから、SaaS(Software as a Service)と呼ばれる、オンデマンド型ASPサービスの利用へのシフトが加速しつつある。
SaaSモデルがビジネスITの世界に入り込むことで、企業にどのようなインパクトをもたらすのだろうか。本稿では、ソフトウェアのサービス化という新しいムーブメントをウォッチし、ビジネスITの構造変化について検討する。
ビジネスWebの領域へ進出するグーグル
グーグルの勢いが止まらない。ソフトウェアを中心とした技術開発力を武器に次々と新しいサービスを発表し、コンシューマーWebの世界に大きな影響を与えている。その猛威は、ビジネスWebの領域へと広がりを見せ始め、そこには従来のITビジネスモデルそのものを変えてしまうような野望さえ見え隠れしている。
グーグルは2006年8月、中小企業をターゲットとし、Webメールサービスの「Gmail」などグーグルの各種アプリケーションを独自ドメイン名で利用できる「Google Apps for Your Domain」を開始した。このサービスはビジネスシーンにおけるコミュニケーションに重点を置いており、「Gmail」の他に、インスタントメッセージング/VoIPサービスの「Google Talk」、オンラインカレンダーの「Google Calender」、さらにはオンラインでWebサイトが作成可能な「Google Page Creator」がセットになっている。
これらは、グーグルのデータセンターをインフラとして活用するSaaSモデルとして提供され、ユーザは基本的に無料で利用することができる。
ソフトウェアライセンスを販売し収入を得るモデルと異なり、グーグルのビジネスはあくまで広告を事業収入とするのが最大の特長だ。Gmailなど、企業のどの部門にも共通のニーズがあるソフトウェアをパックし、それらを企業に無料で使ってもらう。同時に、ユーザ企業には、グーグルを通じてインターネット広告を出すことを促し、1クリック何円という単位で課金し、ロングテールの裾野まで幅広い広告主から集めて利益をあげることを目指す。そこにグーグルの狙いがある。膨大なサーバインフラと、ネット広告での実績があるグーグルだからこそなせるビジネスモデルだ。ユーザ企業にとって、インフラやそのメンテナンス費用を気にすることなく、タダでWebベースでのアプリケーションを利用できるメリットは大きい。
さらに、マイクロソフトの「Office」に代表される、文書作成や表計算などの統合アプリケーションの世界においても、SaaSの新潮流が押し寄せ始めている。
グーグルは、この1年でWebベースのワープロ・表計算サービスを提供する企業を次々と買収した。いずれも小規模だが、技術開発力がある企業を買収し、グーグルが開発したワープロ・表計算のソフト「Google Docs & Spreadsheet」の強化に取り組んでいる。これについてグーグルは、表向きには、マイクロソフトへの対抗ではなく「気軽に使える一つの方法」と説明するが、彼らがこのサービスの先に「Google Apps for Your Domain」への統合を視野に入れて考えていることは、十分にあり得るだろう。
この分野では、マイクロソフトのOfficeがデファクトとして揺るがない地位を築いており、機能面の豊富さを比べるとSaaS型オフィスでは機能がやや限られる。しかしながら、ワープロ、表計算、DB、プレゼンテーションといったアプリケーションの分野では、グーグル以外にも様々なベンチャー企業が、SaaS型のソフトウェアサービスを手がけている。それらの多くは、永遠のベータ版(the perpetual beta)として、利用者を巻き込んだ開発サイクルを続ける中で、その機能はさらに充実していくはずだ。Webブラウザだけで利用でき、複数のユーザが共同で作業を行うことができるメリットは大きく、SaaS型のオフィス向けアプリケーションは今後、企業の情報共有の一翼を担う存在となるだろう。











