− 第4回 −
NGN(次世代ネットワーク)
〜通信業界の新たな構造変化は何をもたらすか
次世代ネットワーク導入で変化する業界構造
次世代ネットワークの導入は、通信キャリアなどを取り巻く環境をどのように変化させるのだろうか。これまで見てきたように、通信キャリアがこれから提供すると予想されるサービスは、通話、インターネット接続、音楽配信、テレビ放送、ゲームなど多岐にわたる。一方、欧米では従来から動画サービス提供の担い手であったケーブルテレビ各社も、それぞれが持つインフラを利用してインターネット接続やIP電話の提供を進めている。さらにYahoo!やGoogleなどインターネット企業も、インターネット検索やメール等のサービスから、動画配信サービスやオンラインゲーム、地図情報など提供の範囲を拡大してきており、最近では通信インフラを自ら取得して運営する動きすら見せている。
また移動通信分野では、HSDPAや4Gなどさらに進化した通信サービスが出現する一方、WiMAXなど無線LANの高度化により、固定通信と同様にブロードバンド化とIP化の進展が、動画配信などサービス多様化を促進する流れが進みつつある。
固定・移動融合に関しては、固定網しか持たない通信キャリアにとっては大きなビジネスチャンスになる一方、現状において比較的に高収益を保っている移動通信業者や、固定通信と移動通信の両方を提供することで両方から利用料金を得ている通信キャリアにとって、固定・移動通信を融合させることのメリットは少ないと考えられる。固定移動の融合がいわれながらも、実際にはなかなか進展しない背景には、こうしたことが大きな要因になっていると思われる。
このように、従来は別々の領域でサービスを提供していた企業群が、各種サービス提供の垣根が低くなったことで、同じ土俵に立った競争を迫られている。
業界の垣根は低くなる方向へ
資料:NEC総研作成
NGNの真価はサービスで決まる
現在、NGNを使って提供するとされる動画配信サービスなどは既にインターネットの世界でも様々なやり方で提供されており、NGNについてインターネットと何が異なるのか、あるいは本当にNGNは必要なのかという疑問も提起されている。アメリカなどにおいては、インターネットがそれ以前にあった通信ビジネスの世界にドラスティックな変化をもたらしたため、大きな影響を受けた通信キャリア自身がNGNという概念を打ち出すことで自らの地位回復を図っているにすぎないとの見方もある。
しかし、冒頭で述べたようにNGNはブロードバンド化の促進などでインターネットの利便性をさらに高めることや、現状で問題視されている通信品質の高度化にも力点を置いており、例えば現在のIP電話が抱える安価だが通話が聞き取りにくいといった問題点はNGNの普及とともに解決されていくであろう。
またNGN普及のメリットであるサービス多様化に関しても、キャリア各社が積極的に取り組んでいる有線テレビなどに加え、セキュアで高品質な回線が求められる医療関連やホームセキュリティーへの利用などが想定される。ビジネス向けにおいても、テレビ会議や在宅勤務など、これまでコストやセキュリティ面から普及が妨げられていたサービスが促進され、我々の労働形態に影響を及ぼす可能性もあろう。
現在、通信キャリア主導で進んでいるように見えるNGNではあるが、業界の垣根を越えた競争に突入した通信キャリアにとって、安価・高品質・多様なサービスを顧客(消費者)に提供することが事業成功の要件であり、彼らにとっても利用者である一般企業や生活者の意見が不可欠である事はいうまでもない。
NGNはコンピュータ領域だけでなくネットワークも含めた形で、いままで以上にアプリケーションサービスの実現範囲や可能性を広げるものであるが、その進化はわれわれ利用者からのフィードバックが推し進めていくことになろう。
(執筆担当:大平)
(2006年11月27日公開)









