− 第3回 −
急激な経済成長がライフスタイルの変化を後押し。
『中国的ケータイ新事情』

もはや、ケータイが必需品になっているのは日本や韓国だけではない。中国では、ビジネスマンはもちろん、学生の多くもファッション化したケータイに夢中だ。第三回は、急激な経済成長の中、未曾有の好景気に支えられ早くも普及期の次の段階を迎えようとしている中国のケータイ市場の動向と利用者の活用実態についてリポートする。
ビジネスエグゼクティブのシンボル“ケータイとビーエム”
中国では今、街の中のいたるところに「手机(ケータイ)」の文字が氾濫している。今まさにブームを向かえ、ケータイ販売店では多くの人々で賑わいを見せている。
北京や上海といった大都市では、比較的早くから富裕層のケータイブームが話題となっていた。しかし、大都市以外の東部地域を中心とする経済水準の比較的高い地域でも、すでにケータイの利用レベルは予想をはるかに超える勢いで浸透している。中国の経済は未曾有の成長を続け、とりわけベンチャーやグローバル企業など民間企業の躍進がめざましい。こうした企業のエグゼクティブが成功の証として、真っ先に飛びついたのがケータイと外車のBMWだと言う。

HANGZHOU FENGXING TELECOMMUNICATIONS
社長 王 容峰氏
日本では、最近でこそ見受けられるものの、エグゼクティブと呼ばれるシニア自らが、ケータイを駆使してメールを打つ姿はそれほど一般的ではなかった。ところが、中国ではエグゼクティブ自ら進んでケータイを利用し、当たり前のようにビジネスツールとして取り込み、颯爽と外車を乗り回すというのが最近のトレンドのようだ。今では、もちろんエグゼクティブに限らずビジネスマン必携であることは、日本と変らない。
ケータイ電話の販売店チェーンを展開し、自らもビジネスエグゼクティブとして国内外を飛び回る王氏に杭州のケータイ事情について尋ねた。
Q:中国のケータイ市場動向について簡単に教えてください。
A 中国のケータイの価格はおよそ1000元〜5000元(1元≒14.5円)の幅で展開されています。 若者には、低価格のものが人気で、最近では1000元以下のものあります。逆に買い替えの場合、 上位機種に人気があり高額なものでも良く売れています。中国での平均的な給与から考えてもまだまだ高額ですが、 毎月500万台にも及ぶ新規加入があります。市場が急成長し、今まさに普及の段階を迎えたとの実感があります。 2008年の所持率約50%をもって、ケータイ市場は、ほぼ飽和状態を迎えると予測しています。 日本などに比べて所持率は低いのですが、中国の人口の多さ、偏狭地域などの経済格差の関係から、 ほぼ予測通りの水準で市場が成熟すると考えています。現在は第一次の市場への浸透が一段落し、 今後利用者により魅力的なコンテンツやサービスを提供していかなければいけない段階に入ったと感じています。
Q 中国で、急激にケータイの活用が進んでいる背景は何だと思いますか?
A ご存知の通り、固定電話の通信インフラの整備が遅れたことで、 PHSやケータイの利用に拍車がかかっていると思います。また情報通信の点では、パソコンがまだまだ高額です。国土の広い中国を飛び回るビジネスマンにとっては、ノートPCよりケータイの利用のほうが、安くて身近ですから普及が加速したのだと思います。もちろん、最近ではビジネスユースだけでなく、学生もケータイでインターネットサービスを利用し、どんどん広がりを見せています。
Q 日本では、エグゼクティブ、とりわけシニアにはケータイや電子機器の活用に抵抗がある人が多いのですが?
A 中国の国営企業だけでなく、民間企業のめざましい成長が、 好景気の推進力となっています。こうしたベンチャービジネスのエグゼクティブは、 年齢に係わらずケータイなどの電子機器への抵抗は、ほとんどありません。むしろ新し いものへの取り組みは、非常に迅速でシニアのビジネスマンでもケータイでのメールの やり取りは普通になっています。一般の利用者の中でも高齢者のケータイへの関心は、 非常に高くなってきていますし、新しい物好きが多いのかもしれません。
Q 最近のケータイのトレンドについて教えてください。

ケータイでもタッチパネル式の液晶ディスプレイで簡単入力
A 低価格機種では、より小さなモデルに人気が集まります。高機能型としては、 タッチパネルで文字認識ができるモデルなども人気があります。日本製のケータイは、非常に大きいイメ ージがあり、あまり人気がないのが実情です。もう少し、中国人のトレンドを意識したモデルの開発に期待します。
Q 人気のケータイサービスにはどのようなものがありますか?
A コンテンツ配信などアプリケーションサービスの提供による収益も、徐々に増加しており、これから注目のサービスも数多く登場してくると思います。日本でも人気の着メロなどもそうですが、写真付のニュース配信なども非常に人気があります。
上海では、自分のケータイにGPSの機械を接続して、目的地の住所を入力すると、音声や地図によってナビゲートしてくれるというケータイカーナビサービスも6月から開始されました。また、「中国婦人報電子版」は、中国初のケータイ向けカラー配信新聞として7月からニュース配信を開始しました。利用者はその日の最初の時間に当日のニュースの全内容を購読できます。こうしたケータイ新聞は電子情報の付加価値業務と伝統的なマスメディア産業と結びつけたものとして注目を浴びています。
その他にも、自動販売機での飲料の購入やオンラインゲームなどのエンターテイメントアプリケーションに も注目しています。第3世代ケータイ電話(3G)への移行が進む今後、これらのアプリケーションサービスが、 ショート・メッセージ・サービス(SMS)に次ぐ、中国モバイル通信付加価値(VAN)サービスの主要事業とし て成長していくと考えます。


IT系企業に設置されたケータイで清涼飲料水やコーヒーを購入できるベンダーマシン
今回取材を行った杭州(浙江省)の人口は、4456万人。浙江省は揚子江デルタ地区、上海の南に位置しており、古くから「魚米の里」、「絨毯とお茶の都」と呼ばれてきた。お茶の生産量は中国第一位で、経済的にも従来から恵まれた地域といえる。また、近年では、企業間取引ポータルで成功を収めたアリババの本社も杭州にあり、ハイテク・IT関連企業の台頭もめざましいエリアのひとつだ。
ケータイの所持率も広東省についで、中国第二位だ。ビジネスマンのワークスタイルも日本とほぼ同様、違いと言えば昼食時間がやや長いことぐらいだろうか。ケータイ必携で商談に移動するワークスタイルは一般的で、特に使用頻度の高い人々は、ローミングでの着信料の課金をさけるために複数のケータイ+SIM カードを使い分けている。通話料の目安は市内通話0.6元/分、国内長距離1.3元/分、国際電話は8.6元/分。また、最近では通話やメール以外にも出張先でのニュースの閲覧やテレビなど動画や情報サービスに対するニーズも増大している。
中国では、ケータイを持っているのにつながらないのは、相手に失礼との意識もあり、会議中であろうが、移動中であろうが可能なかぎり、 通話に応じる姿が印象的だ。実際、どの会社に行っても会議がケータイで中断する場面に直面するため、 今後は、ケータイ文化が根付く過程でマナーや利用規定に関する課題にも直面するのではないかとの感想を持った。
- 1元:約14.5円(8月末現在)
- ショート・メッセージ・サービス(SMS):
ケータイ電話間の短いメッセージの送受信サービスのことで、中国ではインターネットを使ってもSMSが利用できる。着信メロディや待受け画像、メールニュースなども、SMSを利用してケータイ端末に受信できる。 - SIMカード:
SIMカードは、ケータイ電話から取り外し可能なICチップで、CPUやメモリでデータの送受信・保存・演算処理などを行う一種のコンピュータ。電話番号やユーザID、契約先電話会社との契約情報(通話料金)などケータイ端末を機能させるために必要な情報のほとんどが記録されている。日本のケータイ電話は、電話番号やユーザID、料金などの通話契約情報を本体に記録しているが、海外ではSIMカードの利用が一般的。











