− 第1回 −
ITで渋滞緩和を実現!
政府主導で迅速な効果をあげるシンガポールの“ERP”
政府先導で国際競争力を強化、国家がショーケース
実はERPもez-linkカードも、システムの実現には多くの日本の技術や製品が取り入れられている。先進技術を持つ日本がシンガポールに比べ、普及の度合いで遅れをとっているのは何故だろうか?
1. 政府による積極的な推進
これらのシステム導入に最も大きな影響を与えているのは、政府の対応だ。ERPなどの交通網の整備も、ICカードの利用普及もシンガポールは政府が主体となって積極的に推進している。ERPも全車への搭載が原則のため、現在の道路通行料金に加え、駐車場やその他の無人化施設での課金システムへの応用も容易なため、今後の活用の発展性にも期待がかかる。
IT教育の取り組みの早さもアジアでも有数だ。シンガポール国立大学でも電子商取引学科を開設、ビジネスに直結したIT人材を急ピッチで行っている。また、政府はインターネットの利用率が低い低所得世帯(約三万戸)向けに無料のインターネット接続サービスが組み込まれた中古パソコンを提供。デジタル・デバイドの撤廃を推進している。
2. 既存のインフラの活用
日本と大きく異なるのは、既存や共通のインフラを徹底して活用しようとする点だ。システムやサービスを提供する上で、利用者の利便性を重視するシンガポールでは、なるべく複数のシステムやサービスを共通のインフラで提供することで、より高い利用浸透率を実現している。
ERPは、キャッシュレス化の施策として登場したICカードを活用しており、ERP以外にも駐車場やガソリンスタンドの支払いなどシンガポール全土の約9,000箇所で利用できる。
ez-linkカードも、すべての公共交通機関で使用できる点で多くの利用者に徹底して使用される。日本では、ez-linkカードと同じシステムのJR東日本の「スイカ(Suica)」が良く知られている。しかし、私鉄やバスとの連携がまだとれていないため、乗り換える度に新しく切符を購入しなければならない。首都圏の私鉄で導入されているパスネットとの連携が予定されているが、当分先の話である。
3. 新しいもの好きの国民性
また、シンガポールでは、便利で合理的な仕組みや新しいものを積極的に取り入れる国民性も指摘される。中でも、限られた国土や資源を有効に活用し、国際競争力をより強化するため、社会環境を支えるインフラを改革する上で、先進的なIT技術が果たす役割は特に大きいと言える。
また、シンガポールでは、便利で合理的な仕組みや新しいものを積極的に取り入れる国民性も指摘される。中でも、限られた国土や資源を有効に活用し、国際競争力をより強化するため、社会環境を支えるインフラを改革する上で、先進的なIT技術が果たす役割は特に大きいと言える。
シンガポールは、世界に先駆けた先進技術をいかに社会生活に浸透させるか?という課題を国家がショーケースとして体現することで、国内外に広くアピールしている。
今後は、国全体の社会インフラの整備をさらに推し進め、情報通信や流通における国際的なハブ機能を持たせることで、国際競争力の強化を目指す。
しかし、政府先導の施策に必ずしも問題がないわけではない。世界でも罰金の多いシンガポールでは、その反動として最近では、若年層の違反者が増加し、様々な規制に疑問の声もあがっている。
また、シンガポールでは、外資系企業の誘致によって産業を振興してきた背景から、人口約400万人強のうち、在留外国人は約80万人。つまり人口の約5分の1が外国人で占められていることになる。ERPの成功も実際には、外資系企業などに勤める所謂富裕層が、車両の所有者であることから、導入への抵抗を最小限にしたという側面も否めない。
シンガポールは、必ずしも独自の先進技術が豊富に存在しているわけではない。日本をはじめとする諸外国の技術を取り入れながらも、施策を実行する先駆者として常に新たな挑戦にひるむことなく進んでいく。日本では、"一番乗り"のシステムは、避けられるきらいがあるが、シンガポールでは、逆にステイタスなのだ。また、利便性や効率面での効果をあげるためには、個々の企業の利害に依存せずに、共通の社会インフラの向上を目指す点も優れている。石橋を叩きながらも、なかなか渡りきらない日本企業が見習うべき点が、ここにある。
様々な技術分野で先駆ける日本だが、社会に根付いたシステムやサービス展開に至る活用の段階で、どうしても遅れをとってしまう傾向にある。活力にあふれるアジアの諸外国の動向に今こそ注目していきたい。
(2004年4月19日公開)









