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認知科学者の視点

− 第12回 −

第一印象 (2008年3月24日掲載)

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 3月、4月は区切りの時期だ。馴染みの人間がいなくなる一方、新しい人たちとの出会いがある。学校では卒業式が行われ、まもなくして入学式、始業式が行われる。職場でも異動があったり、新入社員が入ってきたりする。

 さて、新しい仲間との出会いにおいて決定的に重要なのは第一印象だとよく言われる。これは単なる迷信ではなく実験によっても確かめられている。ここに4枚のカードがある。カードの表には数字が1つ書かれていて、裏には○か×が書かれている。現在、3、4、○、×のカードが見えている。さてここで私が「偶数の裏には○が書かれている」と言ったとしよう。このことを確かめるためには、どのカードを裏返してみる必要があるだろうか。何枚裏返してもよいのだが、必要最小限のカードを裏返さねばならない。

 こういう実験を行うと、多くの人は直感的に4(偶数のカード)と○のカードを裏返してみたくなる。ところが論理学的な意味での正解は4と×なのである。どうして人は○を選んでしまうのだろうか。それは○の裏が偶数だったら、「やっぱり偶数の裏は○だ」と安心できるからなのだ。しかし裏が奇数であったとしても最初のルールに違反しているわけではないので、このカードを裏返す必要はない。一方、×が正解なのはどうしてなのだろうか。理由は簡単で×の裏が偶数だと、「偶数の裏は○」というルールに違反していることになる。よって、これをチェックしなければならない。

 この実験は、人が自分の信じていることの証拠となることには注意を向けるが、自分の信じていることを否定することに対しては注意を向けない、ということを示している。

 さてこれをカードではなく、人間に置き換えてみる。もしあなたの第一印象が良かったとしよう。するとこの印象の証拠となることに目を向け、そうではないところには目を向けなくなる。つまり相手はあなたのよいところを見つけると「やっぱりね」と安心する一方、まずいところには目がいかない。

 逆の場合は悲惨だ。あなたの第一印象が悪ければ、あなたのまずい部分に注意が向けられ、それが見つかると「だからあいつはだめなんだ」という具合に安心(?)されてしまう。仮にあなたがいいところを見せても、「たまにはまともなこともやるんだ、ふん」くらいですまされてしまう。

 小手先のテクニックで相手をだますことを奨励するわけではないが、悪印象を持たれ、不必要に不遇な時間を過ごすことは無駄だと思う。相手に対するちょっとした誠意、敬意ははじめの時ほど大きく影響することは頭の片隅にとめておいた方がよい。

挿絵/山本 正明


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