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認知科学者の視点

− 第8回 −

手は口ほどにものを言う (2007年7月17日掲載)

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 相手と話す時は、相手の目を見よとよく言われる。これは真剣に聞くという意味だけではなく、目を見ることによって、話し手の真意がわかるということもあるからだろう。嘘を言ったり、不確かなことをさも確実なように言ったりすると、ふつうの人は目がきょろきょろと落ち着きなく動くことが多い。

 目ほどではないが実は手もよくものを言うことが最近になって明らかになってきた。3・4歳児がよく間違える課題に数の保存課題というものがある。この課題では、一列におはじきを並べて、子供にこれと同じだけのおはじきを並べるように言う。すると子供の多くははじめの列とまるで同じようにおはじきを並べる。次に実験者は一方の列のおはじきの間隔を変化させ、列を長く、あるいは短くする。ここで子供に「2つの列のおはじきは同じだけあるかな」とたずねる。おはじきを足したり、減らしたりはしないにもかかわらず、3・4歳児は2つの列のおはじきは同じではないと言うことが多い。

 そこで間違えた子供に「どうしてそう考えるの」と聞くと面白い現象が現れる。子供は「こっちの方が多いよ。だってほらね」と言いながら、2つの列のおはじきを交互に指差しをする。よく考えてみれば、こうやって交互に指差しをすることは、2つの列のおはじきを一対一に対応づけていることになる。こうやれば2つの列のおはじきは同数であることがわかるはずである。にもかかわらず口では同数ではないと言ってしまう。シカゴ大学のゴールディン・メドウ教授はこうした現象を「発話と動作のミスマッチ」と呼んだ。

 面白いことに、このミスマッチは、数の保存課題ができかけている子供に多い。全然できない3歳児あたりや、完全にできるようになった6歳児たちにミスマッチは生じない。つまり2つの拮抗する考え方があるときには、一方の考えが口から出て言葉で表現され、他方の考えは手から出て動作やジェスチャーとして表現される場合があるのだ。

 これは子供だけに見られるのではなく、もう少し難しい課題だと大人においても見られることもわかってきた。とあるプロ野球の試合で審判が動作はセーフとしながら、口ではアウトと叫んでいたという有名な話がある。このとき審判の頭の中には、「アウト」という思いと、「セーフ」という思いが拮抗していたのではないだろうか。

 話をするときには相手の目だけでなく、手もよく見てみると、隠された真意がわかるかもしれない。

 

挿絵/山本 正明


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