− 第23回 −
芸術文化の発信にITはどのように役立っているか
〜ミュージアムにおけるIT化を探る〜
各種の博物館や美術館など文化施設をミュージアムと呼ぶが、日本では、そこは「教養を高める場」という意識が依然として強く、リラックスした雰囲気の中で芸術文化を楽しもうという気持ちで出かける人はまだ少ないようだ。これに対して、美術館の中には、斬新な企画やイベントによって、そこを人々に楽しんでもらえる場にしようとチャレンジしているところもあり、「アミュージアム」などという言葉も生まれている。
そこで今回は、ITを最大限に活用することによって、ミュージアムを利用者自らも能動的に参加して本当に楽しめる場にしようと奮闘するミュージアムの動きを、東京ミッドタウンと岡山市デジタルミュージアムを例に紹介する。
ユビキタスのためのインフラを備えて誕生した新しい街
2000年、防衛庁(当時)本庁が桧町(現・赤坂9丁目)から市ヶ谷へ移転したことから、この新しい街づくりはスタートした。東京の真ん中・赤坂にある約10ヘクタールという土地を、どのように生かすかという壮大なる再開発プロジェクトが、これである。
こうして生まれたのが、働く、住まう、遊ぶ、憩う、という機能のすべてが一体となった複合都市、東京ミッドタウンだ。具体的には、オフィス、ホテル、レジデンス、ショップ&レストラン、美術館、ホールなどの施設に加えて、エリアの約40%を占める緑地とオープンスペースによって1つの街が構成されている。2004年5月の着工から2007年1月の工事竣工までおよそ2年半。2007年3月、グランドオープンの運びとなった。
東京ミッドタウンマネジメント株式会社
タウンマネジメント部
カスタマー&パブリックリレーションズグループ
グループ統括
吉田幸男氏
東京ミッドタウンマネジメント株式会社は、この街全体の管理・運営を行う会社だが、同社タウンマネジメント部カスタマー&パブリックリレーションズグループ グループ統括の吉田幸男氏は、その開発コンセプトに関して次のように語る。
「このプロジェクトでは、『JAPAN VALUE』が1つのキーワードになりました。例えば、中央に位置する高層タワーの周りをビル群が取り囲むという建物の配置は、日本の枯山水庭園から想を得たものですし、建物のファサードも日本の障子をヒントに設計されました。
また、この『JAPAN VALUE』には、東京ミッドタウンを日本発の才能や技術を発信する場にしたいという熱い思いも込められています。そこで、ユビキタス・コンピューティングで世界的に著名な東京大学大学院教授の坂村健氏に、この街の構想段階からご協力いただくことになりました。その結果、タウン内の約500カ所にユビキタスマーカーを設置し、ITを使って誰もが利用しやすい安全・安心な街、省エネルギーと快適性を両立した街を構築していくことになったのです」
ユビキタスマーカーというのは、世界に1つしかないユニークな番号(ucode)を赤外線や無線などで発信するマーカーで、流通するモノや場所にすべて異なるコードが割り振られることによって、個々のモノや位置などを容易に識別できるようになる。
このucodeをユビキタスコミュニケーターと呼ばれる情報端末で受信するわけだが、この端末を使うことによって、将来的には目的地までのナビゲーション、ショップやレストランなどの案内、障害を持つ方への支援、館内物流の管理など、ucodeを幅広い用途に活用することも構想されている。
一方、六本木・赤坂エリアでは、六本木ヒルズにある「森美術館」、2007年1月にオープンした「国立新美術館」、東京ミッドタウンに移転した「サントリー美術館」の3つがアートトライアングルを形成し、アートの街としても多くの人を集めている。このような環境の中で、タウン内の要所要所にも、国境やジャンルを超えた彫刻や絵画が合計20点設置され、建物やガーデンと調和しながら、さながら東京ミッドタウン全体がアートギャラリーともいえる空間となっている。
では、ユビキタス・コンピューティングとこれらの芸術作品群が融合するとどうなるか。2007年6月、その成果がお披露目されることとなった。











