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業界が変わるビジネストレンド

− 第15回 −

ITは、日本の流通ビジネスにどのような変革をもたらそうとしているのか
〜商流と物流の両面から見たユビキタス化〜

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 生産者のもとでつくられた製品が、消費者の手に渡るまでの経済機能のことを流通という。そしてそれは、契約や代金決済などの商取引にかかわる商的流通(商流)と、具体的なモノの流れにかかわる物的流通(物流)の2つに分けることができる。インターネットが流通の分野にも大きなインパクトを与えたことはご承知の通りだが、今回はWebを含めたITの仕組みが、流通ビジネスの現場にどのような変革をもたらそうとしているのかを、商流と物流の2つの側面からレポートする。

カタログというメディアにいち早く着目して業界の常識を変える

 アズワンは、大学などの研究室で使うビーカーや測定機器といった理化学機器の卸商社である。1933年(昭和8年)に大阪・天満に創業した老舗だが、60年代の初め、アメリカ視察で見聞したカタログという先端のメディアを導入。63年、当時の業界では考えられなかった定価の入った商品カタログを他に先がけて発刊して、センセーションを巻き起こした。

 なぜなら、その当時の値決めは、ディーラー(販売店)の営業マンと顧客とが、「あうんの呼吸」でやっていくというのが慣習になっていたからである。そこにアズワンは、定価入りのカタログによって「明朗会計」のシステムを持ち込んだというわけである。

 カタログは、全国に広がるディーラーに有料で販売される。これをディーラーが、エンドユーザーである大学や企業、公的機関などの研究室に配布して、受注活動を行うというのがビジネスの大まかな流れである。カタログに掲載された全商品の価格が分かるようになったので、発注側は気軽に注文でき、予算管理も楽にできるようなった。もちろんこれで、注文の量が増えたことはいうまでもない。

 一方、中小・零細の理化学機器メーカーにとっては、それまで自社商品の存在を知らせる場がなかったが、このカタログが格好の宣伝媒体となった。さらに、研究者にとってもカタログが備品や機器に関する事典の役割を果たし、こんな研究にはこんな備品や機器類が必要なのか、といった知識を仕入れることができるようになった。

入江庸二氏

アズワン株式会社
取締役
管理本部長
入江庸二氏

 同社は日本におけるカタログ販売の先駆的存在だが、カタログにかける意気込みについて、取締役管理本部長の入江庸二氏は次のように語る。

 「一冊のカタログを開けば欲しいものはすべて揃う、というのが発行当初からのコンセプトです。ほぼ2年に1回というペースで改訂してきましたが、そのたびにどんどん商品群が増え、平成18年9月発行の『研究用総合機器カタログ』では、掲載商品数2万6600点で1700ページを超え、重さは4キロにもなってしまいました。もう1冊の本の形にするには、限界に近いところまできています」

 では、同社はなぜこれほどまでにカタログにこだわるのか。それは、カタログこそアズワンの店舗と考えているからである。そこで改訂のたびに、死に筋商品を10%落とす代わりに新しい商品を15%入れるなど、商品の改廃も積極的に行ってきた。

 「アズワンにとって、カタログはコンビニの店舗に匹敵するものです。お客様のニーズに合った商品群をいかにたくさん、効率よく陳列するかがポイントになります。ですから、販売状況のチェックを常時行って、いつも活気のある『お店』にしておかなければならないというわけです」

 ちなみに現在の同社のカタログは、研究機関向け科学機器分野、各種工場の生産ラインを対象とした産業機器分野、看護・医療を総合的にサポートする病院・介護用品分野など、計9種類に上り、平均年間発行部数は50万部。これらが全国3500社(営業拠点でいえば9500拠点)のディーラーに送られ、そのディーラーの約9万5000人の営業マンがこのカタログによって営業活動を展開しているのである。


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