− 第14回 −
日本の「食」を様々な面から支えるユニークなITの仕組み
食べ歩きのグルメ情報から食材の安全性の情報まで、今日本では、食べ物や健康に関する情報が、テレビやインターネットなどであふれかえっている。また、「スローフード」に代表されるように、これまでの「食」のあり方を見直すことによって、単に食生活だけでなく、暮らしや生き方に対する姿勢までをもう一度振り返ってみよう、というムーブメントも盛んになっている。いい意味でも悪い意味でも、「食」に対する関心がこのように高まった時代は、これまであまり例がないのではないだろうか。そこで今回は、こうした状況を背景にして、日本の現在の「食」を支えているITについて、オリジナリティあふれた2つの仕組みをレポートする。
庭先のありふれた葉っぱから年間2億円以上のビジネスが生まれた
株式会社いろどり
代表取締役副社長
横石知二氏
日本人は料理を目でも楽しむ、とよくいわれる。例えば、お刺身の盛りつけに紅葉の葉をさりげなく添えたり、お祝いの膳に南天の枝をちょっと飾ったり……。こんな繊細な演出が日本の食文化の特徴ともいえるだろう。これを料理の業界では、「つまもの」と呼んでいる。
とはいえ、よほどの「通」でない限り、このような添え物に興味関心を示す人はあまり多くはない。ところが、これに着目し、今や年商2億5000万円を超えるビジネスにしてしまった人物がいる。それが、徳島県上勝町にある株式会社いろどり代表取締役副社長の横石知二氏である。
徳島市から車で1時間ほどの山あいにある上勝町は、もともとは木材と温州ミカンが主な産物であった。ところが、木材は輸入材に押されて衰退し、ミカンも 1981年の寒波でほぼ全滅するにおよんで、人口流出がどんどん進んでいった。その2年前に上勝町の農協に入ったばかりの横石氏は、そんな中で、何か売れるものはないかと商材探しに没頭したのだった。
そんなある日、出張先の寿司屋で、客が料理に添えられた紅葉の葉をうれしそうに持ち帰るのを見て、ぴんとくるものがあった。こんな葉っぱだったら、町にはそれこそ掃いて捨てるほど転がっている。そんな自然の恵みが、もしかしたら商品になるのではないか、と。では横石氏自身、確たる自信があったのだろうか?
「それが果たしてビジネスになるかどうかなんてことは、最初、全く頭にありませんでした。ただ、町の過疎化を黙って見過ごすわけにはいかないという一念で、がむしゃらに突っ走っていったというのが正直なところです。
どんな料理にどんなつまものを使うのか? 料理人はそれをどのように使って料理の付加価値を上げていくのか? 高級料亭や市場など、普通の人があまり入れないようなところにも押しかけ、料理のイロハを勉強することがすべての始まりでした」
それからは、町の人たちに自分のアイデアを説明しながら、生産者の輪を広げることが横石氏の仕事となった。「こんなただの葉っぱが、本当に商売になるの?」と、当初は皆、半信半疑だったが、横石氏の熱意にほだされる形で、やってみようという人が少しずつ増えていった。ここで、最大の応援団となったのが町のおばあちゃんたちである。こうして1986年、上勝町の「葉っぱビジネス」はスタートした。
紅葉のパッケージ
「例えば、自分の家の庭先に植わっている樹齢100年の柿の木。それまでは何の値打ちもないただの木だと思っていたのに、実はものすごい値打ちものだったということになれば、楽しくなるものです。このビジネスで年間数百万円という収入を得ることができ、自分たちも新しいことをやれるんだと実感できたあたりから、生産が軌道に乗ってきたのです」と、横石氏。
主な商品アイテムは、紅葉、南天、笹、梅、桃、桜、つつじ、あじさい、柿、うらじろなど。アイテム数は323種に上るというが、桃や柿などの果物は、果実の方ではなく葉っぱや枝が商品になっているところが、このビジネスの面白いところである。










