− 第6回 −
ITの活用によって日本の農業をもっと元気に
〜データに基づいたより科学的な農業の時代〜

安心・安全で、健康によいものを食べたい。このようなニーズの高まりによって、農業や食料に対する消費者の関心はますます熱を帯び、農業生産の現場も活性化されているように思われる。
では、このような状況を背景に、ITは農業生産の場でどのように活用されているのだろうか。公的研究機関と、民間企業のそれぞれについて、その取り組みをレポートする。
ベテランの農業生産者が持つ技術やノウハウを次世代に伝えるシステムづくり
中央農業総合研究センター
農業情報研究部長
片山 秀策 氏
農村地帯の高齢化は、日本の社会を先取りする形で進行している。独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター 農業情報研究部は、農業・農村の未来を支えるIT研究を専門に担当する研究機関であるが、研究部長の片山秀策氏は次のように語る。
「農村地帯は、日本全体の高齢化の20年先をいくといわれ、実際に現地でフィールドワークをやってきたわれわれも、それを実感しています。ということは、今の農村地帯の高齢社会に対処できる方策が見出せれば、これからの日本全体の高齢化に対する先行的な事例になるわけです」
例えば、農業後継者の問題。これは、相変わらず頭の痛い問題であることに、違いはない。しかしそのようななかでも、他産業から転身して農業を始める人、定年を迎えて農業に取り組む人など、新規就農者は少しずつ増加している。
これまでの農業は家族経営が主体で、農業生産にかかわる技術やノウハウは「口伝」のように伝承されてきた。しかし、経験の浅い就農者に対しては、もっとしっかりとした形で伝えていく必要があるだろう。
そこで、ベテランの農業生産者が持つ技術やノウハウ、さらには農業生産にかかわるデータをできるだけ数多く集め、それを基に意志決定支援システムをつくっていけば、そうした人たちをサポートしていけるはずである。
「農業はクローズな環境のなかで生産者が農作業を行い、ドキュメントなどはほとんど残してきませんでした。一方、工場で何かものをつくろうとするとき、その製造手順や製品の評価基準など、すべてドキュメント化されているのが普通です。これを農業分野でやろうというのが、私たちの発想のベースです。もちろん、このような仕組みを構築するにあたって、ITの存在を抜きにして語ることはできません」と、片山氏は農業情報研究部の基本的なミッションを説明する。











