− 第5回 −
ユビキタス社会は「キャッシュレス」がトレンドに
「おサイフケータイ」
日本では、ちょっとした買い物であれば現金で決済するのが普通である。しかしこれだと、小銭を持ち歩くのが煩わしいし、購入した商品と現金を交換するとき、釣り銭などをめぐってトラブルが起こる可能性もある。こうした不便を解消しようとして生まれたキャッシュレスのシステムが、電子マネーだ。また、携帯電話をうまく使って、損害保険の契約時に書類と現金の受け渡しの必要をなくした損害保険会社も現れている。これら金融ビジネスにおけるITへの取り組みの最前線をレポートする。
銀行業界は情報通信ネットワークシステムの草分けだ
最初に、金融ビジネスとITとの関わりについて振り返ってみよう。
昭和30年代の高度経済成長期。好景気を背景に人々の所得が伸び、わが国の金融機関は大衆路線へと大きく舵を切っていった。その結果、顧客が増大するとともに事務量もうなぎ登りに増えていったが、特に営業店のカウンターで顧客とダイレクトに取引を行う普通預金の事務処理が、最大の課題となった。
入出金などの処理をすべて人手でやろうとすると、手間と時間がかかりすぎるようになったからである。しかし、事はお金にかかわる問題だけに些細なミスも許されない。このため、迅速で正確な情報処理のシステムを求める声が高くなっていった。
こうして1965年に、ある都市銀行でオンラインシステムが初めて稼働することになった。これは、銀行の本支店間を結ぶもので、第一次オンラインシステムと呼ばれている。1965年といえば、コンピュータというものの存在すら珍しい時代である。次いで、昭和50年代には第二次オンラインシステムが、昭和60年代には第三次オンラインシステムがそれぞれ稼働を始めた。
このように進化してきたバンキングシステムは、基幹的な業務の処理を行う勘定系を中心に、情報系、国際系、対外接続系、資金証券系、そして営業店システムなどから構成されているのが一般的だが、いずれにしても、銀行は古くからITのビッグユーザーであり、情報通信ネットワークシステムの草分け的業界であるといえる。
また銀行業界は、ICカードやキャッシュカードなどさまざまな機能を付加し、多機能カードとして実用化しようという試みにも早くから取り組んできた。昭和60年代の初めには、いくつかの銀行で実証実験のプロジェクトがスタートしている。しかし、カードの進化にATMをはじめとしたシステム全体が追いついていかないという状態が続き、銀行におけるICカードの利用は、あまり進まなかった。
この時検討されたのは、ICカードをカード情報の読み書き装置であるリーダー/ライターに挿入して、情報のやりとりを行う接触ICカードである。これに対して、リーダー/ライターに挿入することなく、装置の上にかざすだけでカードとの間で情報のやりとりができるのが、非接触ICカードである。1988年、ソニーはこの非接触ICカードの開発をスタートさせ、その結果生まれたのが「FeliCa(フェリカ)」という技術だった。









