− 第1回 −
専用読書端末で広がる世界
〜出版界活性化の起爆剤として期待される電子書籍〜

出版界は今、電子書籍という新しい出版形態の登場により、大きな変革の中にある。
電子書籍とは、インターネットでダウンロードした文章や画像のデータを、パソコンや携帯情報端末(PDA)、携帯電話、専用読書端末などの画面上に表示する形態の書籍のことだ。その市場規模はおよそ10〜20億円といわれているが、まだまだ本格的な普及にはいたっていない。その大きなネックとなっているのが、PDAや携帯電話が、もともと本を読むという行為を想定してつくられた電子デバイスではなく、じっくり読書を楽しみたいという人には、敬遠されがちだったことが挙げられる。さらに、電子書籍に対応して不正コピーや不正使用を防止する、デジタル著作権管理技術(DRM:Digital Rights Management)の問題もあった。
しかし、2003年から2004年にかけて、紙の本と同じような大きさで、なめらかでシャープな文字を表示できる専用読書端末が国内2社から相次いでリリースされ、本格的なモバイル読書が可能になってきた。こうしたことから、2004年を「電子書籍元年」と呼ぶ人もいるが、今回は電子書籍ビジネスの台頭により、大きな転換点を迎えている出版界の動きを追ってみよう。
出版不況という長いトンネルにも薄日が
本題に入る前に、出版界の現状を少し概観してみることにしたい。
昔から、出版は景気に左右されないという神話のようなものがあった。
1971年から2003年までのスパンで、書籍と雑誌をあわせた実売総金額の推移を見てみると、1971年から1996年までは、確かに一度も前年割れすることなく、右肩上がりで順調に数字が伸びている。
この、20数年という時間の流れのなかでは、オイルショックをはじめとしたさまざまな景気変動があったが、ひとり出版界だけは成長を維持し続けてきたわけだ。これは、バブル景気とその後の大不況のときも同様で、90年は対前年比4.9%、91年は同5.7%と高い伸びを示し、その後96年まではいずれも増加して推移している。
ところが、この96年がピークだった。97年に対前年比0.7%減とマイナスに転じ、その後は右肩下がりの売り上げ不振を続けている。ちなみに、2003年の出版界の売上金額はおよそ2兆3,180億円で、対前年比4.9%の減少となっている。
出版は景気に左右されにくく、不況に強いという「神話」は、過去のものになったといえるだろう。しかし、そんななかで薄日も射してきている。2004年の上半期分をまとめた速報値によれば、売上金額は前年同期比1.0%増の1兆1,395億円。7年ぶりにプラス成長に反転したというのである。
また、読者が完全に本離れを起こしているかといえば、決してそうではない。
養老孟司著『バカの壁』(新潮社)は発売から累計で361万部を売り上げ、このほかのいわゆる「養老本」も順調な売れ行きを見せている。また、片山恭一著『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館)は300万部超の販売実績を上げている。
さらに、『冬のソナタ』をはじめとする韓国テレビドラマの関連書籍の売れ行きも依然として伸びているし、『ハリー・ポッター』シリーズの最新作の発売では徹夜の行列ができるなど、魅力ある本は読者をがっちりつかんでいるのである。
以上が、本を取り巻く現在の状況であるが、そのなかで出版物のデジタル化の流れは、着実に進んできている。出版物の印刷は、1450年ごろグーテンベルクによって発明された活版印刷が、その出発点となっている。そして現在では、DTP(Desktop Publishing)システムの誕生により、印刷物の多くは、デジタルデータによって作られている。これは印刷用の版をデジタルによって制作しているわけだが、デジタルコンテンツそのものを配信しビジネスとしているのが、電子書籍ビジネスだ。
電子書籍の市場規模はおよそ10〜20億円といわれている。業界全体から見ればまだ微々たる数字だが、いままさに開拓が始まったばかりであり、出版不況をはねのけていくための起爆剤とも期待されている市場といえよう。
その新しいビジネススタイルをつくろうとしているのが、ソニーが開発した専用読書端末「リブリエ」であり、この電子デバイスを使った“Timebook Town” というサービスである。また松下電器産業も、電子ブックt「Σbook(シグマブック)」を開発し、同様に電子書籍ビジネスをスタートさせている。









