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ユビキタスビジネストレンド

− 第6回 −

情報と人をつなぐインターフェース
〜ディスプレイの進化がコミュニケーションを変える〜

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【第二章】 製造・物流の世界で進化するディスプレイ

ディスプレイ活用の生産システム

 ディスプレイの活用は、小売りやレストランなどの顧客に対するサービス業務に限ったものではない。例えば、製造業の現場においても活用が進んでいる。最もわかりやすいのが、作業手順書などの紙のマニュアルをデータ化し表示するアウトプットとしての利用法だ。ローランド・ディー・ジーでは、作業者支援の仕組みとして、ディスプレイを使った「デジタル屋台」というシステムを構築し、活用している。この背景には、少品種大量生産から多品種少量生産の時代へと変化したことに対応し、従来の流れ作業型の生産方式から、「屋台生産方式」と呼ばれる生産方式に変更したことがある。

 「屋台生産方式」は、個別のカスタマイズ対応なども可能な生産方式だが、その分、部品点数・作業工程が標準仕様に比べて多くなり、製品ごとの準備作業を覚えることが難しくなってしまう。このため、熟練作業者を前提に運用することになるが、それでも作業中に手順書などの頻繁な確認が必要となり、この部分に時間を費やす結果となってしまう。そこで、作業台に設置したディスプレイに工程に応じて作業指示を表示、必要な部品類を納めたボックスなどにもセンサーを組み合わせることで、作業の進行と連動してディスプレイに作業手順を表示したり、必要な部品の場所を明示することで、誰でも製品が組み立てられるようにしたものだ。ディスプレイに表示される作業手順は、紙にすると800ページ近くになる分量があるとされ、それだけでもペーパーレスの効果があることはもちろん、800ページものマニュアルをいちいち検索し参照する手間も大幅に短縮している。


  • 屋台生産方式:
    作業者が自分用の作業台を使い、部品組み立ての始めから最後までを行う。

「身に着けるディスプレイ」で作業支援

 このようなディスプレイを活用した作業支援システムの中でも、ここ数年注目を浴びているのが、ヘッドマウント式のディスプレイの活用だ。その最大の利点は、ハンズフリーで、視界の妨げにもならないため、作業をしながら手順の確認などを行える点にある。この利点を活かし、物流の現場でヘッドマウント式のディスプレイを使ったオリジナルの業務システムを開発、実用化しているのが島津ロジスティクスサービスだ。

 物流の現場では、多品種少量出荷に対応し倉庫内の保管効率を高めるために、従来のように同一の製品を決まった場所に保管するのではなく、倉庫内の保管スペースをアドレスで細分化し、開いている場所にフレキシブルに品物を保管していくフリーロケーション管理が欠かせない要素となっている。また、出庫に際しては、先入れ先出しも守らなくてはならない原則だ。もちろんこれらの管理には、従来からコンピュータが使われていたが、ピッキングに際しては大量の伝票を出力し、いちいちそれらの伝票を確認しながら倉庫内を往復しなければならなかった。

 島津ロジスティクスサービスの秦野物流センターでは、島津製作所で製造したさまざまな部品の物流を請け負っており、取り扱う品目数は約1万2000点と多岐にわたっている。1日の発送数も300件を数えるが、センター内の入出庫作業には、伝票類は一切使用されていない。どの品を、どこから、いくつ出庫する、もしくは入庫するといった指示は、すべて作業者の顔の前面にある小型の画面上に表示されるのだ。

ピッキングシステム
島津ロジスティクスサービスの秦野物流センターで
使用されているHMDを使ったピッキングシステム。島
津製作所の開発したヘッドマウントディスプレイ
「Data Glass2」のほか、腰に取り付けたコントロール
ユニット、バーコードリーダーなどからなる。

 「正直ここまで効率が上がるとは考えていなかった。今や当社にとって欠くことのできないシステムだ」と、同センター長の細見浩一氏が驚くほど、ヘッドマウントディスプレイを使ったピッキングシステムの効果は高い。同システムでは、無線LANを通じてデータベースから作業者に出庫指示が送信され、ディスプレイの画面上には、出庫する製品の置いてある棚の番号や必要な個数などが表示される。作業者は画面上の指示に従って棚にあるバーコードを読み取り、必要な個数を取り出すと次の出庫指示が表示されるが「このシステムを使ってから、作業の連続性が高まり、効率は当社の他の物流センターと比べて倍近く高まっている」という。また、ピッキングの際に、間違った棚のバーコードを読み取ると、画面上にエラーメッセージが表示されるようになっているため、ミスはほとんど生じない。「棚卸時の在庫数の誤差が0.1パーセント程度と、従来とは比較にならないほど正確です」

「Data Glass2」
60センチ先に13型のフルカラー画面を表示することができる高性能
な「Data Glass2」。約80グラムと軽量で、メガネをした上からでも
使える。(島津製作所HPより)

 このシステムの要となるのが島津製作所のヘッドマウントディスプレイ「Data Glass2」。これは、同社が航空機のパイロット用に開発したディスプレイの技術を、他の業態に応用することを目的に製品化したもの。ディスプレイユニット部はわずか80グラム(ケーブルは除く)と小型軽量ながら、800×600ドットのフルカラー画面で、前方60センチ先に13型サイズの映像を表示することが可能だ。島津ロジスティクスサービスのほかにも、Hitz日立造船が納入した香川県高松市の南部広域クリーンセンターごみ処理施設でのプラントの点検作業に使われているほか、昨年は「鈴鹿8時間耐久ロードレース」のピット内でも実際に利用されるなど、今後はさまざまな用途での活用が期待されている。また、次世代のコンピュータ形態として期待されるウェアラブルなコンピュータの実現にも、ヘッドマウントディスプレイの技術は欠かせない。実際、島津ロジスティクスサービスや日立造船の活用するシステムは、限定的ながらウェアラブルなコンピュータシステムと呼べるものなのだ。


(2004年7月20日公開)


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