藤木:
ブログを続けるためのキーワードは、「好き」と「報い」の2つ。「好き」ではじめたパワーが読み手にも伝わり、読み手(ファン)の存在がモチベーションとなって、ブログを続ける原動力となっています。「報い」は、"金銭"、"知"、"名誉"、"自己確認"などです。さらに自分にとっては、プライベート、オンビジネス、ライフワークのそれぞれにおけるネットワークの広がりが、ブログによって得られたことが大きなメリットと言えます。「こういう仕事がしたい」とブログに書けば、人材ネットワークが広がる。音楽で言うとデモテープを全世界に発信しているようなイメージでしょうか。
野澤:
「趣味性の高いもの」か「専門性の高いもの」のいずれを追及するのが継続の秘訣なのか試行錯誤の最中です。自分にとっては、文章を書くトレーニングにもなる点でも意味はあると思っています。社内や知人など、身内のコミュニケーションを超えた、知らない人達とのネットワークをどう広げるかが今後の課題です。
NECトラクタラボメンバー:
社内の沈滞したムードの突破口として活用することもあります。面と向かって言えないこともブログなら話題にできる。社内コミュニケーションの補完ツールとして役立てています。
林:
4年くらい前までは、日本でブログを活用している人は伊藤さんなどごくわずかでしたが、今や総ブロガー時代になりましたね。環境も内容も随分様変わりしてきたと感じます。ブログで書く内容とSNSで書く内容も違うと感じますがいかがでしょう。
藤本:
私の場合SNSは100%リアルな友人を対象としています。リアルコミュニケーションを維持するために使っていますので、内容はプライベートなものに限定されます。一方、ブログは仕事を中心とした内容が多くなっています。情報発信にも使うし、逆に仕事に関連した情報を得る場合にも利用します。人によっては、誰にも知られていない"自分だけの思い"を綴るブログも秘かに続けています。情報というのは、情報を出したところに集まる傾向があるので、特性にあわせてSNSやブログを使い分けています。
伊藤:
日本ではかなり古くからネットワーク上の日記文化が育っていて、お金をかけずに日記サイトを運営してきた人達がブログを定着させたという経緯があります。自分が日本にブログを紹介した頃はまだ批判的な評価が多かったのですが、現在ではブログは標準的なプロトコルとして一般化しましたし、SNSは日記コミュニティの延長として活用されているように思います。
よく見られているブログは大きく3つに分類できます。1つ目は、「マスコミと戦うブログ」のようにGoogleのランキングでもトップ圏内にはいるようなもの。2つ目は、「(様々の分野の)カテゴリーキラー」となるもの。そして3つ目は「ラーメンブログ」のようにあくまで自分の趣味でつっぱしる内容にニッチなファンがつくようなブログです。しかし、全体の約80%は自分しか読まないようなブログだと思います。最近のケータイブログなどは知人に状況を知らせるための「小さなブログ」として活用されています。私は最初個人ブログとして好きに書いていましたが、だんだんとアクセスも増え、時として社会問題にもなりかねなくなり、実は最近、やや面白みが減ってきたと感じています。
鹿野:
自分のブログは読まれなくてもまったく気にしませんね。"物書き"なので自分の正しいと思うことを書くだけです。あえて"結論を言い切ってしまう"書き方にしているので、反応も少ないですし。ブログは書きたいことを持っている人が使うのに向いていると思います。SNSは読む側も主張がしやすい環境が準備されていて人と人をつなぐ仕組みが作られているという点がブログとの違いなのではないでしょうか。2チャンネルも匿名の世界だが優れたコンテンツに満ちています。個人的には、日本のブログはSNSや2チャンネルの狭間で、どっちつかずの状況だと感じています。
伊藤:
プロのライターのブログは結論を出してしまうような完結した内容で記事をまとめることが多いので反応しにくいコンテンツが多いのが特徴です。コンテンツマネジメントシステムとして使用しているパターンも多く見られます。
上野:
結論を出してしまうパターンでのメリットは、仕事に直結して顧客などにも情報発信できることだと思います。そのため、SEOも意識している。ある意味お金をかけずに自分の業務をアピールできる場となっています。

(左から)カレシー氏、鹿野氏、池田氏
伊藤:
米国のブログはフリッカーでタグを共有して情報交換することが多いので、Googleなどでは上位に入らないめずらしいトピックスやかなりニッチなもの、裏話的なものまで幅広く見ることができます。ただ、誰にも見られていないと思って書き込んだコンテンツがバレてしまうなど、リスクが存在することも理解しておく必要があります。
池田:
確かに書く側の覚悟は必要だと思います。例えば、Linuxが面白くて評価されたのは、オープンソースという旗のものに競合同士が協力して一緒に動けたことが大きい。同じようにブログを使って組織の壁を越えたコミュニケーションができればおもしろいと思います。西海岸ではこうした人材の流通(人の入れ替わり)に大きな価値があるのではないでしょうか。
カレシー:
自分の経験でも批判的な意見を発信することで大きな反響を呼んだことがあります。ブログではネットワークを介して、個人的な情報や意見がリアルの情報に溶け込むといった特徴を持っていると感じます。
伊藤:
米国でも例えばマイクロソフトはブロガーにオープンな姿勢をとっていますが、アップルのように、ブロガーを訴えたケースもあります。しかしその反面、ブロガーの意見を口コミマーケティングとして活用するなど情報のコントロールがうまいのも特徴です。その他、GMの副会長のブログが人間性がわかっておもしろいと言われるように、普段はオフィシャルな見解しか述べないエグゼクティブの本音ブログは人気が高いですね。
藤木:
"えらい人"の生々しい声は、たとえヘタな文章だとしても非常に魅力になりますね。しかし、日本の企業では、一般に広報などによるトップの管理が厳しいので、難しい面もあるのが実情です。
今津:
自分も米国外資系企業のマーケティング部門にいた際、夢を語れるかどうかといった素養を問われる経験が多々ありました。一方、日本の企業のトップは、欧米に比べて自分のアピールの仕方を心得ている人材が少ないように思いますね。独自の人間性やオピニオンで魅力を発揮できるひとの情報発信には魅力を感じますが、"問題発言は避けつつ"かつ"魅力を発揮できる"よう自分で情報コントロールをできるようなトップは残念ながら限られるのではないでしょうか。
藤木:
ブログの良さには昔の「縁側」のような"あいまいさ"もあるんじゃないでしょうか。暗黙のルールがありながらも、知らない人でもいつのまにか腰掛けてをかけられるような不思議な親近感におもしろさを感じます。
伊藤:
しかし、縁側的な発想だけでは難しい状況も米国では起きています。すでにブログが公式な情報として捉えられているので、裁判などの証拠としての企業のボードメンバーなどは大きなリスクを抱えています。裁判所もブロガーを大きな課題としてとらえています。一方、社内ブログなどのガイドラインは次第に定着してきており、きちんとした情報発信を行っている人達も多いのです。
今津:
プライベートではないビジネスブログでは、露骨な表現や傲慢な書き方はやはり避けます。パーソナリティは出した方が魅力的にはなるが、オフィシャルな情報発信ではある意味での"距離感"が必要なのではないかと思っています。距離感があるからといって、自分らしさが出せないわけではないと思います。逆にオンビジネスで、一人歩きする文章などのニュアンスにも結構気を使っています。

(左から)今津氏、伊藤氏、林氏
カレシー:
情報のコントロールという視点では、距離感という発想はおもしろいですね。
藤本:
確かにNEC社内でも事業部長以上はブログを開設していますので、そこに発信されるコンテンツを見てその人の考え方や人となりを判断することもあります。
伊藤:
世代による意識の違いも無視できない。今、ケータイ世代としてツールに慣れ親しんでいる人達が企業のトップになる頃には成熟したブロガーに育っているはずです。10年後、こうした世代がネットワークの世界からリアルワールドに深く関わる際にどのような情報発信ツールがメインになるのか楽しみです。
池田:
ケータイが生活に密着している日本では、ブログもケータイとの融合が大きな方向性のひとつと考えられます。
成川:
確かにケータイ世代のコミュニケーションはブログやSNSといったツールが主流になると考えられます。一方で、人と人とのコミュニケーションは、そうしたものだけで十分なのか?考えさせられることもしばしばですが。
伊藤:
総じて、エフェクティブな人は、その時代のメディアの使い方がうまい人です。「ブログ」という言葉(囲い)にこだわらず、例えばケータイの文化がSNSに融合し、サブインターネットの世界に広がって未来のコミュニケーションを豊かにしてくれるものと期待しています。こうしたツールを活用しながら、"人"や"人とのつながり"を大切にするためのリテラシーが必要です。今の社会のいい面、ポジティブな面をぜひ発展させることが重要だと思います。
藤本:
確かにNEC社内でも事業部長以上はブログを開設していますので、そこに発信されるコンテンツを見てその人の考え方や人となりを判断することもあります。

(左から)野澤氏、成川氏、カレシー氏
林:
ブログは人によって好き嫌いがはっきりするツールではありますが、今日のような話はぜひ企業のトップにこそ聞いていただきたいですね。コミュニケーションツールとしてなのか、ビジネスツールとしてなのか、活文化がSNSに融合し、サブインターネットの世界に広がって未来のコミュニケーションを豊かにしてくれるものと期待しています。こうしたツールを活用しながら、"人"や"人とのつながり"を大切にするためのリテラシーが必要です。今の社会のいい面、ポジティブな面をぜひ発展させることが重要だと思います。
ブロガーの皆さん、長い時間に渡って、意見交換いただきありがとうございました。

(2006年12月4日公開)











