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<title>くねくね科学探検日記</title>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/</link>
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<language>ja</language>
<copyright>Copyright 2008</copyright>
<lastBuildDate>Sun, 31 Aug 2008 20:05:58 +0900</lastBuildDate>
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<docs>http://blogs.law.harvard.edu/tech/rss</docs> 

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<title>グーグルマップ・ストリートビュー</title>
<description><![CDATA[<p>みんなもう知っていると思うけど、８月の５日からグーグルマップ・ストリートビューが日本でも使えるようになった。</p>

<p>これは、グーグルマップに、道から撮影した映像を表示させる機能を付加したもの。しかもその写真の視点は、マウスなどで、上下左右自由に動かせるし、一歩一歩道を歩いて、変化する風景を楽しむこともできる。</p>

<p>一筆書きっぽく道を回っているらしいので、時々思い通りの方向に行けなくて迷子になったりする。</p>

<p>あと、前方の交差点で左からまぶしい朝日が差し込んでいるのが見えてるんだけど、その角を左に曲がると曇り空とか、不思議なロールプレイングゲーム感もあじわえたりして。 </p>

<p>サービスインしたのは、まだ、東京をはじめとした一部地域だけだけど、始まっているところはかなり細い路地まで撮影されていて、驚いた人も多いみたい。</p>

<p>ぼくも、存在自体はアメリカのスタート時から知っていたけど、そのときはいまいちピンと来ていなかった。でも、実際自分の家とか見てしまうと、そのなまなましさにかるくショックを受けたりして。</p>

<p>サービスイン直後は、名所に行って観光してみる人、アニメのモデルになった町並みをみつけてくるひとなどがいた。</p>

<p>面白いのは、自分の思い出の場所に行く人が多かった事。<br />
子供の頃住んでたところとか、母校の周辺とかを見て色々な思いにふけったり。</p>

<p>わざわざ出かけていくほどのことはないけど、ふっと思い出して見てみようという気にさせるんだろう。<br />
そういう思いを抱かせるメディアってのは、なかなか面白い。</p>

<p>オレも昔つきあってた彼女の家に行ってみようかと思ったけど、切ないのでやめた。（ ・∀・ ）</p>

<p>まあしかし、このなまなましさのせいか、プライバシーの侵害だとか、犯罪に使われるのではと言う拒否感を持つ人も少なくなくて、こんなシンポジウムも開かれている。</p>

<p><a href="http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/28/news032.html">「Googleストリートビュー」は何が問題か――MIAUがシンポ</a> </p>

<p>ただ、ぼくとしては、ストリートビューにそれほど問題は感じない。</p>

<p>グーグルは、顔と自動車のナンバープレートは自動処理でぼかしを入れ、クレームのあった写真は即座に削除していて、それで対応は十分だと思う。</p>

<p>ストリートビューはリアルタイム更新されてるわけではなくて、何ヶ月も前に撮影された映像が使われている。今後どの程度で更新されるかは解らないけど、たぶん半年とか１年以上は間が開くんじゃないだろうか。</p>

<p>この条件下で問題があるとしたら、知り合いやご近所さんに、自分の見られたくない姿を見られたときくらいだろう。</p>

<p>実はサービスインから数日の間、なかなか良い感じの写真が掲載されていた。</p>

<p>それは、小学校の通学風景なんだけど、やんちゃっぽい男子が、後ろから女子にスパーンとはたかれて、前方に、おわっって感じでつんのめっている様子。</p>

<p>なんかほのぼのした、街角の風景ってかんじで、見たときは心安らいだよ。</p>

<p>でも、これはたぶん当事者からクレームがあったんだろう、消されてしまった。</p>

<p>この子供たちに何の縁のゆかりもないぼくにとって、この写真はいいかんじだけど、当事者たちは、そのご近所さんや知り合いに、この写真を見られるのは嫌って思ったんだろう。</p>

<p>推測すると、たぶんこの少年は、まわりから「また女の子にちょっかい出して」なんて感じで囃されたりするだろうし、女の子のほうは「きっつい娘やなあ」なんてかんじでからかわれたりするんじゃないかと思う。それは、嫌といえば嫌だよね。</p>

<p>つまり、こういう写真は、身近な人に見られると恥ずかしい。</p>

<p>ただ、身近な人なら、少年がいたずらっ子であることや、少女がキッツイ性格であることは、たぶん先刻承知だと思う。知っていて、からかうことはあるだろうけど、そういうのはしばらくするとみんな忘れてしまうようなものだ。</p>

<p>だから、嫌って思う気持ちは、たぶん一過性のものなんだよね。</p>

<p>さらにいえば、こういう映像が見つけられたのは、ストリートビュー上で面白い写真を見つけて、それを収集するサイトがあるからだ。</p>

<p>こういうサイトができるのは、サービスイン直後で物珍しいからってところが大きい。</p>

<p>実際、グーグルマップが始まったときも、直後に世界の珍しい地形や建物を紹介するサイトができて、いろいろ盛り上がった時期があって、このブログでもそんな不思議地形を紹介したことがあった。</p>

<p>でも、今では新しい不思議な地形を探す人もほとんどいないし、そういうサイトを訪れる人もあまりいないだろう。すでに飽きられているわけだ。</p>

<p>それと同様に、ストリートビューの珍しい画像収集サイトも、少し時間が経てば閑古鳥が鳴いて、知りあいに見られたら嫌だなあと思うような写真も収集される機会が減って、結果として自分が嫌と思う写真が評判になる機会はものすごく少なくなる。</p>

<p>それにストリートビューでは、珍しい写真といっても、ラブホテルに入る人とか、頭のおかしい人が住んでいそうな異様な建物とか、なんか心霊写真みたいに何かが写っているとかくらいで、バリエーションが少なくて、すぐに飽きちゃうかんじ。オレ的にはもう飽きてる。</p>

<p>今、ストリートビューに異を唱えているのは、この技術によって深刻な被害を受けた人たちだとは思えない。そうでなくて、新しいものに出会ったショックで、とりあえず拒否しているって感じじゃないかと思う。</p>

<p>新しいものに出会ったときの形のない不安が、「プライバシー」とか「犯罪に使われるかも」などの単語に収束して、それが問題だと思ったりしている。だけど、現実にこれでどの程度のプライバシー侵害とか犯罪が起きうるのかというと、たいしたことは起きないと思うのね。</p>

<p>その結果、時間が経つと、最初は不安に思っていた人も、いつの間にかその不安を忘れて馴染んでいく。半年もすれば、今言われている問題のほとんどは忘れ去られるんじゃないかなあ。</p>

<p>つまり、顕在化している意思表示は、急性反応であって、やがて収まるのではないか。そのような反応について、あまりに速い段階でくみ取って問題視するのは、新しいものをいたずらに否定するだけになりかねないと思うのね。</p>

<p>まあ、グーグルみたいに大きな力を持つものが何事かをし始めたら、とりあえず拒否する人がいるのは良いことだし（ほどほどならね）、それによって議論が起き、深められるのは正しいことだとは思うけど。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/08/post_147.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sun, 31 Aug 2008 20:05:58 +0900</pubDate>
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<title>イスラエルの下肢麻痺者向けエクゾスケルトン</title>
<description><![CDATA[<p><a href="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/Argo%20Medical%20Technologies%27%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF1.jpeg"><img alt="Argo%20Medical%20Technologies%27%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF1.jpeg" src="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/Argo%20Medical%20Technologies%27%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF1-thumb.jpeg" width="300" height="450" /></a></p>

<p></p>

<p>イスラエルのArgo Medical Technologiesって企業が、下肢麻痺患者用に<br />
ReWalkというパワードスーツを開発している。<br />
エクゾスケルトンというのは外骨格の意味で、ここではパワードスーツのことね。<a href="http://www.reuters.com/article/scienceNews/idUSLP27939120080825">ロイターの紹介記事。</a><br />
で、<a href="http://www.reuters.com/news/video?videoId=89631">ビデオはここ</a>。</p>

<p>２０１０年に、2万ドルで販売予程とのこと。</p>

<p>２０年間下半身麻痺していた人の足を、外骨格が強制的に動かして歩いたり、階段の上り下りもできる。</p>

<p>前の項で紹介したホンダのは、ある程度歩ける人のパワーアシスト装具。<br />
対してこれは、自分の意志では全く足を動かせない、下肢麻痺患者に使うという発想の装置。</p>

<p>手首の操作ボタンで、立つ、座る、歩く、階段を上る、降りる、を選んでから、身を前に乗り出すような動作をすると、ボディセンサがそれをキャッチしてコマンドを実行する。</p>

<p>コマンドに従ってパワードスーツが勝手に動いて、麻痺した体はそれに動かされるだけ。このコマンド入力方式あたりは、改善の余地は多々ある感じ。</p>

<p>ビデオを見ていると、両手に杖をついて、動きも覚束ない。<br />
ある程度の長距離を移動するなら、電動車いすのほうが優れているだろう。</p>

<p>ただ、立つ姿勢で運動することによる、全身のリハビリ効果や、常に他人に見下ろされる車いす生活とは違い、同じ目線でアイコンタクトできることによる心理効果などが、これまでにない良い効果を与えるみたい。</p>

<p>電動車いすの一部が変形分離して、こういうエクゾスケルトンになるってのがいいかんじかも。</p>

<p>障害ってのは個性そのものなので、一つの装置が万人に使えるようなものにはなり得ない。だから高価になる宿命にある。</p>

<p>日本では<a href="http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/27/1145.html">ロボットウォッチの森山さんの記事</a>の下肢支援の項目で紹介されている、下肢麻痺者用の歩行補助ロボット「WPAL(Wearable Power Assist Locomotor)」(アスカ株式会社、藤田保険衛生大学医学部リハビリテーション医学講座)ってのが、下肢切断者向けで、ロボット部分を共通パーツにし、装着するソケット部は個人にあわせるようになっているようだ。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/08/post_146.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sun, 31 Aug 2008 18:33:30 +0900</pubDate>
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<item>
<title>ホンダの変身ベルト</title>
<description><![CDATA[<p><a href="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%88.jpg"><img alt="%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%88.jpg" src="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%88-thumb.jpg" width="539" height="361" /></a></p>

<p>少し前に、NHKのニュース９で、ホンダが開発中の歩行アシストメカの紹介があった。<br />
youtubeの、<a href="http://jp.youtube.com/watch?v=6nlV5Kq0cHw">これ</a>ね。<br />
上の写真は、ビデオよりも古いバージョンで、今のとは形がちょっと変わっている。</p>

<p>福祉機器の学会発表なんかで、結構前から開発しているのは知っていたけど、ホンダさんは自動車メーカーだけあって、ガードが堅くて、オレみたいなへっぽこ科学ライターにはなかなか取材を赦してくれないのね。だから、こういうニュース映像とかから推測するしかない。</p>

<p>すでに臨床試験もはじめているというのはなかなか期待できる。<br />
試用者が言っている、「変身ベルト」ってのは言い得て妙だなあ。</p>

<p>パワーアシスト装置は日本でもいろいろなところで研究されているけれど、いまいちホントかな？って信用できないものもあったりする。</p>

<p>パワーアシスト系の装置は介護の現場という枠で語られる事が多いけど、個人向けにチューニングが必要だろうし、パッと着て、使って、パッと脱ぐみたいな形になっていないと、あまり便利に使えるとは思えない。そういう意味で、現場手本と二使えるのかなって疑問もあったり。</p>

<p>でも、これはそんなへんてこなパワードスーツとちがって、実用に近そうなかんじがする。</p>

<p>開発には様々な基礎研究や、試行錯誤が必要だとは思うけど、いったん形が決まってしまえば、部品点数も少なそうだし、ハード的にそれほど手が込んだものが必要とも思えない。</p>

<p>つまり、製造コストはあまり高くはならないんじゃないかな。</p>

<p>バッテリー持続時間がどれくらいあるのかが問題だけど、一度機能が衰えた人のリハビリだけでなく、ちょっと足下が心配な健康な人も含めて、わりと需要はありそうな気がする。</p>

<p>３０万円くらいまでなら、必要なくてもオレなら買うよ。（ ・∀・ ）</p>

<p>モーターを動かすにはかなり電力が必要なので、これだけ小さなものだとあまりバッテリーが保たないような気はする。</p>

<p>まあ、３時間持てば、普通のご家庭でも使えるとは思うけど、１０分とかだと、リハビリ施設からの導入ということになるのかも。</p>

<p>ただ、重力で足が降りていくところを、回生でエネルギー回収とかできると、かなりの時間持たせられたりしないかな？<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/08/post_145.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sun, 31 Aug 2008 14:02:04 +0900</pubDate>
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<title>じんるいきゅうきょくのなぞをとくか。エロパワー</title>
<description><![CDATA[<p>ホットメールとかのフリーメールや、ｐａｙｐａｌの利用登録するとき、登録者がロボットか否かを見分けるために、ノイズだらけの背景にぐんにょりした文字が書いてあって、それをなんて読むかを入力するってのがある。</p>

<p>こういうノイズを背景にしたぐんにょりした文字は、既存のパターン認識技術では読み取りが困難なので、ロボットには読み取れない。ロボットにどんどんメールアドレスをとられると、それがスパムとかに悪用されるので、防止措置としてこういうことをしているわけね</p>

<p>これは、CAPTCHA(Completely Automated Public Turing Test to Tell Computers and Humans Apart　という手法。</p>

<p>人間とコンピュータを見わける、一種のチューリングテストだ。</p>

<p>ところがこれを、エロパワーを使って突破するわやりかたがあるらしい。</p>

<p>その法法は、まずエロサイトを作って、女性の画像の横に、この文字が読めたら一枚脱ぐわよってメッセージが出る。</p>

<p>で、その文字に、ロボットがそのとき見分けようとしている、ホットメールとかのCAPTCHA文字が表示される。</p>

<p>そして、このエロサイトを見ている人が答えると、その答えがロボットに送信されて、ロボットなのに登録できちゃうワケね。</p>

<p>つまり、ストリップ見たさにほいほい答えるひとのおかげで、ロボットはスパム用アドレスを手に入れられる。</p>

<p>こういう、既存のコンピュータ技術では解けない難問を、人に協力させて解く計算手法を "Human computation" という。</p>

<p>元祖としては、カーネギーメロン大学の <a href="http://www.espgame.org/">ESP game</a> というのがあって、これはある画像を表示して、それをみて人間は何をイメージするかというキーワードを収集する事を目的としたものなんだけど、一見、人対人のゲーム形式に仕立てることで参加を促すようになっている。</p>

<p>　この絵を見て何を思い浮かべますか、なんて質問に答えるのはよっぽど暇人だけど、ゲーム形式にすると、ちょっとやってみよかななんて感じになる心理をうまく利用して、コンピュータに奉仕させるけね。</p>

<p>映画の『マトリックス』も、この方向のイヤンな究極形ともいえる。</p>

<p>あと、<a href="http://www.asahi.com/science/update/0823/TKY200808230207.html">正解率９９％　ネット認証技術、書籍のデジタル化に威力<br />
</a><br />
によると、これを使って、書籍を電子化するときの、読み取り精度を高めているんだと。アイデア次第で色々可能性が広がるね。</p>

<p>SETI@home的なやりかたとか、携帯とかのミニサービスでこういうのを入れ込むことで、人間の知能をたくさん使わなければ解けない問題を色々解決できるようになるかもしれない。ひょっとしたら、人類究極の謎も解けちゃうかもよ。</p>

<p>あと、個々の人が解こうとしている課題と、その集合体が解こうとしている課題の間に、直接的に想像できる関係がないってのは、群知能の本質にもかかわっているのかも。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/08/post_144.html</link>
<guid>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/08/post_144.html</guid>
<category></category>
<pubDate>Sun, 31 Aug 2008 13:26:08 +0900</pubDate>
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<title>iPS細胞の夢とさらにその先の夢</title>
<description><![CDATA[<p>まあ、iPS の現実に関してはこれくらいにして、オレらしく少しＳＦ的な可能性について考えてみたい。</p>

<p>ｉＰＳ細胞は多能性を持った細胞だ。つまり体を構成するいかなる細胞も作ることができる。</p>

<p>それはどういうことかというと、一人の大人の皮膚細胞から、精子も卵子も作ることができるって事なんだよね。男性の皮膚細胞から、精子でも卵子でも作れるし、女性の皮膚細胞から精子でも卵子でも作れるわけ。</p>

<p>それって、性染色体は一体どうなっとるんじゃいと思うかもしれないけど、女性皮膚細胞由来の精子の性染色体はＸＸだし、男性の皮膚細胞由来の卵子の性染色体はＸＹだ。つまり、性染色体の違いだけでは、精子になるか卵子になるかは決まらない。</p>

<p>すると、原理的には自分の皮膚から取った細胞で、精子と卵子を作り、それを受精させて、借り腹で子供を作ることができる。自分の遺伝子だけで自分の子供が作れるわけね。</p>

<p>この場合、性染色体がＹＹの組み合わせになった受精卵は、正常発生できないか先天異常か死産になるだろうけど、それ以外は正常な子供として産まれてくる。</p>

<p>そしてこれは、クローンとは違うんだよね。</p>

<p>本人の細胞由来の精子や卵子は、減数分裂で２本一組だった染色体の片方しか持っていない。つまり、本人の父方の染色体か、母方の染色体がそこにあるわけだ。しかも、厳密に言えば、父方の染色体も、母方の染色体も、同じコードの場所がモザイク状に相同組み換えがおきているので、その人の母親のものとも父親の物とも違った染色体になっている。</p>

<p>それを受精させて子供にした場合、それは本人とは、遺伝的な構成がかなり違ってくる。すくなくとも、兄弟姉妹と同程度には、遺伝的に違う子供になる。遺伝病の発症確率は近親婚よりやや高まるけど、まあそれはいいか。</p>

<p>でも、そんなのちょっと気持ち悪いし、そこまでして自分に似た遺伝子を持った子供作るのは倫理的にダメなんでないのと思った人も多いと思う。</p>

<p>でも、これって、同性愛カップルが、自分たち二人の遺伝的な要素を受け継いだ子供を持ちたいと思ったとき、それを可能にする技術でもあるんだよね。そうなると、それはどうしたらいいかとか。</p>

<p>また、一人の大人の皮膚細胞から、精子も卵子も作ることができるとすれば、これは、精子や卵子が作れない人にも、自分の遺伝子を受け継いだ子供を持つ希望を与える、究極の不妊治療になるわけね。</p>

<p>もっとも、これは理論的な可能性で、技術としては、実現にいくつか壁がある。</p>

<p>iPS 細胞から生殖細胞ができることは、これまでキメラマウスで確かめられている。なんでキメラマウスを使うかというと、ES細胞やiPS 細胞にある万能性という言葉の意味は、全身のいかなる細胞にも分化できるけど、胎盤の細胞にはなれない性質ということだから。</p>

<p>（実はこのへん、訳語に混乱がある。受精卵だけが持つ胎盤にもなれる性質はtotipotentで全能性。体性幹細胞など特定の系列の細胞にしかなれない性質はmultipotentで多能性。で、iPS のＰであるpluripotentは万能性のはずなんだけど、山中さんは多能性と呼んでいる）</p>

<p>iPS 細胞は胎盤になれないので、それだけでは子供にならないけど、別系統のマウスの初期胚とまぜてやると、両者の細胞がモザイク状に混ざったキメラが産まれる。で、そのキメラマウスをたくさん調べると、中には精巣や卵巣の細胞が、iPS 細胞起源のものもいるわけね。</p>

<p>面白いのは、ジャームライン・トランスミッションといって、体細胞の全てがiPS 細胞起源のマウスも現れること。実はiPS 細胞はES細胞より、ジャームライン・トランスミッションが起こり易いみたい。</p>

<p>あと、テトラプロイドレスキューといって、染色体を人工的に４倍体にした胚は、胎盤にしかなれない性質があるので、これとiPS 細胞を混ぜてやると、確実にジャームライン・トランスミッションの子供を作ることができる。つまりこれはiPS 細胞由来のクローンってわけね。</p>

<p>ただ、これは実験動物だからできることで、ヒトの４媒体胚を作ったり、ヒトのキメラを作って、iPS 細胞由来の生殖細胞を作るのは、ちょっと憚られるよね。</p>

<p>まあ、いつか、試験管内でiPS 細胞を培養しながら、条件をコントロールして、精子や卵子にする技術もできるとは思うけど、今のところは、それはどうしたらできるのか、皆目見当が付いていないに等しい。だから、誰でも単為生殖ができる時代は、まだしばらくはお預けだ。</p>

<p>ただ、これが可能になると、もっととんでもないことがおきる。それはデザイナー・チャイルドの実現を阻んでいた外堀が、埋められちゃうってことだ。</p>

<p>デザイナーチャイルドとは、親が子供に、好みの遺伝子改変を施すものだ。<br />
これについての批判は、昔「<a href="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2005/05/post_11.html">育種と優生学（上）</a>」「<a href="http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2005/05/post_12.html">育種と優生学（下）</a>」で書いたので、良ければ読んでちょ。</p>

<p>でも、特定の遺伝子を好みのものに取り替えるには、膨大な試行錯誤が必要で、ヒトのES細胞では事実上不可能だった。</p>

<p>でも、iPS 細胞なら、遺伝子の取り替え（相同組み換え）の試行錯誤はいくらでもできるので、その壁は取り払われる。</p>

<p>ただ、どの遺伝子をどう取り替えたら、どんな性質になるかということの大半は、実験してみないとわからない。つまり、実験動物ならできるけど、ヒトでそれを試すのはこれまたちょっとやりにくい。</p>

<p>ある遺伝子を変えたとき、それでどんな変化が起きるかは、大人になるまで育ててみないとわからない。大人になってから、狙いと違いましたではすまないもんね。</p>

<p>でも、遺伝難病の遺伝子を削除するみたいなことから、それが始まっていく可能性は否定できないのよねん。</p>

<p>そして、それが進んでいくと、人類という種が消え失せてしまう事だってあり得るのねん。まあ、人類が人類でないものに変わったとしても、そのときはそのときだけど。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/07/ips_1.html</link>
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<pubDate>Tue, 29 Jul 2008 07:45:36 +0900</pubDate>
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<item>
<title>iPS細胞の夢と現実・その3</title>
<description><![CDATA[<p>ｉＰＳ細胞には大きな可能性がある。<br />
でも、メディアはその夢を過剰に語ってしまった。</p>

<p>実際、山中さんのところには、昨年１１月のｉＰＳ細胞作製成功の発表以来、患者や家族からの問い合わせが数百件寄せられているそうだ。</p>

<p>難病に苦しむ当事者にとっては、多少のリスクがあっても今すぐ再生医療を試したいという思いがあるのだろう。でも、ｉＰＳ細胞はまだまだ研究の途上で、安全性などの観点から、医療応用の見通しは立っていないというのが現実だ。</p>

<p>まず、なぜ、がん化がこれほど警戒されているのかというと、ｉＰＳ細胞は、成人の細胞に、３または４種の遺伝子を、レトロウイルスを使って組み込んで作っているからだ。これは、遺伝子治療と基本的に同じやり方なのね。</p>

<p>でも、遺伝子治療には苦い失敗の歴史がある。</p>

<p>２００２年に、フランスで行われていた遺伝子治療実験で白血病が発生し、研究は停滞を余儀なくされているのだ。</p>

<p>この治療は、Ｘ連鎖性複合免疫不全症（X-SCID）という難病（ドラマとかで時々出てくる、無菌室でしか生きられない子供がこれね）に対して、レトロウイルスベクターで、γc 遺伝子を造血幹細胞に導入するというもの。</p>

<p>当初はこれで、免疫系が正常化する良い結果が出ていたんだけど、しばらくすると１２人の治癒者中３人が白血病になってしまった。</p>

<p>その原因は、レトロウイルスが染色体上にランダムに組み込まれ（レトロウイルスでは、ＤＮＡ上の意図した場所に挿入することも、数をいくつ入れるかも制御できない）、がん化抑制遺伝子などを破壊したからと考えられている。</p>

<p>で、ｉＰＳ細胞もレトロウイルスベクターを使っているので、同じ危険性がある。これをどう回避するかなども、今後研究を進めないといけない。</p>

<p>あと、ヒトの細胞（繊維芽細胞）はレトロウイルスに超感染しにくいので、山中さんのところでは、ヒトの細胞にマウスのレトロウイルスレセプターが発現するような遺伝子改変を施して、マウスのレトロウイルスを感染させることで遺伝子を組み込んでいる。</p>

<p>これをそのまま分化させて人に使うと、マウスのレトロウイルスが感染する細胞を持った人になるので、考えようによってはかなり危ない。へたすると、その移植患者から、新たなエマージェント・ウィルスができかねないもんね。</p>

<p>つまり、今あるiPS 細胞は、すぐに再生医療に使えるような物ではなくて、実験用プロトタイプみたいなものなのね。</p>

<p>さらに、そもそも再生医療というものが、どれくらい使い物になるか、全く未知数という現実もある。メディアはかなり夢を語っているけど、本当は再生医療はまだかぎりなく理論的な可能性に近い。</p>

<p>マウスとかでは良い感じの結果が出ているのもあるけど、それがヒトでも可能という保証はない。たとえば脊椎損傷は、小さなマウスでは良い結果が出ていても、体の大きな人でもうまくいくかどうかは、やってみないとわからない。サルでも巧くいっているので、可能性は少なくないとはいえ、絶対に巧くいく保証はない。</p>

<p>あるいは、網膜細胞を作れたとして、それを目に移植するだけで見えるようになるかというと、それはまず不可能だろう。ニュースなどでは、ｉＰＳ細胞でこれこれができましたという話が散発的に出てくるけど、それがすぐに医療と関係するというわけではない。</p>

<p>そのほか、幹細胞の分化などの基礎科学についてもわからないことだらけで、、まだまだ膨大な知識を得る必要がある。</p>

<p>ネットとかを見ていると、難病にあえいでいる方たちが、あちこちで、すぐにも癒るかもという期待を書いている。でも現実は、再生医療が本当に使いものになるか否か、確かめるための糸口が見つかったという程度にすぎない。</p>

<p>本当に治療できる保証はないし、治療として確立するとしても、長い道のりと時間が必要なんだよね。この事実を伝えず、夢を語りすぎのメディアは罪深いと思うんだよな。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/07/ips3.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Tue, 29 Jul 2008 07:14:00 +0900</pubDate>
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<item>
<title>iPS細胞の夢と現実・その2</title>
<description><![CDATA[<p>歴史的にみて、ＥＳ細胞は、再生医療との関係で注目され、報道されてきたので、ｉＰＳ細胞もそのための細胞として盛んに紹介されている。</p>

<p>でも、現実的に考えると、それが可能だとしても実現への道のりはまだまだ険しい。じゃあ、ｉＰＳ細胞が医療に直接貢献するのはまだ先の話かというと、必ずしもそうじゃない。ｉＰＳ細胞には、他にも使い道がいろいろある。</p>

<p>実際、山中さんの発表に、現時点でいちばん反応しているのは、医薬品メーカーだそうだ。というのも、ｉＰＳ細胞を使えば、今まで不可能だった実験が可能になるからなんだよね。</p>

<p>たとえば難治性の遺伝病の治療薬を新しく作ろうとするとき、それを患者本人に投与して効果を見るということは、なかなか難しい。</p>

<p>どんな副作用が出るかわからないし、そもそもその病気がすごくマイナーだったりすると、臨床試験をする人数を集めることも難しかったりする。</p>

<p>でも、その病気にかかっている人本人の、薬のターゲットになる細胞を、ｉＰＳ細胞で作ることができれば、その細胞を培養し、薬品を与える実験を行って、実際の効果を調べることができる。</p>

<p>つまり、どんな薬が有効かある程度見当がつくし、副作用に関する予測もできるわけね。そしてこういう使い方なら、細胞を人間に移植するワケじゃないから、ガン化を心配する必要もないし、いますぐ実用的に使い始められるわけ。</p>

<p>また、このやりかたなら、特別な遺伝病でなくても、患者本人の細胞で、その人の体質にあった薬を選択する、オーダーメード医療のようなことも可能になるはずだ。たとえば、ある人にとって、副作用が少なくて効果の高い制がん剤をえらぶとか。</p>

<p>また、山中グループでも、この４月から、筋ジストロフィーや先天性貧血、１型糖尿病など10種類の病気について、ｉＰＳ細胞を使ってそれらの原因細胞を作り、病気の発症前から発症の過程を観察して、治療につなげる研究を開始する。</p>

<p>これは、医学目的ではあるけど、生物学の基礎ともかぶる部分が多いはずで、ピュアサイエンスとしても面白い成果が出てくるかも知れない。</p>

<p>つまり、ｉＰＳ細胞を使えば、これまで不可能だった、あるいはこれまで考えることもできなかった、新しい医療研究や生物学の研究を様々に行うことができるんだよね。</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/07/ips2.html</link>
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<pubDate>Tue, 29 Jul 2008 07:01:23 +0900</pubDate>
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<item>
<title>iPS細胞の夢と現実・その１</title>
<description><![CDATA[<p>皆さんご存じの通り、昨年の暮れから、京都大学教授の山中伸弥さんたちが作ったｉＰＳ細胞が、大きな期待を集めている。</p>

<p>ｉＰＳ 細胞のアイデアは、世界に類のない独創的なものだ。そのうえ、非常に応用範囲が広い技術なので、これから医学だけでなく、生命科学などの広い分野の研究者たちが、ｉＰＳ細胞をなくてはならない研究材料として活用して、多くの価値ある研究がされるだろう。</p>

<p>一般にはあまり意識されていないんじゃないかと思うけど、ノーベル賞っていうのは、全く新しい研究分野を切り開くような概念や、装置の開発に対して与えられることがほとんどだ。つまり、研究者たちの、新しいメシの種になるような発見と開発が、ノーベル賞の対象になることが多いのね。</p>

<p>山中グループのｉＰＳ細胞樹立は、まさにそういった成果なので、いつか確実にノーベル賞を授賞するとは思う。</p>

<p>で、このｉＰＳ細胞とは何かというと、大人の皮膚の細胞に４種類、または３種類の遺伝子を入れることで、あらゆる細胞に分化する能力＝多能性を持たせた細胞のことだ。</p>

<p>多能性のある細胞は、再生医療を可能にする細胞として、以前から注目されてきた。つまり、この種の細胞に何らかの処理を施して、ある特別な細胞に分化させることができれば、それで病気の治療ができるんじゃないかというコンセプトね。</p>

<p>たとえば、糖尿病の人には、インシュリンを分泌する細胞を作って、それを移植してやればなおすことができるはず、というわけ。</p>

<p>で、多能性がある細胞としては、ＥＳ細胞（胚性幹細胞）というのが、以前から作られていた。でも、これは出産可能な受精卵を壊さないと作れないので、強い倫理的な批判にさらされていた。</p>

<p>でも、ｉＰＳ細胞は成人の色々な組織細胞から作れるので、そういう倫理問題は存在しない。</p>

<p>また、ＥＳ細胞で目的の細胞を作った場合、それは移植を受ける人の細胞とは遺伝的に別物なので、病気は治るにしても、必ず拒絶反応が起きて、生涯免疫抑制剤を飲み続けなければいけない。</p>

<p>でも、ｉＰＳ細胞なら、本人の細胞から治療目的の細胞を作ることができるので、拒絶反応は、たぶん起きない。（たぶんというのは、これについてきちんと実証されていないから。同じ遺伝子から作られた細胞でも、後から体内に入れたものだと拒絶反応が起きないとは言えない）</p>

<p>この２点は、ＥＳ細胞に比べると画期的なことで、これで、再生医療が劇的に進むという話がメディアではメチャクチャたくさんされている。</p>

<p>ただ、これは可能性としては確かに期待できるんだけど、世間で思われているほど巧くいく保証はないし、実際にそういう医療が現実になるまでの時間も、数年とかでは絶対にムリで、多くの人の想像を超えて長くかかることになるだろう。</p>

<p>そもそも再生医療についても、期待が大き過ぎる感じがする。<br />
場合によっては、脳以外の体中の臓器を新しくして、将来は、永遠に近い命も可能になると言うことを言う人もいるけど、そこと現実のギャップはものすごく大きい。</p>

<p>たとえば、今のテクノロジーでは、臓器をまるごと１個、人工的に作ることさえほぼ不可能だ。つまり人工的に心臓とか肝臓を作って移植するのは、まだ限りなくＳＦに近い世界ってワケね。</p>

<p>これまでのところ、太い血管や角膜はまあできているし、膀胱も曲がりなりに作れる感じではあるけど、大半の臓器は、基本的にどうやって作っていいか見当もつかない感じだ。</p>

<p>たとえば心臓は、無数の心筋細胞がマトリックス（細胞と細胞の間をつなぐ物質、コラーゲンなど）でつながっていて、マトリックスの中にはその細胞に栄養を供給する血管や信号を伝達する神経が埋まっている。つまり色々な種類の細胞が複雑な構造を作っていて、そんなのはとても作れない。</p>

<p>ただ、一種類の細胞を無限に増殖させることや、その細胞をシートの形に培養することはできる。そして、病気を治す医療という観点からは、ダメになった臓器を総取っ替えしなくても、そこに機能する細胞を埋め込んだり、損傷を受けたところに細胞シートを貼ったりするだけで、かなり有効ってケースがある。</p>

<p>たとえば、難病の神経変性疾患や脊髄損傷、腎不全、糖尿病、肝硬変、心筋症などなど、この方法でかなり楽にできたり、根治できる可能性すらある。（原理的な可能性と動物実験での結果しかないので、これも期待のしすぎは禁物だけど）</p>

<p>こういう治療に用いる細胞として、以前はＥＳ細胞か、組織性の幹細胞を使うしか無くて、ハードルがものすごく高かった。でも、本人のｉＰＳ細胞を使えば、原理的に、この種の治療への道が大きく開かれることは間違いない。</p>

<p>ただ、現時点ではまだ、そこへ素直に到達できるワケでもない。</p>

<p>山中さんのｉＰＳ細胞は、この種の治療という観点からは弱点がある。</p>

<p>それは、一つには、４因子方の場合、導入する遺伝子のうちc-myc が、ガンの遺伝子だってことだ。そのため、このｉＰＳ 細胞を混ぜて作ったキメラマウスの約２割に、甲状腺腫瘍ができている。</p>

<p>これに関しては、マウスでもヒトでも、ガン遺伝子を除いた３因子でもｉＰＳ 細胞が作れることがわかって、甲状腺腫瘍もできないことが明らかになっている。</p>

<p>ただ、４因子方でさえ５千個の皮膚細胞に対して１個の割合でしかｉＰＳ 細胞が作れないのに、３因子方だとさらにその百分の１から千分の１くらいの歩留まりでしかない。いちおう、３因子法に微小ＲＮＡを加えることで、制作効率を４倍改選する方法が見つかっているけど、歩留まりの改善はまだまだ必要だ。</p>

<p>それに、歩留まりが上がっても、遺伝子の導入にレトロウイルスを使っているので、それによるガン化の危険性も否定できない。</p>

<p>レトロウイルスは、細胞の遺伝子にランダムに挿入されるので、がん化を抑える遺伝子などの中に挿入されてそれを破壊してしまうこともあるからだ。ただ、これも、胃粘膜や肝臓細胞をベースにｉＰＳ細胞を作ると、レトロウイルスが挿入される部位が限られるのでチェックがしやすいなど、工夫はいろいろ考えられているので、絶対に乗り越えられないわけではないだろう。</p>

<p>そんなこんなで、人間への移植医療に使うには、安全性の確認という観点から、乗り越えなきゃ行けないハードルはいくつもある。</p>

<p>そしてこれをクリアするには、激烈な競争で猛烈に研究が進んでいるといっても、臨床試験に入れるようなシステムになるだけでも、少なくとも１０年以上の時間が必要になるだろう。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/07/ips.html</link>
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<pubDate>Tue, 29 Jul 2008 05:19:52 +0900</pubDate>
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<title>遺伝子削除作物</title>
<description><![CDATA[<p>既存の遺伝子組換え作物が人体に少しでも害を及ぼすとは、オレは全く思わないんだけど、世間的には「ケガれた」存在と認識されてしまっていて、これはもうどんなに理を解いても、なんとなくイヤだなって思っている人の気持ちを変えるのはまあ不可能なんだろうね。</p>

<p>食べたら虫が死ぬようなものを、人が食べても大丈夫なの？みたいな不安は、まあ、ほとんど、そういうものが産まれてきたいきさつを知らない無知によるものなんだけど、そう思う人が出てしまうのも、致し方なしとは思う。</p>

<p>オレは値段が安けりゃ５万トンでも食うけどね。（ ・∀・ ）</p>

<p>で、結構前のことなんだけど、遺伝子削除作物というのを考えた。</p>

<p>遺伝子組換え作物は、なにか別の遺伝子を加えているから、みんなに怪しまれる。虫にしか有毒でない物質を作る遺伝子を、カビから取ってきて入れるとか。</p>

<p>でも、逆に作物から遺伝子を削除するだけならどうだろうか。</p>

<p>一般的な品種改良や、遺伝子組換えは、様々な環境に対する耐性をつけたり、如何に収量を上げるか、栽培をしやすくなるかを目的に行われる。</p>

<p>生物の持つ遺伝子の大半は、実は耐環境性のためにある。</p>

<p>温度が変動したり、ｐHが変動したり、バクテリアやウイルスに耐えるためとか、台風の風で倒れないように背丈を小さくしたりといったこと。品種改良はそういうところにフォーカスして行われる。</p>

<p>でも、人工環境で栽培することを前提にすると、そういう遺伝子は必要無くなるのね。</p>

<p>だから、完全に温度もｐHも光の量もコントロールされ、かつ無菌の環境での栽培を前提にして、耐環境遺伝子をどんどん削ってしまう。</p>

<p>すると、その作物は、人工栽培環境下でしか生きられないけど、耐環境遺伝子がない分、そういうことの無駄にエネルギーを使わないので、効率よく育つようになるかもしれない。</p>

<p>これだと、別の生物から「農薬成分」みたいな新しいものは何も持ってきていないので、それで怪しいといわれる筋合いはないと思う。</p>

<p>まあ、あまり色々削りすぎると、作物の味覚や香りなどは、病害虫を寄せ付けないための防衛物質によるものもあるだろうから、味も素っ気もなくなってしまう可能性もある。まあ、そこは適当にバランスさせるわけね。</p>

<p>原理的には、水耕栽培などの人工環境で、すべての作物は栽培可能らしい。</p>

<p>もっとも、この種の人工栽培は、これまでコストの面で露地栽培に全くかなわないので、サラダ菜とか、ごく限られたものしかないし、技術的にあまり深く検討されてきていない。</p>

<p>向き不向きもあって、たとえばイモ類は、土の圧力がないとイモにならない。だから、培養液につけただけだと、葉っぱはぼうぼう茂るけど、イモが全くできなかったりするみたい。でも、これも、培地を工夫したり、圧力をかけて栽培することで、イモを生らすことができるという。</p>

<p>このところの世界的な燃料コストの上昇で、農作物を作るための燃料費が上がったことで、食べ物の値段が上昇し、食料自給率、食糧安保ということが問題視されてきている。</p>

<p>ということは、ある程度高コストでも、人工栽培の作物の意味が相対的に出てきているのではないかな。</p>

<p>たとえば、地下に水耕栽培設備を作れば、温度コントロールなどにかかるエネルギーは少なくてすむ。</p>

<p>地下でなくても、製鉄所とか火力発電所のすぐそばにこういう農作物工場を作るのもいいかもしれない。工場から排出される炭酸ガスをここに入れて、炭酸ガスリッチな環境で栽培すれば栽培効率も上がるし、工業設備の廃熱を利用して、環境の温度のコントロールをすることもできる。</p>

<p>光は、作物が効率よく取り入れられるLED光を使い、２４時間栽培するか、昼間電力が高いなら、夜間電力をメインに使ってもいいだろう。</p>

<p>すでに今の農作物は、年中食べられるトマトとかイチゴとかに象徴されるように、ハウス栽培で、かなりのエネルギーを投入することで作られているものが少なくない。</p>

<p>だから、作物工場のような人工環境を前提に、遺伝子削除作物を作れば、露地栽培の作物との価格差はかなり縮められるのではないだろうか。</p>

<p>しかも、農薬とかを一切使わないのに病気もないものが作れる。</p>

<p>また、気候変動による不作の影響もほとんど受けず、食糧自給率に対する不安もかなり解消できるんじゃないかな。</p>

<p>ただ、一つボトルネックがあるとすると、農作物は、薄利で膨大な量を売ることではじめて利益が出るものだってことだろう。</p>

<p>遺伝子削除作物と作物工場のセットを開発するには、膨大な金額の初期投資が必要になる。従来の農業の発想では、そんなお金はどこからも出しようがない。</p>

<p>世界の誰もまだ心みていないものに、どかんと金を出す必要がある。こういう事って、日本は苦手なのよねん。</p>

<p>ヒトゲノムプロジェクトがはじまる前、生命科学にこんな膨大な予算をつけるなんて意味ないしバカげているって声がだいぶあった。でも、今では、得られた成果は生命科学の分野を革命的に変えて、ものすごい発見や、新しい技術開発に無くてはならないものになっている。</p>

<p>世界に先駆けていろいろやっとくと、知的財産としても良い感じになるんでないかなあ。</p>

<p>現状、なかなか難しそうだとは思うけど、もしそういうことができれば、将来的には電力会社や製鉄会社が、農作物を売るようになるかもね。</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/06/post_143.html</link>
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<pubDate>Mon, 30 Jun 2008 10:38:51 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>イカ釣り漁がたいへんらしい</title>
<description><![CDATA[<p>するめうまいんだな。<br />
あたりめとか、食べ始めるといくらでも食べたくなる。<br />
いまきづいたが、あたりめってのは、縁起を担いだ言葉なのか。<br />
それはともかく、</p>

<p>燃料費の高騰で、イカ釣り漁が採算割れしているという話はしばらく前から聞いていたけど、昨日テレビで、集魚灯の電力が燃料費の７０％を消費しているってはなしを聴いた。</p>

<p>イカ釣り漁の集魚灯の明るさは、宇宙からも異常と言っても良い範囲で光っているのが見えたりする。</p>

<p><a href="http://www.esl.co.jp/Houkoku/6.htm">夜間可視衛星画像によるサンマ・スルメイカ漁船分布の解析</a></p>

<p>あれはどう見ても、超無駄なんでないのって思った。</p>

<p>イカ釣り漁船のランプは完全にむき出しだ。あれでは少なくとも半分の光は無駄になる。上に逃げる光を下へ反射させるミラーの傘をつけてやれば、理想的には半分の燃料で同じ効果が出せる。</p>

<p>そうなれば、宇宙から光を見られて恥ずかしい思いもせずにすむ。</p>

<p>まあ、これは集魚灯に限らず、地上の街頭も、こういうやり方でできるだけ省エネにして欲しいと思うんだけどね。デザイン重視で、上に向かっても光を放つものがけっこうあるかんじだけど、そういうデザインに規制をかけてもいいのかもなあと思う。</p>

<p>イカ釣りの集魚灯に関しては、ミラーの傘をつけるだけで、理想的には燃料費の３５パーセント近くが減らせる。それができれば、相当楽になるんでないか。</p>

<p>……とか思ったら、すでにそういう主張をしている、<a href="http://mirai00.hp.infoseek.co.jp/ika1.html">漁り火を考える</a>というWebページを見つけた。</p>

<p>このページによると、集魚灯をLEDに変えるなど新しいシステムを開発して、集魚灯の消費電力を３分の１にすれば、年間４００万円の経費節減ができるとのこと。</p>

<p>まあ、新しいシステムを開発したり、それを購入するにはかなりお金がかかるので、今すぐそういうことをするのは不可能だろうけど、今のこの燃料費高騰の時期を乗り越えれば、省エネ集魚灯の導入を考える人も出てくるんじゃないかな。</p>

<p>それにしても、イカ釣りに必要な光の量について、これまで学問的にどのていど検討されているのだろうか。</p>

<p>おそらく、イカには昼は上の方に上がり、夜は深海に潜る習性があって、イカ釣り漁は、イカに上が昼と誤認させるために集魚灯を使っている。</p>

<p>また、非常に単純な仕掛けのロボットで釣り上げていて、これは大量の群れが上に上がってくることを前提にしているのだろう。</p>

<p>そういうわけで、船団を組んで、海を面的に光らせて、かつ深海までその光が届く必要はたぶんある。</p>

<p>でも、これまでのイカ釣りの集魚灯は、経験的に明るきゃ明るいほど釣れるんじゃないかみたいな感じで決まってきたものだろうし、そのため何処まで暗くしても大丈夫かとか、どういう当て方が良いかは、あまり掘り下げられていないんじゃないかと思うんだよね。そんな研究につきあってたら、稼げないもんね。</p>

<p>まあ、研究があったとしても、これまではあまり漁民が取り入れる気にはならなかったんだろうけど。<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/06/post_142.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Mon, 30 Jun 2008 10:06:16 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>スキンタイト宇宙服</title>
<description><![CDATA[<p>宇宙服と言えば、<a href="http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200806131823">NASAも新世代の宇宙服のイメージ</a>を発表している。</p>

<p>正直、萌えが足りないね。</p>

<p>これからの宇宙服と言えば、これまで何度かコメントを寄せていただいた、SF作家の野尻抱介さんの作品に登場する、スキンタイト宇宙服みたいのが絶対欲しいところ。</p>

<p>つまり、肌にぴっちりフィットして、自由に動き回れるって感じの宇宙服ね。</p>

<p>ガンダムに出てくるノーマルスーツも、まあ、あれはボディラインが際だつほどではないけど薄手な服で、NASAのやつみたいにボコボコしていなくて、かなり気楽な感じ。</p>

<p>ああいうものは、現実には作れないのだろうか。</p>

<p>実はそういうものを研究している人もいて、たとえば、<a href="http://mvl.mit.edu/EVA/biosuit/index.html">ＭＩＴのダバ・ニューマン教授は、バイオスーツ</a>という名前で、スキンタイト宇宙服の研究を行っている。</p>

<p>全身を覆うスーツに、伸縮性がある生地を使えば、体にぴたっとフィットして動きやすい。ただそれは、ふつうは空気のある地球上でしか成り立たない。</p>

<p>伸縮性があるということは膨らむと言うことで、内部に空気があると、どうしても風船になってしまう。繊維が伸びられるだけ膨らんで、パンパンのボールみたいなのになっちゃうわけね。</p>

<p>ただ、人間が体を動かすとき、皮膚は均等に伸び縮みしているわけではなく、大きく伸びるところと、少ししか伸びない場所がある。</p>

<p>そこで、そのほとんど伸縮しないラインを探し出して、その線に沿って強度の強い伸縮しないケブラーなどの糸を入れ、その糸の力で服が膨らまないようにするってのが、バイオスーツの仕組みだ。</p>

<p>イメージとしては、きめの細かいビーチマットみたいな感じで、伸び縮みしないライン以外のところは、カマボコ状に膨らんだキルトっぽい感じになると思うけど、これだと体にフィットして、かつ服の内圧を１気圧にしても、わりと自由に動ける宇宙服になるはずだ。</p>

<p>ただ、この伸縮しないラインを探すのは、それほど簡単な事じゃないみたいで、アイデアは面白いと思うけど、理想的なものはなかなか難しいみたい。まあ、昔からある宇宙服の一部に、この発想を取り入れるという感じが、現実的な回答なのかも。</p>

<p>そこでちょっと、ぼくのオリジナルの思いつきを披露しよう。<br />
それは、服と体の間に、液体を満たす方法だ。</p>

<p>いにしえのＳＦテレビドラマに、『謎の円盤ＵＦＯ』ってのがあった。<br />
そこに出てくるインベーダー（といっても、さらわれた人間が洗脳されて使われている）が着ている宇宙服には、緑色の液体で満たされていて、液体を呼吸する作りになっていた。</p>

<p>これに近い感じで、首から下のスキンタイト的な服の中に液体を満たしてやる。</p>

<p>すると、液体は体積を変えずに変形できるので、服自体は膨らむことなく、全ての関節を自由に曲げ伸ばしできるわけ。</p>

<p>超深海に潜るわけじゃないから、液体呼吸にする必要はないので、首から上のヘルメットの中は１気圧の空気を呼吸すればいい。</p>

<p>問題は、真空だと、たいていの液体は沸騰しちゃうんだよね。宇宙服内で液体が沸騰すれば、やっぱりパンパンに膨らんで使い物にならない。</p>

<p>ところが、世の中面白いもので、真空中でもほとんど全くと言って良いくらい蒸発しない液体がある。</p>

<p>最近研究が進みつつある、イオン液体という物質がまさにそういうもので、これを使うと真空中の映像しか見られないはずの電子顕微鏡で、濡れた生物切片とかを観察できる。</p>

<p>塩化ナトリウムは常温で固体だけど、高温にすると結晶がとけて、ナトリウムと塩素がばらばらに混じり合った液体になる。この液体は、熱くても蒸発しない。</p>

<p>で、それと同じように、イオン液体は常温で液体なのに蒸発しない。昔は、蒸気圧がゼロとさえ思われていたらしい。</p>

<p>イオン液体というカテゴリーには、いろいろな物質があって、種類によって生物親和性が良かったり、電気伝導に優れていたりするので、皮膚の保護や放射線の防御、冷却機能などを持たせたイオン液体を作ることもできるかも知れない。</p>

<p>これだと服を着てから、液体を注入するという手間はかかるけど、体にフィットして動きやすいものになるんじゃないかなあ。</p>

<p>将来の宇宙服は、バイオスーツやイオン液体スーツを肌着的に着用して、必要に応じて、その上からパワード・スーツを着るみたいなのが、標準的な運用になるのかもしれない。</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/06/post_141.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sun, 29 Jun 2008 09:35:12 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>宇宙服とパワードスーツ</title>
<description><![CDATA[<p>　カシオからデジタルカメラの<a href="http://dc.casio.jp/product/exilim/ex_f1/">EXILIM PRO EX-F1 </a>ってのが出ていて、これが微速度撮影（高速で動くものをスローモーションで捉える）や秒間６０コマの高速撮影、あと、ゆっくり動くものでも擬似的に流し撮り（中央の被写体はくっきりだけど、まわりの景色がぶれてスピード感がある写真）が撮れたりして、なかなか面白そう。ほしい。</p>

<p>　それはともかく、<a href="http://portal.nifty.com/2008/06/27/a/">スローで撮ると宇宙空間になる</a>らしいよ。（ ・∀・ ）</p>

<p>　このデイリーポータルZの記事は、なかなか着想が素晴らしいと思うけど、でもどうしてスローな動きが、宇宙をイメージさせるんだろう。</p>

<p>　その理由の一つは、無重力の場所で、ふわっと漂っていると、それだけで何となくゆっくり動いているように見えるのと、漂っていながら何の支えもないところで手足を素早く動かすと、角運動量の保存則とかの各種保存則がもろに効いて、体があらぬ方向に回転してしまうからじゃないかと思う。</p>

<p>　あと、これまでの船外活動用の宇宙服は自由に手足を動かせるわけではなくて、色々と関節の動きに制限があるので、それが地球上の動き方に比べると、ずいぶん違った感じに見えるって事もあるんじゃないかな。</p>

<p>　一口に宇宙服といっても、用途にあわせていくつか種類がある。。</p>

<p>　たとえばスペース・シャトルの打ち上げの時など、飛行士はオレンジ色の宇宙服を着ているはずだ。</p>

<p>　今年の２月、スペースシャトルで土井隆雄さんが宇宙に行くというニュースが流れていたんだけど、そのほぼ同じ時期に、ロス疑惑の三浦和義さんがサイパンで殺人容疑で逮捕された。で、このとき三浦さんはオレンジ色の服を着ていたので、友人の一人が、はあ～みうらさん宇宙へ行くんだ～ってボケてたよ。</p>

<p>　このオレンジ色の服は、そのまんま、アメリカの「オレンジスーツ」という名前の宇宙服で、打ち上げと帰還の時に着るものだ。同等のものとして、ロシアでは「ソコール」という名前の宇宙服がある。</p>

<p>　このタイプは、軽量で動きやすく、海に落ちても大丈夫といった、事故が起きたときの安全性を配慮して作られているんだけど、真空の宇宙での作業に使えるような機能は持っていない。</p>

<p>　一方、宇宙での船外活動用の宇宙服としては、アメリカは「船外活動ユニット」（ＥＭＵ：Extravehicular Mobility Unit）があり、ロシアには「オーラン」がある。</p>

<p>　オーランはヘルメットの上に天窓があって、全体が一体化した、イメージとしては着ぐるみみたいな感じの宇宙服だ。</p>

<p>　背中のハッチをパコッと開けて潜り込み、服の前から出ている紐を引いてハッチを閉めるだけなので、一人で１５分で着ることができる。また、内部の与圧は０．４気圧で、真空中へ出る準備はＥＭＵより早くすむ。</p>

<p>　ただ、重さは１３０キロで動きの自由度は少なく（股関節とかはあまり曲がらないとか）、ふくらみも大きくて、動きやすくはないみたい。</p>

<p>　一方ＥＭＵは、生命維持装置、宇宙服、補助装置の３ユニットで構成されていて、全体で１２０キロくらいある。</p>

<p>　このうち生命維持装置は、空気供給や二酸化炭素の吸収、気圧や温度のコントロールを行い、電力供給や通信機能も受け持つ装備で、背中に背負う形で取り付けられる。</p>

<p>　また、補助装置は、飲料水用のパックや、ライトやビデオカメラ、飛行士を宇宙船に繋ぎ止めるひも（テザー）などのオプションパーツ類のことをいう。さらに、これに加えて、宇宙遊泳をするときには、ガスを噴射して移動するための有人機動ユニット（ＭＭＵ：Manned Maneuvering Unit）が用いられる。</p>

<p>メインの宇宙服は、上半身、下半身、手袋、ヘルメット、冷却下着などのパーツでできた気密服だ。しかもこれは、３層の冷却下着、２層の気密層、９層の宇宙環境保護層の合計１４層の重ね着方式。</p>

<p>十二単もびっくりな代物で、一人で着るのはまあちょっとムリ。気密を保つために、動きの制約も多くて、たとえば腕は、ひじから下は動くけど、肩はほとんど動かないし、足も前後には動いても、左右に開くことはできない。また、内圧は０．２７気圧で、オーランより若干低い。</p>

<p>宇宙服の内圧が、１気圧より低く設定されているのは、そうじゃないと真空中で身動きが取れなくなるからだ。</p>

<p>真空中に出た宇宙服は、風船みたいにパンパンに膨らんで、関節の曲げ伸ばしに大きな力が必要になる。１気圧では、下手をすると大の字に伸びきったまま、手を握ることさえできない。できたとしても、ものすごく力が必要で、あっという間に汗だくになり、ヘルメット内部も曇ってしまうだろう。</p>

<p>そこで宇宙服は、内圧を下げて、力をあまり入れなくても動けるようにしているわけだ。</p>

<p>ただし３分の１気圧の空気では、酸素が薄すぎるので、宇宙服では呼吸用に純酸素が用いられている。</p>

<p>一方、シャトルや国際宇宙ステーション（ＩＳＳ）のキャビン内は、通常は１気圧(酸素21％、窒素79％)が保たれている。</p>

<p>この環境にいた人が、いきなり３分の１気圧の中に出ていくと、減圧症になる可能性がある。つまり、１気圧で血液や体液に溶け込んでいる空気中の窒素ガスが、減圧によって気泡になって出てきてしまう。血がサイダーみたいに、シュワシュワしちゃうわけね。</p>

<p>こうなると、よくて関節などの激しい痛み、下手をすると血栓ができたのと同じで、脳卒中や心臓発作を起こしかねない。</p>

<p>そこで船外活動をはじめる１２時間以上前から、プレブリージングという、体内から窒素を抜く操作が行われる。具体的には、まず１気圧下で60分間純酸素を呼吸し、その終了直前にキャビン内の気圧を0.7気圧(酸素 27％、窒素73％)に下げて12時間以上保ち、最後に宇宙服を着て40分～75分の純酸素を吸って、ようやく外に出られるわけだ。</p>

<p>つまり今の宇宙服では、思い立ったら即宇宙ってことはできないわけね。</p>

<p>もっとも、この手順は繊細なアメリカの基準で、ロシアではプレブリージングなんかあまりしなくても、案外大丈夫だよ～みたいなレポートもあったりするらしい。</p>

<p>ＥＭＵの宇宙服が１４層もあるのは、内側は水を循環させる冷却下着で、それを気密層で覆い、全体が膨らみすぎないように押さえる層や、層間の摩擦を小さくする層、断熱のためのゴムやアルミ蒸着層、小隕石対策のケブラーで補強されたゴアテックス層など、色々な機能を持たせるためだ。これに加えて、心電計などのバイタルモニターや、飲料水の供給器、紙おむつまで備わっている。</p>

<p>気密性と安全性を考慮して、かなりがんばって作られてはいるものの、将来、月面での有人活動が再開され、月面基地などの建設を人間が行うようになる状況を想定すると、今のままのＥＭＵでは、やっぱり不便だとおもう。</p>

<p>なにしろ、重さが１２０キロあるわけだから、重力が６分の１の月面でも、最低２０キロ相当の重りをつけて動くことになる。また、日なただと地面からの照り返しもあるので、断熱と冷却は、船外活動用よりもしっかりやる必要があるし、手足の可動範囲もより自然に近づけないと、作業効率に影響するだろう。</p>

<p>これらの難しい問題を解決する一つの答えが、固い殻で体を包み、関節を曲げても内部体積が変化しない外骨格型のスーツだ。</p>

<p>これなら内部を１気圧に保っても、風船のように膨らんで、身動きがとれなくなることはない。つまり、プレブリージングなどしなくても、必要なときすぐに真空中に出て作業を行えるわけだ。また、耐熱耐寒耐放射線などの機能も、この方式のほうが与えやすいだろう。これは見方を変えると、パーソナル宇宙船みたいなものともいえる。また、重量はあまり軽量化できないだろうから、どうしてもパワー・アシストが必要になるわけで、そうなればまさにパワード・スーツそのものだ。</p>

<p>昔、ガンダム関係の記事を書いたときに、こういうものから発展してモビルスーツが生まれたというようなストーリーにしたんだけど、今では、こういう宇宙服の開発も現実味を帯びてきているんじゃないかな。</p>

<p>かつて、H2ロケットの開発を主導した五代富文さんも、<a href="http://www.soranokai.jp/pages/make_newspacesuit.html">新世紀の宇宙服を創ろう</a>と言っていたりする。</p>

<p>日本は、現実問題として、宇宙開発にあまりお金は使えない。だけど、こういうタイプの宇宙服を考えるという課題は、お金をそれほど極端にたくさん必要としないだろうし、日本の得意分野を色々総合できる。それに、宇宙服はある意味、小型の有人宇宙船みたいなものだから、その意味でも面白い。</p>

<p>問題はあまり重く複雑になりすぎると、それを宇宙に持って行くのが大変で、現実に使いにくくなるかも知れないということ。技術的には、けっこう難しいと思うけど、それだけにチャレンジングな課題なんじゃないかな。</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/06/post_140.html</link>
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<pubDate>Sun, 29 Jun 2008 08:46:33 +0900</pubDate>
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<item>
<title>神経学的マイノリティについて</title>
<description><![CDATA[<p>前のエントリーに出て来た、自閉圏とか神経学的マイノリティについて、ちょっと書いておこう。</p>

<p>自閉圏の人とは、広汎性発達障害（PDD）とか、アスペルガーとか、高機能自閉とかいう名前で分類される人たちのことをいう。</p>

<p>ADHD（注意欠陥・多動障害）やLD（学習障害）の人も含めて、軽度発達障害と呼ばれることもあるし、オレ的には神経学的マイノリティと言う事が多いかな。</p>

<p>それは、こういう人たちが、治療対象にすべき「病気」ではないからで、だから一般的な用語である自閉症という言葉もほとんど使わないようにしているし、障害という言葉もなんかきつい感じがするのよねん。</p>

<p>これらの言葉は厳密に定義できるものではないし、ほとんど気まぐれと言っても良い診断基準の変更によって、内容が変化したりもする。</p>

<p>診断名とは、現実的には、社会生活をする上で不都合が多い人が、なんらかの援助をうけうるときに必要なものにすぎないという側面が大きい。</p>

<p>また、これは軽度発達障害全体に言えることだけど、一つの診断名でまとめられる人たちが、同じ原因で、同じ神経学回路の不具合を抱えているわけでもない。</p>

<p>現代の精神医学の診断基準は、見かけ上、これとこれとこの症状が揃っているから、この疾患というやり方で、内部メカニズムについては全くと言って良いほど考慮していない。</p>

<p>なぜなら、それはわからないから。だから、同じ診断名を持つ人でも、原因が全く違うことは大いにあり得るし、それを示唆する研究も多数ある。</p>

<p>自閉症スペクトラムという言葉があって、これは自閉症の人は非常に個性が強くて、一言で言い表せるような物ではなく、スペクトルのように広がっているというような意味だ。これはまあその通りだけど、これだけでは不十分だと思う。</p>

<p>なぜなら、そのスペクトルは、自閉症という特別な人たちの中にだけあるのではなくて、神経学的多数派の人たちまでずっと連続しているからだ。また、これは軽度発達障害という人たち全体についても同じだ。</p>

<p>診断されていなくても、自閉圏の特徴を備えた人は社会の中にたくさんいる。<br />
学者には多いし、クリエイティブな人、おたく系の人にも多い。</p>

<p>それらの人は、人付き合いについてなんらかの不都合を感じながら、まあしかし、人生ってこんなものかと思いつつ、どうにかこうにか日常を過ごしている。</p>

<p>神経学的マイノリティの特徴は、色盲の人とか左利きの人にたとえることができる。</p>

<p>色盲というのも実は色々なタイプがあるのだけど、ある人は緑と赤の区別がつきにくい。ところが、ベージュ色系の微妙な違いは、一般人より遙かに詳細に区別が付けられる。色の区別が全くつかないタイプの人は、カモフラージュされた戦車などを容易に見つけられるので、第二次大戦中はそのような任務に就いた人もいたらしい。</p>

<p>ただ、それらの人も、多数派の一般人の中では、色々と生きづらい部分がある。<br />
たとえば、LEDの信号の赤と緑は、当初は色盲の人には見分けがつかなかった。<br />
LEDの単色光だと、彼らには全く区別ができないのね。そこで今では、微妙に波長のちがうLEDを混ぜて、マイノリティの人にも見やすくしている。</p>

<p>これはつまり、マジョリティの人には、マイノリティの人がそんな不便を被っているなんて、ほとんど想像外で、気づきにくいということでもある。</p>

<p>左利きの人の不便は、左手でハサミを使ってみると真っ直ぐ切れないことでわかるけど、普通はなかなか気づかない。でも、そういう一見小さな不便の影響のせいか、左利きの人の平均寿命は、右利きの人より短いらしい。</p>

<p>それと同様に、神経学的マイノリティの人も、神経学的な機能が障害されていて、なにかがわからない。なにかができない。そのために、マジョリティの人にはなかなか気づけない不便を被っている。</p>

<p>また、神経学的なマイノリティの当事者も、自分は、なんでみんながわかることがわからないのだろうか、できることができないのだろうかと、悩む事が多い。</p>

<p>また、どちらかというと神経学的多数派に入る人も、こどものころは少数派的な特徴をある程度持っているのが普通で、幼い頃は両者の区別はあまりつかない。</p>

<p>マイノリティもマジョリティと同じように、年齢を重ねれば成長するので、弱点を補って目立たなくする方法を身につけていくことが多い。</p>

<p>それは、大人になってから英語を身につけるのに似ている。発音はネイティブに及ばないかも知れないし、ニュアンスを伝えるのも難しいだろうけど、だいたいの用は足りるようになることはできる。</p>

<p>神経学的マイノリティの中でも、自閉圏の人は、他者の心を読むのが不得意な人が多い。また、とくに抽象的な言葉だと、同じ言葉が、同じ意味を表さないことも多い。</p>

<p>たとえば、火星の人類学者といわれるテンプル・グランディンは、自分を動物行動学者といっていて、アメリカの大半の大手ファーストフード・チェーン（マクドナルドとか）の食肉工場の設計をしている。</p>

<p>彼女は人の心は直感的に理解できないが、動物の心を理解することはできて、動物たちがおびえずに屠畜されるように「人道的」な食肉加工工場を設計できる。企業にとっては、従来の工場のように、突然家畜が暴れ出して手こずる事が無くなって、非常に都合が良いので、彼女の設計が全米で採用されるワケね。</p>

<p>ここで、彼女のいう「人道的」な屠畜という言葉に、多数派の人はなにか奇妙な感じを持ったんじゃないかと思う。殺生するのに人道的なんて、なんかヘンじゃない？ってね。</p>

<p>でも、彼女はたぶん、皮肉でもなんでもなく、心底そうだと信じていると思う。こういう言葉の感覚のずれが、自閉圏の人にはある。</p>

<p>これはオレ様理論だけど、おそらく自閉圏の人は、発達段階の非常に早い段階で、多数派の人には容易にできる、親子が同じものに注意を向けるメカニズム（共同注意）が障害されていた結果、起きてくる物ではないかと思う。</p>

<p>言語の学習や、心の理論の理解（空気を読む力）は、親子が同じものに注意しながら、何万回何千万回のやりとりのループのなかで、徐々に発達するもののはずだ。そのループが初期にうまくできないことが、マイノリティを形作る。</p>

<p>もちろん、そういう共同注意的なしくみは一通りではなく、多数あって、その障害のされ方、発達の進み具合の順序パターン、原因もいろいろあり得る。</p>

<p>ただ、結果として、多数派なら自然に、この言葉はこれだよね、この行為はこれだよね、という合意ができるところにずれが生じる。</p>

<p>このずれは、人付き合いをするときには、相手から誤解されることもあるし、自分が相手を誤解してしまう原因にもなる。</p>

<p>ただ、それはユニークな発想にも繋がる。グラハム・ベルや、チューリングやニコラ・テスラは、伝記を読むとあきらかに自閉圏の人で、ネットワークやコンピュータや電力は、彼らの多数派の人が思いもしない発想から生まれてきたものだ。</p>

<p>多数派の人は、とかく人の気持ちがわからないのはダメだと言いがちだけど、空気が読めてしまうがために、無意識になにかに盲いてしまうことも多々ある。</p>

<p>たとえば、コロンブスの卵の逸話では、誰もが空気を読んでしまい、卵を割って立てるというアイデアに到達できない。それはしちゃいけないんじゃないのという、無意識のしばりがあるわけね。</p>

<p>神経学的マイノリティの人は、自分がそうだという自覚をもっていたほうが、生きるのは楽になる。</p>

<p>なんでみんながわかること、できることができないのか思い悩んでいるのは辛いけど、自分の弱点はこれのせいかと理解できれば、それを補う方法を自分で工夫する勇気がわいてくるからね。</p>

<p>まわりの人も、その人が神経学的マイノリティであることを理解していると、この人には、こういう言い方だと理解しにくいかなとか工夫できて、あらぬ誤解を生まなくてすんだりする。</p>

<p>アスペルガーの翻訳者、ニキ・リンコさんの著作を読むと、へえー、こういう事がわからないのかと、いろいろわかって面白い。おすすめ。</p>

<p>ちなみにオレはADHDで、３０年遅く産まれていたら、確実にそう診断されてた。<br />
今でも、オレは非常に落ち着きが無くて、オレを知っている人なら、オレがいつもくねくねしているのをごらんになっていると思うけど、オレにはその意識が全くないのだ。じっとしてないから、講演とか聴いていると、時々隣の知らない人に怒られちゃうんだよね、今でも。(´・ω・`)<br />
まあしかし、それがオレなのだ。そのくねくねがオレなのだ。 </p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/05/post_139.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sat, 31 May 2008 08:22:14 +0900</pubDate>
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<title>「夜中に犬に起こった奇妙な事件」を読んで</title>
<description><![CDATA[<p>『夜中に犬に起こった奇妙な事件』（早川書房）<br />
　マーク・ハッドン著　小尾芙佐訳</p>

<p>自閉圏の少年が書いた小説という体裁をとったミステリー。</p>

<p>はじめは、早川の児童書シリーズで出ていたらしいけど知らなかった。<br />
で、去年出た新装版で読んだ。面白くてすごく読みやすい。かなりお薦め。</p>

<p>主人公の少年は、ある晩、向かいの家の庭で、農業用のフォークで串刺しにされた犬に遭遇する。おもわずその犬を抱き上げ、血まみれになった彼は、はじめはその犯人と誤解され、かけつけた警官を殴った（合理的な理由がある）ことで補導されてしまう。</p>

<p>少年には、多数派の人には自明なことでも、わからない事がある。<br />
多数派の人にとっては、そんなことがわからないなんてことが、あり得ると思うことすらできないようなことが、わからなかったりする。</p>

<p>しかし、それとは逆に、多数派の人がまず気づかないようなことを、敏感に察知することもある。それも、多数派の想像を遙かに超えた事柄について。</p>

<p>そんな彼が、この事件を契機に、犬を殺した犯人を見つける決意をし、それを養護学校の先生の薦めもあってミステリー小説のスタイルでまとめはじめる。そして、驚くべき謎が解き明かされていく……。</p>

<p>著者は、自閉圏の人と働いた経験がある神経学的多数派（健常者）なんだけど、自閉圏の人の推定できる内面を、とてもリアルに描いている。</p>

<p>もちろん、他者の内面なんてホントのことは解るわけはない。<br />
ましてや神経学的マジョリティの人に、神経学的マイノリティの内面がわかるわけないといえばその通りなんだけど、まあカタいことはいいっこなし。<br />
読んでいくと、自閉圏の人は、確かにこういう感じだなあと思えることの連続だ。</p>

<p>自閉圏の人は、多数派から見ると、しばしば理解しがたい振る舞いをしたり、言動を行ったりする。理由のわからないことにものすごく頑固にこだわったり、</p>

<p>多くの場合、それはとても厄介だと認識される。<br />
しかし、それは、その人の内部では、きちんとした理由があって、その人なりの論理的な振る舞いなのね。ほとんどの場合、意味なく強情なわけではない。</p>

<p>多数派の人が抱くいちばん大きな誤解は、そういう振る舞いをしているときの自閉圏の人が、感情的に、自分を困らせてやろうと思っているに違いないと思うことだ。<br />
でも、実際には、そんな意図は全くない。</p>

<p>たとえばこの少年は、黄色のものと茶色のものが嫌いで絶対に触らない。<br />
一方、赤と銀色が好きなので、カレーを食べるときは赤い色素で真っ赤にしてから食べたりする。黄色い車を５台連続で見てしまうと、それは最悪の日なので、誰がなんと言おうと部屋から外に出ない。（それらの理由は他の人には語らない（理由を説明すればわかって貰えるという発想もない）ので、両親はじめまわりの人は何故外に出ないかわからず、困り果てたりする）</p>

<p>この物語を読むと、逆説的だけど、他者の内面を理性的に理解することが、他者とよりよくつきあうためのコツのひとつかなという感じがする。<br />
それはたぶん、多数派の人同士でも同じなのね。</p>

<p>あまりにも手強い、ワケのわからない人の内面にも、その人なりの理由がある。それはなんだろうと考えることができれば、そういう人とよりよくつきあうための入り口になる。</p>

<p>相手にイヤなことを言われたりされたりしたとき、反射的に怒るのではなく、いや、反射的に怒るのはしょうがないとしても、しばらく時間をおいて自分の気持ちが静まってきたら、そういうところに目を向けてみる。いつまでも、自分の一時の情緒の高ぶりにとらわれて、相手が悪いと決めつけていては、解決の糸口はみつからない。</p>

<p>もちろんそれはメチャクチャ大変なことなので、誰彼かまわずそういう態度で挑むのはしんどすぎるわけだけど、家族とか、どうしてもつきあわなきゃいけない人とかの場合は、それを試みてみても良いんでないかなあ。</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/05/post_138.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Sat, 31 May 2008 07:34:22 +0900</pubDate>
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<title>ころばない犬</title>
<description><![CDATA[<p>ボストンダイナミクス社のＢｉｇＤｏｇというロボットがある。<br />
まずは<a href="http://jp.youtube.com/watch?v=W1czBcnX1Ww">youtubeのビデオ</a>を見てみてね。</p>

<p><br />
これを見ると、そのすごさは一目瞭然。<br />
たぶんロボットという物に対する、イメージが大きく変わるんじゃないかな。</p>

<p>何故このロボットは、これほど生き物っぽいのか。<br />
その仕組みについては、robot watchに記事を書いていので、良かったら読んでみてね。<br />
<a href="http://robot.watch.impress.co.jp/cda/column/2008/04/04/976.html"><br />
鹿野 司の「人生いろいろ、ロボットもいろいろ」－BigDogの秘密にせまる－</a></p>

<p>記事の中では書いていないけど、BigDogとアシモの違いは</p>

<p>アシモは原理的にミリ単位以下の正確さで動ける。<br />
指示した場所にぴたりと止まることができる。<br />
ただし、外乱には凄く弱い。</p>

<p>ＢｉｇＤｏｇには、正確な動きは無理。<br />
しかし、よたよたしながらでも、どんな条件でも動ける。<br />
ＢｉｇＤｏｇは外乱をものともしない。</p>

<p>アシモは量産可能。<br />
ＢｉｇＤｏｇは個性的な存在。</p>

<p>アシモのような、王道的なロボットは、量産して同じプログラムを与えれば、その通りに動く。</p>

<p>でも、BigDogは、たくさん作った場合、きちんと歩けるようになるには個々の体をどう使いこなすか、ある程度学習の時間が必要だと思う。（予想だけど）</p>

<p>どんなに高精度の量産技術をもってしても、１００％同じ物を作ることは不可能で、ギアの微妙な遊びの違いとか、関節の硬さとか、小さな違いは無数にある。<br />
つまり、個々の肉体の特性は違うワケで、それを物理的な現実の世界の中で動かして学ばないと、あれほど凄い動きはできないんじゃないかな。</p>

<p>ただ、あらかじめ、どのていどのものが組み込めて、どの程度が学習に頼らなければいけないかは、わからない。ものすごく学習が必要となると、一点物みたいになっちゃうけど、最初からあるていど歩けて、それを学習で選りすぐれた物にできるという程度なら、工業製品として使えるだろう。</p>

<p>産まれたばかりの馬や牛は、わりとすぐに立って歩けるけど、最初はやっぱりふらふらだ。でも、成長に伴って、より速い走り方や、より複雑な地形への対応などを学んでいくのだろう。</p>

<p>そんなかんじで、産まれたBigDogを、しばらく牧場みたいなところで訓練すると立派に成長して、役に立つようになるとかね。でも、その場合、個性も出てくるはずで、このBigDogは足が速くて優秀だけど、こちらBigDogはちょっと怠け癖があるねとか。</p>

<p>あと、<a href="http://jp.youtube.com/watch?v=VXJZVZFRFJc">アーリーバージョン</a>も見とく価値ありよ（ ・∀・ ）<br />
</p>]]></description>
<link>http://www.blwisdom.com/blog/shikano/archives/2008/05/post_137.html</link>
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<category></category>
<pubDate>Tue, 27 May 2008 06:58:45 +0900</pubDate>
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