いろいろなこころのかたち
チンパンジーとヒトは、あらゆる動物種の中で遺伝的に最も近くて、その知性のあり方にも、かなり似た感じがする部分が多い。
だから、チンパンジーの行動を詳細に記録したエピソードを読むと、ものすごく感情移入できてしまうものが多い。
ヒトを越えた能力を示す部分もある。京都大学霊長類研究所のチンパンジーたちは、ディスプレイ上に瞬間的に表示された9個の数字を、小さい順に間違わずに押していくことができる。これはどんな人間もかなわない。
オレなんか同じ課題をやったら、4個くらいでもうできないかんじ。
おもしろいのは、人間がこの課題をやるとき、間違えると、思わず周りにいる人の顔を見てしまうことだ。チンパンジーは、仮に間違えてもそういうことは決してしない。
ヒトはまわりの評判をものすごく気にするけれど、チンパンジーにはそれがない。こういうこころのあり方の微妙な差は、両者がすごくにている部分があるだけに、なかなか気づきにくい。
チンパンジーとヒトで大きく違うことの一つに、逆も真なりを理解しないってのがある。
たとえば、チンパンジーに赤い色を見せて、それが「赤」という文字と対応していることを教えることはできる。でも、それを完全に覚えたあと、「赤」という文字を見せて、赤い色を選ばせようとしても、そういうことは全くできない。
あらためて、「赤」という文字を見せた時、赤い色を選ぶんだよということを教えないと、それができるようにはならない。
これは、人間なら誰に教えられるでもなく、自明のこととしてわかる。でも、チンパンジーにはそれができない。こういうある知識を広く敷衍できない知性の差が、人間には文明を作らせ、チンパンジーにはそれがないことの大きな差を生んだとも言われる。
この逆も真なりを理解しないというのは、賢いと言われるイルカでもそうだ。
そして、以外に思うかも知れないけれど、これに関しては、本当はチンパンジーやイルカが正しく、ヒトが間違っている。なぜなら、論理的には、逆は真ではないからだ。この場合のヒトの推論のほうが、非論理的なんだよね。
それはたとえば、こんな例題ならわかるだろう。
ネコは動物だ。では、動物と言えばネコだろうか。そんなわけないよね。動物には、ネコ以外にもイヌとかねずみとか色々いる。つまり、逆は真ではない。ところが、人間はしばしば逆を真と誤解する。
脳を構成する神経は、信号を一方通行にしか流さない。だから、ホントにそういう回路があるかどうかは疑問だけど、A⇒Bという神経回路ができたとしても、それだけではB⇒Aという神経回路はできない。チンパンジーやイルカは、おそらくそういう理由によって、つねに論理的に正しい推論をしているわけだ。
ところが、ヒトは、A⇒Bという回路ができた時に、B⇒Aという回路もできてしまうことがあるのだろう。つまり論理的に正しくない結論を導く回路ができてしまう。そしてそれはA⇒B⇒A⇒B……というループになっている、つまり再帰的な回路になっている。
人間的な知性と、その集合体が作る文明の根幹というのは、実はこういう非論理的な結論を導くような神経回路網が作られやすくなったという遺伝的な変異によって、もたらされたのかもかも。
最終更新時間 2009年08月30日 13:12
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面白く読みました。
特に非論理的知性が文明を生んだという箇所は興味深いです。
そこでいくつか質問があります。
・非論理的知性に依存しない文明は存在しえるか
・再帰構造を脳内に持つソングバードは非論理的知性を持つか
・ソングバードは文明を持ちえるのだろうか
・機械知性による機械文明は存在しえるか
差し支えない範囲だけでもご教授いただければ幸です
投稿者 堀田 : 2009年09月03日 23:46









