はやぶさよ還れ(その3)
はやぶさのもう一つの大きな特徴は、航行や着陸の位置制御に、画像処理を使うことだ。
地球からイトカワまではおよそ3億キロ。
このとき、地球からはやぶさの位置を知る情報は、はやぶさから届く電波のドップラー変異しかない。地上の光学望遠鏡では遠すぎて捉えるのもムリ。
でも、送られてくる電波のドップラー変位なら、視線方向の距離で10mの誤差ではやぶさの位置わかる。
こういうと、はやぶさの位置はかなりばっちり解るような気がするかも知れないけれど、実はそうじゃない。視線方向に直交する面方向だと、仮に100万分の1ラジアンの精度で捉えられたとしても、300キロもずれが出る。
一方、イトカワの大きさはせいぜい500mくらいしかない。
500mのものに着陸させるのに、300キロの誤差がわからない地球上からリモコンするのは、全く不可能なわけだ。
そこで、はやぶさからイトカワを撮影し、背景に写った星の位置から、イトカワの方向を高精度に求める方法が考えられた。
これは特殊な装置を使わず、カメラさえあれば位置が精密に決まる独創的なやり方で、理屈通りうまくいったんだよね。
だけど、はじめは予想外の現象に悩まされたという。
なんと、この航法用の写真にはUFOがいっぱい写っていて、どれがイトカワか全くわからなかったんだと。
UFOの正体はなにかというと、化学エンジンで生成された氷の微粒子が、カメラの前を漂っているものらしい。移動速度がすごくゆっくりで、最初は20個くらい飛んでいたのが、何日も待って徐々に動いて数が減っていき、残されたこれがどうやらこれがイトカワだと解ってくる。
オペレータの忍耐がものすごく試されたわけね。
イトカワへの着陸も同じような困難があって、、高度はレーザー測距計で測れるものの、水平方向の運動はわからない。
そこで、ターゲットマーカーという目印を投下し、それをカメラで見て水平面内での運動を制御した。また、地形を撮影してその画像を使う、地形参照航法も行われた。
これらも、なるべくシンプルな機材で目的を遂げるためのアイデアで、まあ、予算が潤沢なら、こんな独創的なアイデアも生まれなかったろう。
これって、しかし、日本の科学や技術開発の一つのパターンだったりする。
なにかをしなければならないのに、お金はない。金をかければできることは解っているけど、そのやり方は不可能という状況があって、ものすごく画期的で独創的でお金のかからないやり方を編み出してしまう。風船爆弾もすだれコリメーターもそんなかんじ。
知性のきらめきは問題解決の時に現れるものだけど、その問題がいつもお金がないってのは、ちょっとわびしいかもね。
最終更新時間 2009年02月27日 13:23
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