人類の未来
ガンダムって所詮アニメだし、ああいう宇宙移民の話も、SFというか、遠い未来の夢に過ぎないよな……と、まあ、たいてい普通の人はそう思っていると思う。
でも、本当にそうなんだろうか。
今、全地球的に起きている問題の数々=地球環境破壊や、多くの生物種の絶滅、エネルギー資源問題、ゴミ問題などなどは、つまるところ文明が進んだ結果、人間が簡単には死ななくなったことに原因がある。
文明の進歩は、莫大な食料生産を可能にし、かつては助からなかった病気の多くを、とるに足らないものに変えてしまった。そのうえ今の文明は、人の死は悲しく良くない事だから、なるべく避けようと考える。
その結果、人口はどんどん増えて、そのぶんエネルギーを大量に使い、大量の廃棄物を出すようになった。今後さらに、発展途上国を中心に人口は爆発的に増え、しかも彼らが先進国なみの生活を願えば、資源・エネルギーは枯渇し、汚染はローカルにも地球規模にも、深刻化することは明らかだ。この大きな流れの前では、新エネルギー開発や省エネルギーなんてのは、たいして力を持たない。破局までの時間を、ほんの少し先延ばしするだけの、延命措置にしかならないだろう。
使える資源・エネルギーが減り、温暖化や汚染で気候が変化すれば、食料生産はたぶん大幅に低下する。そうなれば国家間の血みどろの紛争が始まる。この流れを看過していては、文明の崩壊は避けられない。
今のようなつまらん文明なんて滅んでもいいじゃないの、とか思う人もいるかもしれないけど、ぼくはそうは思わない。そういうふうに思う人は、単にまわりが見えていないか、想像力が足りないだけだと思う。
早い話、ぼくたちは、身の回りにある、ありとあらゆるものを、自分の力だけで作ることはできない。パソコンのような複雑な機械や巨大な建築物はもちろんそうだし、身近な生活に関わる日々の食事から衣服まで、どれ一つとしてできやしない。もちろんパーツ(部品や食材)を集めて作ることはできるかもしれないけど、そのパーツを原料から作ったり、適切な場所に運んだり、パーツを組み立てる工具を作ったりといったことは、すべて他の人に依存している。
ぼくたちが、当たり前にやっていることのほとんどすべては、実は膨大な人たちの知性と、営みの集積で始めて可能になるものばかりだ。つまり文明は、1人1人の人間の積み上げたものであると同時に、1個の人間を遥かに越えたコトを可能にしている。それはとても貴重なものだし、簡単に壊しちゃえといえるようなシロモノでは絶対にない。それはこれからもずっと、守り育てていくべきものだと思う。
もし仮に、今後、世界大戦のようなものが起きたとしても、種としての人類が滅びることはないだろう。でも、今と同じレベルの文明は二度と再び築くことはできない。なぜなら、簡単に採取して安価に使えた化石燃料は、すでに取りつくされているからだ。
今では、ある程度以上の文明レベルがないと、化石燃料も手に入れられない。つまり、今の文明の破綻は、リセット、再起動が効かない壊れかたになってしまう可能性が大きい。
じゃあ、どうしたらいいのだろう。
答えは簡単だ。現代の文明を、破壊することなく維持し、発展させていくには、人類は宇宙に進出する他ない。それがただ一つの現実的な選択で、これができなければ、膨大な数の人の死を伴う、文明の破壊がいつか必ず起きてしまう。宇宙はもはや、夢であってはならないのだ。
ファーストガンダムは、「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって……」という出だしではじまっていた。でも、増えすぎた人口を宇宙に移民させる事、それ自体は、たぶん地球の問題を解決することには直結しない。
地球上で増え続ける人口を、外に出す事で平衡を保とうとしても、それは無理というものだ。人口の増加のペースを越える勢いで、地上の人間を宇宙に運ぶ事は、おそらく軌道エレベータのような理想のテクノロジーを使っても困難だろう。
つまり、地上の問題を解決するには、結局のところ、きつい制約と厳密な管理が必要になる。エネルギー資源の使用量や出産の制限、居住地の限定なども避けられないだろう。
では、宇宙移民をすることの意味とは、いったい何だろうか。
それは、未来への選択肢の提示だ。
宇宙は、真空、無重量、高レベルの放射線など、苛酷で厳しい自然に満ちている。反面、太陽などからくる無尽蔵のエネルギーや、小惑星などから採掘できる莫大な資源がある。
地上で制約の多い安全な暮らしを選ぶか、宇宙で厳しく豊かな未来を生きるか、それを選べるということが重要なのだ。選択肢のない制約は、決して長続きしない。もし仮に、宇宙に進出することなく、制約だけに未来を託すとしたら、そんなものはいつか破綻する。非常によく保てたとしても、せいぜい数百年だろうし、それがほころび始めたら、あとはもう破局しかない。だけど、選択肢がある場合は、地上の制約は受け入れやすい。それが嫌なものは、宇宙に出ればいいのだから。
そしてひとたび、人類の子孫たちが宇宙に基盤を築けば、彼らは地上人の制約から解き放たれる。宇宙で生まれ育ったものにとっては、そこが自分たちの自然であり、彼らは人類の遺伝子と文明を受け継いだ人類の子らではあっても、もはや人類そのものではない。地上では赦されなかった遺伝子改造も容認されるようになるだろうし、宇宙環境に適応した生命体として進化を続けていくはずだ。
ガンダムの世界が描いたのは、所詮はごく狭い範囲、地球と月の軌道の内側の範囲でしかない。しかし、人類の子孫たちの活動範囲は、すぐに太陽系全域から、他の星系へと広がり、やがては銀河全体に広がっていくだろう。その文明は、超新星の爆発を始めとする、いかなる災害によっても決して滅ぶことはない。この宇宙は、我々の子孫たちによって、満たされていくことになるだろう。
最終更新時間 2007年12月02日 00:04
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