知人の訃報に接する
少し前のことだけど、某ソーシャルネットワークのマイミク(といったらバレバレか)の一人が亡くなった。
享年37歳。
残念なことだ。
実は、彼とは一度も会ったことはない。
全く面識のないマイミクはほとんどいないのだが、その一人だった。
ワールドコンで会えるかなと思っていたけど、そのときはすれちがい。
そのうち、うまいものでも食べながらゆっくり話そうといっていたのにな。
かれはIPv6分野で日本で二番目に偉い人と自称していて、それは事実そうだったのだろう。
きわめて優れたソフトウェア技術者だった事は間違いない。
実際、ぼくらがインターネットを利用するとき、必ず彼のコードを利用していて、それは50年後の
未来でもおそらく変わらないという、それくらいの人だ。
彼とマイミクになったのは、彼からの申請があったからだ。
だが、その申請のメッセージは、到底初対面の人間に書いてくるようなものではありえない、
かなり無礼なものだった。(IPv6で日本で二番目にえらい人とそこに書いてあった)
あまりにひどい内容なので、さすがにちょっとムカッときて、承認しなかった。
でも、よくよく考えると、その無礼さはあまりに無礼すぎて、どこか奇妙な感じだった。
いくらなんでも、普通の人はここまで無礼になれないんじゃないか。
(なにしろ、IPv6のことを話してあげる、「作文」はまかせたとか書いてあったのよねん)
そして、おそらくは非常に優れたソフトウェア技術者であること。
あ、なるほど。
瞬間的な怒りが収まってみると、彼のメッセージの意味することは明らかだった。
彼はアスペルガーに違いない。
だから、別に無礼に振舞ったわけじゃなくて、正直すぎるのであり、文脈というものの把握が苦手(いわゆる「空気が読めない」)なだけだったわけだ。
で、そのことに思い当たって、逆にオレから申請してマイミクになった。
オレがその申請メールで、アスペルガーでしょって書いたら、彼は驚いていた。何でわかったのって。
でも、そのことを彼に説明するのは難しい。どうやって、オレがそれを見抜いたかわかってもらえるか色々考えてみたんだけど、結局それは果たせず。
メールのやり取りで、ビルゲイツもアスペルガーらしいよって書いたら、それはイヤだなあって言ってた。でも、アレクサンダー・グラハム・ベルと、チューリングという、コンピュータとネットワークの元祖も、やっぱりアスペルガーだったって話をしたら、それはいいなって。
彼にはたくさんマイミクがいたし、博覧強記である個性を生かして、専門分野やSFファンの中にも友人が多かったようだ。とくに研究者とかSFファンの中にはアスペルガー傾向の人がすごく多いので、それに対する耐性が強いから、受け入れられやすかったんだろうね。
アルペルガーの人には視覚優位の人が多く(物事を絵として理解する)いるので、プログラムとかを書くときもそういうものなのかと尋ねたら、自分はプログラムは無意識に書けるのでよくわからないとのこと。
神経学的多数派は、文脈を読むことや他者の心を勘ぐること(いわゆる心の理論)を、無意識的に常時休みなくおこなっていて、それをやめることはできない。これは他者のごくわずかな反応、目線、表情のタイミング、言葉の間合いなどを手がかりに、論理的には必ず正しいとは言えない可能性について深く推論しなければできないことで、膨大な神経資源を費やしていることは間違いない。ヒトはチンパンジーに比べて3倍の脳容量をもっているけど、その大半はこの情報処理に割り当てられているのかもしれない。
おそらく、彼のような天才は、多数派がいわゆる心の理論に費やしている膨大な神経資源が、プログラミング能力に割り当てられていて、そのために、無意識にプログラミングができるというような、多数派にはまねのできない能力を獲得していたのだろう。
神経学的マイノリティであり、マイノリティであるがゆえに、多数派の社会の中ではとかく生き辛いアスペルガーの人々の中でも、彼は比較的幸せな人生を送れていたのではなかったのか。もちろん、そうはいっても、苦労は多々あったに違いないけれど。
本当に残念なことだ。
その後、別のマイミクさんから、すごく良い本を紹介して貰った。
この人も、アスペルガーとは深いつきあいのある人だ。
本のタイトルは、『あなたがあなたであるために』(中央法規)
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薄くてすぐ読める本だけど、多数派の人が読めば、神経学的マイノリティの人がどういう人たちで、どういう立場に立たされているか、かなり具体的に理解できる。
それはたとえば、右利きの人の多数いる社会での左利きの人のようなものだ。
左利きの人は、右利きが多数いる社会の中では、見えざる苦労にさらされる。
はさみも使いにくいし、自動改札を通るときの切符の入れ口にも不便さがある。
さまざまな見えざる苦労の存在によって、左利きの人の寿命は、右利きの人の寿命より短いという統計もあるくらい。
でも、多数派は、少数派のそういう苦労にはなかなか気づきにくい。
アスペルガーをはじめとする神経学的マイノリティの人も、同じように見えざる苦労を背負う立場だ。
また、この本は、アスペルガーの人がこの神経学的多数派の人たちの社会の中で、少しでも快適に過ごすための具体的な方法のヒントもたくさんかかれている。
この本は、自分はひょっとして神経学的マイノリティじゃないかと思い当たる人、あるいは友人や子供などの親族にその当事者がいる人にはもちろん超おすすめだけど、できる限り多くの人にも読んで貰いたいと思う。
単純に知的な興味としても面白いし、すぐ読めるにも関わらず、繰り返し読むほど味わいがある。
神経学的マイノリティという存在を、本人が自覚し、まわりもそういう存在があることを認めることで、世界はより良くなっていくと思う。この本はそのためのすばらしい入門書だ。
最終更新時間 2007年11月27日 14:28
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