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2006/11/11

マンナミーヤ!宇和島腎臓移植のこと。

 宇和島、腎臓移植問題で話題の万波医師。

 あの人の様子に、アネハっぽさを見ている人は多いと思うけど、それはちょっと違うと思う。

 この人はアレだ。

 昔よくいた、江戸っ子の大工の棟梁みたいな人。職人さんなんだな。

 腕前には自信がある。経験も豊富。細かいことは気にしない。
 オレは良い仕事してるんだから、ぐだぐだイチャモンつけるなって感じ。

 まあ、悪い人ではないんだけど、今の社会では、それはちょっと許容できない部分があるんだよなあ。

 若い人には実感はないかも知れないけど、かつて、日本では、盲腸といえば手術という時代があった。なにしろ、日本人の5人に一人は盲腸を切っていたのだ。

 その数およそ、アメリカの1000倍。

 日本人は、アメリカの1000倍も盲腸に罹りやすいのかというと、そんなワケ無い。
 現実は、虫垂炎でも何でもないケースでも、さくさく手術を行っていたわけだ。

 実際、友人のメカデザイナー、あえて名は秘すがBさんは、子供の頃、学校をサボろうと仮病でお腹痛いよって言ってたら、お医者に盲腸だねっていわれて、でも、仮病だとは言い出せず、そのままさくっと切られちゃったそうだ。

 あるいは、オレはこの島の全員の盲腸を切ってやったんだ(*゚∀゚)=3 というのが自慢の医師の話も聞いたことがある。

 これは今では赦されない蛮行だけど、当時の医者たちの大半は、それは良いことだと信じていた。どうせ盲腸なんかいらないものだし、病気の予防になるんだから悪くなくても、どんどん切っちまえってな感じだったワケね。

 万波さんも、まあこのノリで腎臓移植をやっている。病気の腎臓使ったって、どうせ捨てるものだし患者の利益にかなっているでしょ。患者たちはみんな感謝してくれているでしょ。ってわけ。万波さんは実感として、自分がやっているのは正義であって、恥じるところは何もないと思っている。だから、非常に無防備に、野蛮な発言を繰り返している。

 でも、それは現代においては、独りよがりの論理でしかない。
 たとえば、

 万波医師、移植患者の選択は「気まぐれ」 登録制度なし

 によると、この病院には、移植待ちの患者を登録して優先順位を決めるシステムがなくて、腎臓の提供があるたびに、万波さんが行き当たりばったりに移植患者を選んでいた。「リストもなければ計画性もない。出合い頭だ」だそうだ。

 そりゃ、審査も順番待ちもなければ、移植してもらった人は大喜びだよ。
 万波さんも、手術をした患者さんからは、感謝されこそすれ、批判にさらされることはない。

 でも、この世には10年以上も移植を待っている人がたくさんいる。臓器が絶対的に不足していることは、万波さんも繰り返し強調していたけど、それがわかっていて出会い頭とは何事かって感じ。自分の全能感を満たすためだけに、手術をやっているんじゃないかとさえ思えてくる。

 それに病気の腎臓を移植するとき、患者には、きちんと説明して同意を得ているとかいっている。

 その同意とは何なのよ。

 病気の腎臓を移植するという行為によって、その後、がんなどの深刻な病気が生じる可能性がある。でも、そんな違法な移植は、過去にあまり行われていないだろうから、どういう腎臓を移植したら、どのくらいの確率で病気が出るか、統計的なデータなどもあるわけがない。つまり、エビデンス(証拠)もへったくれもないことを喋って、同意を得ているといっているわけだ。

 そのリスクの程度を、客観的に評価できる情報を与えられていない患者に、説明したといっても、全く通用しないよね。

 こんな具合に万波さんを責めることはできるけど、本当に問題なのは病院の方だ。

 なぜ、この病院は倫理委員会を設置しなかったのか。

 倫理委員会があり、複数医師による検討があれば、今回の問題の数々は基本的に起きなかったことだろう。

 怠慢なのか。もちろんそうだ。それに、日本的な曖昧さの問題があったんじゃないかとも思う。

 万波さんは移植学会にも所属していないし、確信を持って、王道には従わないつもりなのだろう。学会のヘンなルールを真に受けていたら、患者を十分に救えないとか何とか思っているんじゃないかな。

 500例の移植実績があり、頻度高く高度医療を行う彼は、病院の稼ぎ頭だったはずだ。と、いうか病院の収入の半分くらいを担っていてもおかしくないくらい。

 その万波さんが、倫理委員会なんていらないよ、オレはオレの好きなように移植するよとかいえば、異論を唱えるのは難しい。まあ、そうはっきり言ったかどうかはわからないけどね。

 でも、たとえそう口にしなかったとしても、病院側には、稼ぎ頭だし、ちょっとやばそうだけど、見てみないふり、みたいな雰囲気はあったはずだ。そうでなければ、倫理委員会を作らなかった理由がない。

 でも、それは全くダメな対応だ。万波さんがああいう人だから、病院側が倫理委員会を作らなかったのも無理ないよとは、全くいえない。完全に病院側の対応に問題がある。

 病院は組織なのだから、たとえ万波さんがどういう人であろうと、倫理委員会が必要ですよ、ルールに従ってください、それが嫌なら出て行ってくださいと、言うべきだったのだ。

 法とは、ルールとは何か。
 あれは装甲じゃなくて、拘束具なのよ……
 じゃなくて、拘束具じゃなくて装甲なんだよ。

 法は遵守することで、自分を守ってくれるものなのだ。

 ルールが存在しないところで、融通無碍に振る舞った万波さんは、これからマスコミにぐしゃぐしゃに攻撃されて、ひょっとしたら医療行為が続けられなくなるかも知れない。
 まあそこまで行かないにしても、当分は、医療行為とは別のことに忙殺される事になることは間違いない。

 実際、万波医師がランダムに選んだという患者は、実はお礼をたくさん払った人だったんじゃないかという勘ぐりとか、臓器提供者へ不完全な情報しか与えておらず、本来摘出する必要がない臓器を取り出していたんじゃないかという推定もされている。

 こういうことを万波さんがやったかどうかはわからない。ぼくの単なるカンでは、お金の授受は余りなさそう。臓器提供者へ不完全な情報しか与えなかったということはあるかもしれない感じ。

 ただ、万波さんを、医学の世界から追放するか、犯罪者として立件するには、この2つの少なくともどちらか一つを証明しないと無理だろう。つまり、こういう事が話題になってきたということは、この問題を万波医師とそのグループだけの異常な問題として、決着づけようとする動きというワケね。

 でも、それでは日本の医療を良くすることにはならない。

 もし、病院が倫理委員会を作り、この腎臓の提供者の素性は大丈夫か、病気の腎臓の移植は許可できるかどうか、移植の順位づけはどうあるべきか、検討していれば、万波さんはそれらの「雑事」に煩わされずに、ずっと好きなように職人芸をふるえただろうに。

 そういう意味でも、病院が倫理委員会を作らなかった責任は重い。

 ただし、もっと本質的には、日本には、移植コーディネーターという職業が、執刀医と独立に存在していないという問題がある。倫理委員会を作らなくても、移植コーディネーターという職種が確立していれば、それで問題は生じないはずだ。

 日本ではなぜか、こういう医療分業というのが、あまり歓迎されていない傾向があるように思う。

 「産婦人科の困った人」のところで書いた、不妊治療の問題だって、遺伝子カウンセラーという職業が、医師と独立して存在すれば、あり得ない話なのだ。ところが、遺伝子カウンセラーは、アメリカでは2000人いるのに、日本には5人しかいなくて、しかも今後、増やしていくような法的根拠はまだ無い。

 なぜそうなのか。その背後には医療費が圧倒的に足りないということもあるだろうけど、医師が、高度医療の一部でも手放したくないという感じがあるのではないかという気もする。まあ、これは単なる邪推だけどね。

 いずれにせよ、こういう問題は、個人に責任を押しつけてもほとんど意味がないわけで、システムをどう整えていくかという方に議論が向かわないと、ダメなんじゃないかと思うワケね。


 余談だけど、今回の事件のきっかけになった、親類に偽装した他人の腎臓を移植したという話は、結構ビックリだった。

 今の腎移植って、HLA(組織適合抗原)見てないのかよ!ってね。
 だって、来院者がいくら親類だと言いはっても、HLAを見りゃ、普通は親戚か他人かくらい一発でわかるだろう。でも、そうでなかったということは、HLAなんか気にしなくても、腎臓は高い確率でくっついちゃうって事なんだろう。

 免疫抑制剤は80年代にサイクロスポリンA、90年代にタクロリムス(FK506:商品名プログラフ)が使われるようになって、この二つが劇的に効くみたいだけど、それに加えて、3~4種の免疫抑制剤をうまく組み合わせることで、かなり自在に移植ができちゃうんだね。知らんかった。

最終更新時間 2006年11月11日 08:43

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このリストは、次のエントリーを参照しています: マンナミーヤ!宇和島腎臓移植のこと。:

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 昨日から体調を崩してぼーっとしてます。月曜から毎日打ち合わせやパーティが続くの [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年11月26日 10:50

» 「宇和島徳洲会病院 臓器売買事件について」 from 二条河原落書
★ 各メディアが、いろいろと報じてはいますが、まとまった情報がなかなかありません。 「臓器移植」問題については、読売オンラインが、比較的古い情報も残... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年12月06日 09:46

 昨日のNEWS23で万波さんの話をやっていたけど、今でも移植は続けていて、しかも病院側は、いまだに倫理委員会も作っていないみたい。病院の責任をもっと問うべきなんだけどなあ。

 病気の腎臓の移植に関しては、がんの腎臓を、がんを切り取った上で移植したケースが紹介されていた。番組中でもコメントされていたけど、がんを切り取って癒るなら、腎臓を摘出する必要はない。それなのに、全摘して移植に回すのは明らかにおかしい。

 たとえ患者が全摘を望んだとしても、そう患者が希望するように、執刀医が不完全な情報を与えて、誘導した可能性があるね。

 また、これは「人体実験」であって、安易になし崩し的に認めては危険な行為だとのこと。全く同感。

 番組で紹介されたケース以外にも、ネフローゼの腎臓を摘出して移植したのがあるらしいけど、ネフローゼ腎の標準的な治療は、ステロイド剤と免疫抑制剤のカクテル療法で、これは移植後の薬とほとんど同じ。つまり、移植すればネフローゼは癒る。
 でも、それなら、そもそもドナーにされた患者にカクテル療法を行って治すべきで、摘出の対象にされるのはおかしい。

 これらの事例は、傷害罪として立件されるかもしれない。

投稿者 鹿野 司 : 2006年11月17日 10:54

ふるいエントリ(事件発覚直後)で恐縮ですが、TBさせていただきました。

万波医師について、また、病院が倫理委を儲けない理由についての洞察は、なるほどと思いました。

レシピエントとその内妻に、懲役1年が言い渡されましたが(12月5日)、今後、どのように展開するのでしょうか。

投稿者 rabbitfoot : 2006年12月06日 09:54

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