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2006/05/31

テレビ視聴はこれからどうなるんだろう

 DVDレコーダー、またはハードディスク・レコーダーはテレビの視聴スタイルを大きく変える装置だ。いったんこれを使い始めると、iEPG(電子番組表)が非常に便利で、テレビをリアルタイムで見ることが減り、暇なときにザッピングしつつ見るようになる。
 また、貯めておくだけで満足して結局見ない場合も多くて、そのへんは書籍の積ん読とかなり似ている。

 以前は、時とともに流れ去っていくメディアだったテレビが、蓄積していつでも見られるメディアに変わったわけだ。

 この種の装置の最近の製品情報についてはあまり知らないのだけど、早い時期から非常にはっきりした哲学を持って作られていたのが、東芝のRDシリーズとソニーのコクーンだった。

 RDシリーズは、開発の中心人物がアニメおたくで、スカイパーフェクテレビのアニメ専門チャンネル、アニマックスで放送される番組を、いかに完璧に録画し、便利に保存できるかを目的に開発されたものだった。

 おたくにもいろいろなタイプがいるけど、この人は典型的なビブリオグラファーでシリーズものを完全にそろえてファイルし、きれいに背表紙をつけて並べるようなことが喜びというような感じ。

 実際、RDシリーズは、ほんの少しのストレスもなく、素直に美しくライブラリが作れるように、心血が注がれている。

 たとえば、この種の装置として先駆的に取り入れたiEPGも、好きな番組を選ぶためというより、録画したタイトルに情報を付加したり、ライブラリ化するのに便利という点に重点を置いていた。

 また、DVDフォーマットにも強いこだわりがある。
 記録型DVDの規格には、種類によって素人には思いもよらない制限事項が多い。たとえばDVD-Video規格では、録画した番組から、CMだけをカットしようとしても、CMの頭と尻が必ず残ってしまう。また、音声多重の番組は録画できないし、コピーワンスの番組も録画できない。DVDフォーマットには様々な種類があるので、たいていの人はそんな制約があることを知らなくて、問題が起きてはじめてがっかりすることになる。

 RDでは、それを未然に防ぐため、原則としてケース入りのDVD-RAMを使ったDVD-VR規格を利用する。この規格は、それまでのDVDプレイヤーでは再生できないことが多かったし、今でもDVD-RAMはどちらかというとマイナーな媒体なのだが、現実問題として、個人がエアチェックしたテレビ番組をライブラリで一元管理する場合、それは余り問題にならない。また、ホームビデオなどで撮影した映像を友人に渡したいときには、互換性の高いDVD-Rフォーマットを利用することもできる。

 また、30分番組1クール分を一枚のDVD-RAMにぴったり納める圧縮モードとか、BSやCS放送、かつてVHSテープに録画しておいたコンテンツなどを一枚のDVD-RAMにまとめるとき、音声レベルがまちまちで音割れやノイズが発生することがあるので、それを防ぐための録音入力レベルの調整機能をつけたりと、ビブリオマニアにとってかゆいところに手が届く機能も多数用意された。


 一方コクーンは全く発想が違う。
 コクーンにはDVDはついておらず、ビブリオグラファー的楽しみは眼中にないという明確な意志を示した製品だった。まあ、普通の人がそういう哲学につきあういわれはないし、市販やレンタルのDVDを再生したい人は多いので、今ではスゴ録がメインの製品になっているわけだけど。

 コクーン最大のウリは、使うほど、持ち主の好みを覚えて、勝手に録画予約してくれる「おすすめアルゴリズム」だった。今ではこれは「おまかせ・まる録」機能として、スゴ録にも受け継がれている。

 この機能は非常にすばらしい。ある雑誌の記事用にしばらく試用させてもらったのだけど、本当に欲しいと思わせる機能だった。

 ただし、それは自分の好み通りの番組を、正確に録ってくれるからじゃない。

 おすすめで録画されるタイトルは、見たいものも多いけど、自分の意志ではまず録画しないものも少なからず含まれる。ところが、それを試しに見てみると、結構楽しめたりすることがある。食わず嫌いだった番組に、意外な面白さを発見できるのだ。

 自分の好みと違うものをリストアップすることが多いのに批判的な人も多いのだけど、これはあまり一致してしまっては面白くないと思う。
 世の中、効率の良さとかとことん徹底的に追求する傾向が強いけど、それは程度問題であって、あまりやりすぎるとかえって世界を狭くしたり、好ましくない副作用が目立つようになると思うんだけど、まあ、その話はまたいずれしよう。

 で、コクーンを使い始めると、すぐにテレビの視聴スタイルが変わりはじめる。最初に録画したい番組をある程度設定したら、あとは毎日番組表を見ると言うことも少なくなり、
撮り貯めた番組は、週末など暇なときにザッピングして、面白そうなのだけを選んで見るようになる。

 以前のテープ媒体は、せっかく録画しても、ラベルを書くのを怠けたりすると、どのカセットに何を入れたかわからなくなったり、頭出しにも猛烈に時間がかかるので、結局見ないことが多かった。
 しかし、コクーンはタイトル一覧で選んで、ザッピングから本格視聴まで瞬時に切り換えられるので、ふと気がつくと、自分ってこんなにテレビ好きだったのかと思うくらい、たくさんの番組を見るようになっている。

 まあ、僕はビブリオグラファーではないので、こういうもので十分なわけだ。

 こういう商品づくりは、いにしえのソニーらしさの残り香だなあと思っていたのだけど、後に、この機能はTiVoからヒントを得ていることを知った。

 DVRの“事実上の標準”になるか――全米を虜にした「TiVo」の秘密

 TiVoは視聴した番組に番組に対して、サムズアップ(親指を上に向ける)ボタンかサムズダウン(親指を下に向ける)ボタンを押すことで評価し、その評価がネットで集計されて、同じ傾向を持った人が見ている番組を録画するようになる。アマゾンのおすすめとおなじような仕組みを持っているわけだ。

 それにしてもTiVoはなぜ日本に進出しないんだろうね。日本市場にあまり興味がないのか、それとも何か障壁があるのか。独自の番組評価システムは、視聴率とはまた別の評価システムにもなりそうなのに。


 さて、それでぼくは、こういう製品を使っているかというと、未だ持ってはいない。
 と、いうのも、市販の製品が安くなる前に、パソコンでハードディスク・レコーディングをはじめてしまったからだ。市販品のほうが簡単便利に違いないだろうけど、同じことはほぼできるし、パソコンのほうが便利なこともあるので、あえてそういうハードを買うところまではいっていないのだ。

 そしてテレビ視聴に関して、今いちばんあって欲しいのは、友達やネットであれは面白かったと評判になった番組を、見られるようにする装置なんだよね。

 これは全ての番組がネットのオンデマンドで配信され、後からでも少額を支払えば見られるようになれば、できる話ではある。ドラマの新シリーズなど、こういう仕組みを作ったほうが、リアルタイムのTV放送の視聴率も上がるような気がするのだけど、現状ではそういう世界がやってくることはなかなか難しそうだ。

 しかし、今やハードディスクの価格が低下して、全チャンネルの全番組を24時間録画し続けることも、不可能ではなくなってきた。

 何も操作しなくても、全てのチャンネルが録画されていて、録画ファイルとiEPGが関連づけられていれば、簡単な検索をするだけで、過去に放送された好きな番組を見ることができるわけだ。

 画質にはあまりこだわらないことにして、すべての番組を蓄積し、容量が一杯になったら古い物や、一度も見ていない番組、取っておきたいという印のないものから順次消していていったり、ハードディスク自体を取り替えられると良いだろう。おまかせまる録のような仕組みで、取っておきたいファイルに印がつけられるとさらに良い。

 今、DVD-RAMの価格は、約10ギガバイトの容量で安いものなら600円ほど。つまり250ギガバイトで1万5千円だ。
 一方、250ギガバイトのハードディスクは、今では1万円を切っているので、USB接続のハードディスク・ケース(安いので2000円くらい)を足しても、ビットあたりの価格はDVD-RAMより安くなっている。

 そのため、ぼくはもはや、録画した番組をDVDに焼くことはせず、外付けハードディスクに記録して、それがいっぱいになったら別のハードディスクに変えるようになっている。インデックスも、DIRコマンドをリダイレクトしてテキストにすればできてしまうし、1つのハードディスクで25枚のDVD-RAM分だから、保存スペースもかなり小さくできるしね。

 録画はDivXとかの効率の良いコーデックを使えば、500メガバイトで1時間番組は充分記録できる。1チャンネルにつき24時間録画で12ギガバイト。10チャンネルを録画するとして一日120ギガバイト。ということは、2週間分の全記録を行うには、250ギガのハードディスクが7個必要になる。さらに10チャンネル分のチューナー&エンコードボードを考えて、今の時点で高く見積もっても、30万円以下で、そういう装置は作れるだろう。

 まあ、2011年以降は、否応なく全チャンネルがハイビジョン化されそうな雲行きなので、こういう装置が大手メーカーの製品として出てくることはないかもしれないけど。

 それにしても、次世代DVDのビット単価は、たぶんハードディスクに勝てない(一時的にリードしてもすぐに逆転される)ので、記録メディアとして成功するのは難しいかもしれない。ハイビジョン画質のソフトを提供するための媒体にしかなれないような気がする。
 
 ぼくは映画を映画館ではなく、テレビで見てもあまり気にはならない(もちろん映画館のほうがより良いことは確かだけど)タチなので、ハイビジョンはまあきれいだけど高い金を出してまで買い換える気にはなれないんだなあ。

 アナログ停波や次世代DVDなどは、あまり欲しくもない製品を選択しなく押しつけられるようで、どうもイヤンな感じ。まあ、我々の人生の目的は経済の活性化だから、それも仕方のないことなのかもしれないけど。

最終更新時間 2006年05月31日 12:10

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トラックバック時刻: 2006年05月31日 17:08

SONY の VAIO typeX が既に、6 チャンネル同時一週間全録画を実現してますね。
現行機は地上波のみ対応モデルとデジタル対応モデルに別れていますが、地上波 8ch + 2TB HDD でおっしゃるとおり 30 万円を切ってます。

投稿者 YetAnotherAnonymous : 2006年05月31日 20:22

そしてテレビ視聴に関して、今いちばんあって欲しいのは、友達やネットであれは面白かったと評判になった番組を、見られるようにする装置なんだよね。

→「これが、YouTubeなのですよ」

投稿者 つぶやき : 2006年07月12日 01:21

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