思えば遠くにきたものだ
人類が発明したものの中で、もっとも影響力のあるテクノロジーは何か。
まあいろいろ意見はあるだろうけど、ここ100年以内なら、それは間違いなく集積技術だ。
僕個人としては、これは人類史上最大の発明と言っていいとも思う。
コンピュータではない。
コンピュータだけなら、実はそれほどたいしたことはなかった。
たとえコンピュータがあったとしても、1958年に集積回路が発明されなかったら、世界の変化はさほど大きくはならなかったろう。集積回路という発想の発明こそが、世界を本質的に変化させる力を持っていた。
ムーアの法則によれば、集積技術は情報処理に必要なコストを、15年ごとに千分の一に引き下げてきた。つまり、1958年の集積回路の発明から48年を経た現在、情報処理のコストは往時の10億分の1以下になっている。50年に満たない短時間に、何かの性能が10億倍になることなど、人類史上かつてなかったろう。
赤ちゃんのハイハイも千倍するとジャンボジェットの速度になる。工学の多くの場面で0.1%、つまり千分の1以下の誤差は無視できる。千倍という変化ですら、これほど大きな差異を生むというのに、その千倍の、さらに千倍の変化が、たった半世紀のうちに達成されたわけだ。
初期の電子計算機は、たくさんのスイッチ(リレー)や真空管を組み合わせて作られていたけど、やがてその素子は1947年に発明されたトランジスタに変わっていった。なにしろリレーや真空管は壊れやすいので、それを膨大な数必要とする計算機は、ほとんど常に修理し続けなくてはいけない。
たとえば極初期のコンピュータであるENIACは1万8千本の真空管を使っていたため、20分に1本の割合で真空管が切れていた。
それに比べると、トランジスタは滅多に壊れないので、複雑でも毎日きちんと動かすことができた。また、小型だし、発熱が少ないし、消費電力も少なく、動作が速かったりしたし。
でも、トランジスタを素子=1個の部品とする限り、そこには自ずと限界がある。コンピュータの処理能力を上げるには、膨大な数の部品が必要になるから、それを組み上げる手間やコスト、動作の検証、設置スペースや必要な電力なども、それに比例して増加して、やがて現実的な値段での性能アップが図れなくなってしまう。
一方、集積回路は、部品を集めて回路を作るという従来の概念を変えて、シリコン基盤上に一度に回路を作ることを可能にした。しかも、それは印刷(フォトリソグラフィー)によって行われる。つまり、印刷を縮小しさえすれば、コストをほとんど変えずに、詰め込む部品を増やしていけるわけだ。
このアイデアこそが、真の変化をもたらした。
たとえばトランジスタまでの技術で、どれくらい複雑なものが作れるかというと、たぶんアポロ宇宙船レベルくらいまでなら可能だろう。
これは、部品点数が数百万点(家電が数千点、自動車が数万点、H2A ロケットで28万点)だから、MPU でいうと、93年に作られた初代ペンティアム(310 万トランジスタ)くらいの規模の機械だ。
ただし、アポロ計画の予算は300 億ドル、当時のレートで10兆円以上で、そのときの日本の国家予算が7兆円だった。それから推定すると、低く見積もっても、これを1つ作るのに10億ドルくらいはかかるだろう。
つまり、集積回路が発明されなくても、10億ドルをかけて、初代ペンティアムと同等のコンピュータなら作れたろう。ただ、これだけ高価では、応用分野も需要も限られてしまう。たぶん大国に数台設置するのが精一杯で、応用もほとんど軍事に限られたのんじゃないだろうか。それに何より、性能も今からすると貧弱だ。また、300~400万のトランジスタがあると言うことは、トランジスタの寿命がたとえ1万年だったとしても、毎日1個は故障することになる。
一方、2006年のプロセス技術なら、2ミリ角に460 万のトランジスタが載せられる。その値段は10円くらい。つまりアポロなみの複雑さが、今や10円で作れるようになっているわけだ。
その結果、高度な処理を、コンパクトで安価に提供できるようになった。
あらゆる機械にマイクロプロセッサ(MPU )を組み込み、自動制御することができる。これは最終製品の性能を上げるだけでなく、すべての製造装置の性能も向上させた。その結果、さらに優れたMPU の製作が可能になり、それがまた製造装置の性能を上げると同時に、MPU の応用範囲を広げる、正の循環を産んでいる。この技術は、現代文明の全てに、大きな影響を与えているんだよね。
最終更新時間 2006年05月01日 00:19
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空中窒素固定による緑の革命が最凶だと思います。
人口さえ少なければ、人類による地球への影響は限定的なものに留まりますから。
投稿者 kk : 2008年10月11日 19:36










