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2006/03/01

6匹のサル

 ダーウィンの番犬と呼ばれた、イギリスの生物学者トマス・ハックスレイだったか、その孫で『すばらしい新世界』を書いた小説家のオルダス・ハックスレイのどちらかだと思うんだけど、

「もし、6匹の猿がタイプライターに向かい、何百万年も何千万年も、でたらめにキーを打ちづづけたとすると、ついには大英博物館の全ての書物を書いてしまうことになるであろう」

 てなことをいったそうだ。(どちらか知っている人がいたら教えてください。なんとなくオルダスが言いそうな言葉なんだけど、昔書いたメモではトマスが言った言葉になっていて良くわからんのだ)

 なるほどねえ、そういうこともあるのかねえ、なんて何となく思っちゃうわけだけど、本当のところはどうなんだろうか。

 そこで、おサルさんがパソコンに向かってランダムにタイプするとどうなるか、実際のところを考えてみよう。

 まず、平均的な文字数を持つ書物としてハムレットを考えると、これにはおよそ10万文字が含まれているんだそうだ。

 この情報量は、1文字が8ビットだから、80万ビット=100キロバイトになる。

 それから、おサルさんの叩くキーボードのキーの種類を、とりあえず256種と仮定しよう。まあ、本当はもっと少ないとは思うけど、とりあえずこれくらいと言う事で。

 そんでまあ、おサルさんがパソコンのキーボードのキーを一回たたくと、それは256種類の記号のうち一つを選択することになる。つまり1つの記号は256分の1の確率で選ばれているわけだ。

 だから、全くランダムにキーを打った場合に、ハムレットという小説が書かれる確率は、
256分の1の10万乗を計算すれば良くて、これは10の-240824乗になる。

 まあ、とにかくとてつもなく小さな確率だということはわかるけど、なんだかピンと来ないよね。

 そこで、とりあえず、世界人口より多い100億匹(10の10乗匹)のおサルさんがたにに協力してもらって、この作業にとりかかってもらうことにしよう。

 このおサルさんたちは、みんなかなりのタイプの達人で、1秒間に10文字のペースでタイプできる。

 そいでもって、宇宙が始まってから現在までの間を少し多めに見積もって、ざっと10の18乗秒の間、不眠不休でこの作業に取り組んでいただく。

 これだけ一生懸命やれば、きっとハムレットの一冊や二冊は書けているに違いない。

 で、この計算は、10 × 10の18乗 × 10の10乗 = 10の29乗になる。


 つまり、おサルさんたちの全仕事量は、10の29乗字というわけ。
 これはかなり膨大な数で、ハムレット並みの長さの本ならば、10の24乗冊分にあたるわけだ。

 ところで、アメリカの国会図書館には、15×10の6乗冊の本があるそうだ。

 つまりこのサル文学は、その10の17乗倍もあることになる。

 もし、これだけのサル文学の本を図書館にしまっておくとすると、アメリカ国会図書館なみの図書館を、全世界の10億の地域に、それぞれ1億件づつ建設する必要がある。

 それで、これがハムレットになっているかどうかの確率はどうだろう。

 その計算は、10の29乗に、10の24万乗分の1をかけてやればいい。
 つまり、23万9971乗分の1ってわけ。あうー。

 あの、おサルさんたちの血の滲むような苦労や、莫大な数の図書館の建設は、いったいなんだったのでありましょうか。全く無意味な行為だったのでありましょうか。

 いやいや、なにもハムレットにこだわることはないじゃないの。こんだけやったんだから、ひょとすると、偶然、別の作品と同じになっちゃっているかも知れない。膨大なサル文学の中には、他ならぬ、いまここで書いている文章と全く同じものができていたって不思議はない。

 そう、そうかもしれないね。じゃあ、人類がこれまで描いた書物の種類を、まああてずっぽだけどざっと100兆冊、つまり10の14乗冊くらいとしてみようか。
 これは、年間100億冊のペースで1万年分だ。

 そこで、全サル文学が、全人間文学のうちのどれか1冊とでも一致している確率を計算してみよう。するとそれは、……23万9957乗分の1ってことになる。orz

 まあ、ようするにランダムに文字をうつだけでは、意味があるものを作るのは不可能だってことなのだ。

 それなのに、たいていの人は、非常に高い確率で、まともに読むことのできる文章を書くことができる。それは文字、文法、分脈、意味、作者の感性、その他の、低レベルから高レベルまでの様々なルールによって、確率がどんどん絞られていくからなんだろう。

 一つの文章が産み出される事っていうのは、まさに奇跡といって良いんじゃないかな。


 ちなみに6匹のサルのネタもとを探してネットを漁っていたら、この話は『キッテル熱物理学』の4章の演習問題に出てくるという情報を目にした。うおー、キッテル熱物理学と言えば、大学生の頃好きだった教科書の一冊で、今も取ってあるのだ。で、早速書庫を探してみてみたところ、キッテル本ではキーボードのキーの種類は44としてあった。まあ、だからといって結論に大差はないんだけどね。
 また、これと似たテーマで、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『バベルの図書館』も面白いとか書いてあったりする。うーん、すっかり忘れていたけど、この本からは色々影響を受けていたんだなあ。
 ただ、ネタもとはハックスレイとしか書かれていませんでした。(T_T)

最終更新時間 2006年03月01日 05:18

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http://www.apologeticspress.org/articles/2340
なんかこれだとトーマスの方みたいですね。

投稿者 ROCKY 江藤 : 2006年03月01日 23:18

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