心を読む機械とテレパシーマシン(その1)
テレパシー・マシンという観点から神谷さんの研究はどういう意味を持つだろうか。
この実験でも、4人の被験者の脳画像パターンはそれぞれ全く違っていて、ある人用に計測したパターンでなければ、その人がどの傾きの縞模様を見ているかは当てられない。
つまり、脳情報が個性的で一人一人違っているという事は揺るぎない事実なわけだ。
ただ、ある人のある画像パターンが、ある傾きに対応しているということは、コンピュータが学習している。つまり、ある人の脳情報を、外へ、記号として取り出す事ができているわけだ。
だから、それを使って、翻訳しながら脳情報をやりとりすることは、原理的にはできるだろう。また、脳情報のマシンへのダウンロードも、できている事になる。
つまり、将来より優れた装置を作る事ができるようになれば、テレパシーマシンを作る事は原理的に不可能ではないわけだ。
もっとも、たとえそうだとしても、このやり方では大きなボトルネックが避けられない。
問題になるのは、ある人のある画像パターンが、どういう情報に対応するかをつきとめるのに、どれくらい時間がかかるかだ。
実験では、被験者に縞模様を見せ、その脳反応を記録し、コンピュータで分析してどのパターンがどの傾きに対応するかというプロセスを8パターンやるのに、だいたい45分かかるのだそうだ。
この時間は、未来技術なら、もっと高速化は可能だろう。とくにコンピュータによるパターン認識の速度はかなり上げられるはずだ。
だけど、脳パターンを得るには、縞模様を見せるなど、人間に刺激を与える必要がある。 こちらの時間は、将来的にもあまり短縮できそうにない。どんなに短くても秒単位より短くはできないだろうし、おそらくは数分以上かかるだろう。
このことは、有限の時間で、脳内のどれくらいの量の情報を記録できるかについて、大きな制限を課すはずだ。
そういえば昔、あずまひでおが、テレパシーで手旗信号のイメージを送ってコミュニケーションするって話を書いていたけど、そういうことはたぶんいつかできるようになるだろう。
たとえば、Aさんの発声の時の脳パターンを得て、Bさんの言葉を聞いている時の脳パターンに対応させて再生すれば、BさんはAさんの喋る言葉を脳内で聞く事ができるはずだ。つまり、Aさんが頭の中で「てんどんくいたい」とつぶやけば、Bさんにそれがつたわるわけだ。
もちろん、音声認識や音声合成の技術が非常に難しい事から類推すると、この脳情報によるコミュニケーションでも、認識率を上げるのはなかなか難しいかもしれないけどね。
また、それは、テレパシーという言葉が持っている、嘘偽りのない心と心が通じ合うというのとはかなり違ったものになる。基本的には、普通の携帯電話での通話と、あまり違いはないわけだ。
そういう意味でも、この種の技術は、障害者を健常者に近づけるためのものであって、人間を越えた能力を持たせるものにはならないだろう。
最終更新時間 2005年08月30日 17:37
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