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2005/04/25

言語の遺伝子と古代のうた

 僕は科学ライターをしているわりには、どうも不勉強で知らないことが結構多い。で、この間のインテリジェンス・ダイナミクス・シンポジウムの正高信男さんの公演で、言語の遺伝子の話を聞いて、ほえー知らんかったと思ったのでした。

 で、今回はそれについて思う事。

 人間の言語能力は、遺伝子によって制御されている。
 そのことはかなり前から、そりゃあそうだよねと思われていたワケだけど、なんと2001年に、その言語遺伝子が本当に見つかっちゃってたのだ。

 その名前をFOXP2といって、Anthony Monaco教授の率いる研究チームによって同定された、第七染色体の長椀の部分に乗っている単一の遺伝子だ。

 言語のように高度で複雑に見えるものが、単一の遺伝子で制御されているというのはちょっと驚きだよね。

 この遺伝子は、イギリスのMEという家族を3世代に渡って追跡調査ですることで見つかったものだった。

 失語症というのは、普通は卒中なんかの後遺症として現れる。ところがMEファミリーは半数が生まれながらに運動性失語状態なんだよね。つまりそれは遺伝的なものだってんで、一生懸命調べられたわけだ。

 失語症には、大きく分けて運動性失語と感覚性失語がある。
 運動性失語は、言葉の意味はわかっているけど、言葉を喋れない状態で、傷害されているのはブローカ野だ。

 面白いのは、喋る事はできないけど歌う事ができたりすること。SFファンなら、デビッド・ブリンの『知性化の嵐』シリーズの中で、賓ことエマースンが、喋れないけど歌えるって場面がでてきたのを覚えているかも知れない。

 一方、感覚性失語症は、音は聞えるけど、言語としての理解ができないもので、流暢にデタラメの言葉をしゃべったりもする。これはウェルニッケ野の傷害で起きる症状だ。

 ところで、遺伝子がわかれば、分子進化の手法で、ヒトに近縁の動物の類似の遺伝子を比べて、その遺伝子の起源を調べることができる。

 それによると、人類が言語遺伝子を獲得したのはおよそ10万年前で、どんなに古く見積もっても15万年より古いことはないのだそうだ。

 これは人類が二足歩行をはじめた200万年前と比べると、びっくりするくらい最近のことだよね。

 つまり、30数万年前から3万年前まで活動していたネアンデルタール人は喋ることができなかったわけだ。
 仲間を埋葬し、集団で狩りもした彼らは、人間のような言語をもたなかったわけだ。

 10万年以前の人たちが、言語能力をもたないというのは、あくまでブローカ野的な言語能力がなかったという事に過ぎない。それがなかったとしても、なにがしか音声を用いたコミュニケーションはしていただろう。

 ブローカ野が傷害されても歌えるように、彼らのコミュニケーションは、ある意味で、音楽的なものだったのかも知れない。

最終更新時間 2005年04月25日 13:45

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トラックバック時刻: 2005年05月30日 16:08

 初めまして。友人から、この記事のアドレスを教えて貰い、読ませて頂きました。言語能力について感心を持っていましたので、トラックバックさせて頂きました。

投稿者 歌島昌由 : 2005年04月25日 23:58

>言語のように高度で複雑に見えるものが、
>単一の遺伝子で制御されているというのはちょっと

時計のネジが一本なくなって針が止まったからといって、
ネジに時間計測機能があると思う人はいない。
生物が遺伝子という積み木の山だというなら、
FOXP2という積み木の研究が示したことは、
それがたまたまたま言語関連運動機能表現型という
積み木の塔の中に存在しているということを示すに
過ぎない。

遺伝子欠損は分子レベルの事象。
ノックアウトされるのはタンパクであり、機能を落とせるのは
カスケードの途中にあるレセプターである。細胞は落とせな
いし、脳の特定領域がパンハイポになるわけではない。

投稿者 そんなわけないでしょ。 : 2005年05月06日 03:37

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