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2009/06/22

多自然型川づくり

自然の川には戻れないけど、これまでの人工護岸では失われてしまったものを補いたい。そういう観点から考えられている、多自然型川づくりってのがある。

実はそういうものはすでに増えてきていて、建設省の方針としても、河川改修を行う時は、原則として「多自然型川づくり」を採用することになっているらしい。あと、夢は潰えてしまったみたいだけど、長野県が田中康夫知事時代にやろうとしていたのも、こういう文脈の工法だったんじゃないかな。

多自然型川づくりは、もともとスイスやドイツでは「近自然~」といって、1970年代から行われてきたものらしい。ようするに、川を可能な範囲で、自然に近づけていくやり方なんだよね。

具体的には色々あって、たとえば今までコンクリートだった護岸に、40センチくらいの土をかぶせて草や木が生えるようにするってのがある。

これだと、護岸としての強度はほとんど変らず、自然に近い環境を作ることができる。また、護岸を石組みにかえて表面積を増やし、微生物が繁殖しやすくしたり、粗朶(そだ)といって、細い枝を束ねたものを置いたり、積極的に柳などの植物を植えて、根で地面を固めるなんてやりかたもあるし、山奥で流れの急な岩場だと、自然に護岸になっているから、あえて工事をしないってこともある。

ようは一本の川でも、場所場所に応じて、肌理こまかくやり方を変えていくわけ。

この多自然型の良いところは、河川の氾濫は防ぎながら、あるていど自然に近い環境が回復できるってことだ。その結果、海までの汚染なんてことは多少なりとも緩和できるだろうし、都会でもくつろげる自然がふえてくることが期待できる。もちろん、お金は高くつくだろうけど。

ただ、こういうことをするには、その川がどういう性格のものかをよく理解しなければいけないし、工事にもこれまでとは違った意味で、高い技術が要求される。そのため、現状では、この多自然工法を行える技術者の数は、まだ不足しているようだ。

たとえば、その川の個性、生態系とかを一切考えずに、川の中になんとなくそこの土地のものでもないような植物の花壇みたいなをつくって、名目は多自然型なんてのもありがちみたい。

それから問題なのは、川の自然は、川だけの問題じゃないって事なんだよね。

川は本来、河川敷きが広くあって、色々方向を変えながら流れていた。でも、今ではそこには家が建ってしまっている。すると、昔の自然の川と同じゆるやかな傾斜にするには、今ある家をどけて戻すしかない。そりゃあ、いくらなんでも無理だよね。

また、川畔林といって、川の脇にできる林も、川の環境に大きく影響する。川畔林があると、川の上を木々が覆って、魚が鳥に狙われにくくなったり、直射日光が当たらないから真夏でも水温が高くなりすぎなかったりする。雨も、木にあたり、下草に吸収されてゆっくり浄化されてから川に入るので、水質にも影響がある。

ところが、行政上の区分が違っていたりすると、川の自然を守ることが決まっていても、川畔林がばっさり切られちゃうなんてことも起きちゃうんだよね。いわゆる縦割り行政の弊害ってやつだ。

また、川に一気に大量の水が流れこまないようにするには、都会の舗装をなんとかしなけりゃいけない。たとえば家の上に降った雨を雨樋を介して下水に流すなんてことはせずに、家の下の地面に吸わせ(雨水浸透升というのを作ってそこに流す)たり、歩道なんかは透水性舗装にして、できるだけ雨を地面に吸わせてやる。これをすると、都会のヒートアイランド現象の緩和にも役立つはずだ。

てなわけで、川の自然を本当に回復するには、川につながる周りの環境全体を、きめこまかく手直ししていくほかはない。でも、そこまでの認識は、まだ政府にも一般にもほとんどないんだよね。

ただ、多自然型川づくりは、そういう大きなレベルでの、自然と人工物とのより良い組み合わせを考えるきっかけの一つにはなるんじゃないかなあ。

最終更新時間 15:14 | コメント (0) | トラックバック (0)

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