対談第3回「オリジナルキャラクター開発・育成のポイント」(その9)&2009年総括その1・温故知新&エンタメのデフレ化
メリークリスマス。今年もいよいよ残り僅か、「ひこにゃん」が冬至の22日に彦根城で餅つきパフォーマンスをしたり、2010年1月1日から始まる平城遷都1300年祭を控えて「せんとくん」が各種イベントに出演したりと、ご当地キャラ達も新年に向けての準備が始まっています。
ということで、年末らしく2009年を振り返ってみます。不景気の中、デフレ消費、身の丈消費などのキーワードが飛び交う中、キャラクター業界もそういった動きと無縁ではなかったようです。
まず大きなトピックとしては、実物大ガンダムが夏のお台場に出現したことがあげられます。期間限定の希少性もあって、イベント集客装置としての絶大な威力を発揮し、ガンダム30周年を世間にアピールしただけでなく、社会現象とまでいえる盛り上がりに貢献しました。
この実物大ガンダムが2010年7月に静岡に移設、再び組み立てられる予定とのニュースが本日配信されました。2011年5月以降は他県での展示もあるそうです。新幹線からも見えるらしいんで、見逃した方は来年ぜひ。
3D映画元年とも言われた今年、クオリティがアップしたCG映像にすっかり慣れっこになった視聴者がどんなものを見せられてもワクワクしなくなってきた中、こういった一見無茶な試みが素朴な驚きを生み出したことは、バーチャル映像全盛期のアンチテーゼとしてなんとも皮肉です。
これは前回ご紹介した神戸の鉄人28号についても当てはまることで、例えば自分の世代で言えば富士山近辺にマジンガーZ、浅間山近辺にゲッターロボなど、全国各地に実物大の巨大ロボが建造されれば凄いよなあ、などと想像(妄想?)してしまいます。
そしてここ数年続いてきた戦国武将ブームが、歴女と呼ばれる熱心なファン女性達と共に一気にクローズアップされた一年でもありました。
ブームに至る背景としては、大河ドラマでイケメン俳優達が立て続けに起用され続けたこと、戦国無双、戦国BASARAなどテレビゲームが敢えて意表をつく設定を用意したこと、そして武将のご当地キャラ化によってコアファン以外にも幅広い層が興味を持つきっかけを作ったこと、など様々な要因が考えられます。
いわゆる草食系男子へのアンチテーゼ、現代では難しい男らしい生き様が憧れの対象になったのでは、果てはBL系(ボーイズラブ系)に萌える腐女子と歴女が一部重なっているのでは、などといろいろ想像が膨らみますが、いずれにせよこれまでの「戦国武将」は、中高年男性がビジネスリーダーの模範としてきた、一歩間違うとオヤジくさく古臭いイメージで受け取られがちな存在でもありました。
たとえリアリティとは無縁であっても、イケメン化や無双化などわかりやすく楽しい要素が付与されることで再活性化を果たし、知名度が低めだったクラスの武将にも脚光が当たるようになりました。一連のブームによって新たなファンが確実に増えてきたのは、興味深い事実です。
上記はいずれも、既によく知られた題材に、大胆な仕掛けやアレンジを用意して話題性を高め、様々な物語や空想が楽しめる場を用意してファン作りを促進、新たな価値の創造に成功した「温故知新」とも言える事例で、同じく今年ヒットした「仮面ライダー」「ウルトラマン」「ヤッターマン」、そして「ヱヴァンゲリヲン」などの劇場版も同様の構造を持っています。
また、何らかのイベント(参加費無料のものも多数)を核としてクチコミ的に広がったものが、テレビや新聞、雑誌などのメディアで取り上げられて更なる話題になった点でも共通しています。これらの背景には、ブログやTwitter、ケツダンポトフのダダ漏れ中継で知られるUstreamなど、より手軽で即時性のあるCGM手段の一般化があげられます。
ただ一方では、イベント会場に居合わせた人が静止画・動画・コメントを交えた情報をすぐに発信し、興味を持った人がどこからでも無料で受信できるという情報環境の変化は、お金をかけずとも楽しむことが可能な「エンタメのデフレ化」を招いている、とも言えます。
その結果、既存のエンターテイメント事業や広告事業などのビジネス基盤が揺らぐ、という側面も目立ちつつあるわけで、そんな中でどんなコミュニケーション展開がどんなビジネスを創出するのか、キャラクターを使った興味深い事例について、次回の2009年総括・その2で紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、対談シリーズ第3弾として「オリジナルキャラクター開発・育成のポイント」をテーマにしたマインドワークス・エンタテイメント近藤健祐社長との対談を引き続き掲載します。
前回に続いて、オリジナルキャラクター育成に際してマーチャンダイジングする上での留意点について、そしてご当地キャラクターやコラボキャラクターをライブハウスマーケティング手法で盛り上げるためのアプローチについて、具体例を交えた興味深いお話をうかがっています。
なお、この対談では、筆者の同僚で、同じく研究開発部門の立場からキャラクターマーケティングに携わっている稲葉と、クリエイティブ部門でオリジナルキャラクター開発・提案に携わっているチームの屋木、高橋、大垣にも同席してもらい、各々の視点や問題意識に立っての意見交換を行っています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.オリジナルキャラクター育成に際しての留意点
2)マーチャンダイジング展開する上での留意点は?(続き)
近藤: ヒットの法則が多様化してきているような気がします。「ウォレスとグルミット」や「チェブラーシカ」などクレイアニメーション、ストップモーションアニメーション、絵本、ネットアニメなどここ数年商品化の分野で様々なカテゴリーのライセンスプロパティが増えてきました。
屋木: クレイアニメーションって、あれはアニメありきな感じはします。あの動きとか、作りが。キャラクターだけ見たらそうでもないかもしれないけど。
稲葉: あの羊(「ウォレスとグルミット」のショーン)が良いですよね。
近藤: あれも丸っこい形状ですね。
屋木: 「ウォレスとグルミット」は大人受けするな、っていう感じがあります。ストーリーもそうですけど。
近藤: 1997年に「ウォレスとグルミット展」が開催された時は、かなりの人数のお客さんがソニービルに来場したそうです。ものすごくコアファンがいて、(グッズも)日本で手に入らなかったので、日本で見られるというので来場者数がかなり多くなったと聞いています。私自身、当時は知らなかったので、「こんなすごいものがあったんだ」みたいな驚きがありました。
稲葉: 外国の方で、東京に来る時にポケモンセンタートウキョーに必ず行くという人がいます。外国ではそこまで整えているものはないんだそうです。東京観光の人気スポットの上位に、皇居、築地市場に並んでポケモンセンターが出てくるというのが凄い。
近藤: 外国の方たちは、自分のところのキャラクターのヒストリーはあまり知らなかったりします。
以前契約していたキャラクターで、原画展やヒストリーを紹介するイベントをしたいと米国の版権元に申し出たところ、「原画は作者本人、出版社が所有しているので、課すことが出来ない。」「歴史を紹介できるようなまとまったデータがない」と言われた事があります。
屋木: 昔のことはあまり気にしないんですね。
近藤: 日本で原画展というのは、「貴重なものが見られる。」という意識で皆さん来られるんだと思います。我々もその貴重な歴史を紹介し、単にグッズを購入するだけではなく、開発した時の想いやデザインが完成するまでの苦労など、そのキャラクターの本質を知って欲しいと願っています。原画に対するこだわり、ヒストリーとかオリジンを見せるというのは日本人独特かも知れません。
【キーワード2-⑧:キャラクターの原画展が流行るのは、日本独自の現象?】
屋木: 原画展は日本文化特有みたいなところがありますか?
近藤: ヨーロッパではどうかわからないのですが、米国の数社と話した限りだと、「キャラクターライセンスビジネス」において言えば、日本は、そこに対するこだわりが大きいと感じます。
原画の画家としてちゃんと発表している場合は、向こうでも開催されている事もあると思います。でも海外の方は、「キャラクターの原画展って何?」みたいな感じです。キャラクター=アニメ、子供、玩具、グッズと広がるものなので、キャラクター=アート、商品、原画展とはいかないんですね。そこに原画を見せるシチュエーションというのは存在しないのです。「何それ?」みたいな感じに言われます。
屋木: 楽屋の裏みたいな感じですか?
近藤: 「それ見せて何になるの?」と言われた事すらありますね (笑)。日本人って比較的、「このキャラクターってどう生まれたんだろう?」とか探求したがります。「ウォレスとグルミットの原型が見れたらうれしい」とか。
稲葉: そういう意味では、「ひこにゃん」のような、「由来があるから出来た」みたいなところに響くんですかね。
近藤: 「ひこにゃん」人気は、キャラの可愛さもあるんだと思います。パーツがシンプル、目がシンプル。「せんとくん」も、実はシンプル。キモカワですね。
稲葉: 来年が本番だから盛り上がって欲しいです。でも話題になったのが早すぎたのではないかという懸念もあります。
野澤: どうやって現場に人を呼ぶかが課題であれば、来年に向けてもう一押しがほしいところかも。
ということで、「せんとくん」に限らず、博覧会や国体などの地域イベントをマスコットキャラクターを使って盛り上げ、来場者増はもちろんですが、地域ブランド向上にまでつなげる方法について、体系的に考える時期に差し掛かっているのでは、と思います。
3)ご当地キャラやコラボキャラをライブハウスマーケティング手法で盛り上げるには?
【キーワード2-⑨:ご当地キャラによる地域イベントPRアイディア例】
近藤: 関心の低い人だと、平城遷都1300年祭が終わってしまったのでは?と思ってしまうくらいに露出していますね。例えばですが、「せんとくん」の注目度は上がっているので、全国キャラバンみたいな企画を用意して、北海道からスタート、各47都道府県を回って各県へのPRが終わった時に、ゴールでオープン。知名度の高さをプロモーションに利用するのもキャラクターを育成してゆく上で重要ですね。「各都道府県」に来る事で全都道府県のPRとかすると面白いかもしれません。
野澤: その間、各都道府県で全国のゆるキャラたちと共演するとか。
稲葉: 聖火リレーみたいなもんですよね(笑)。
近藤: 全部回るなら48週前からスタートするとか。それか、県庁所在地を回って、県庁に挨拶するとか。
稲葉: なるほど、各地域で「宮崎では・・・」みたいなニュースになりますよね。
野澤: 確かに自分たちで仕掛けなくても、地元メディアやファンたちが全部載せてくれます。
近藤: それでカウントダウン。
稲葉: それぞれの地域で、47なら47個のストーリーが成立しますね。
野澤: ゴールでは、ご当地のキャラが総出で出迎えてくれるとか。
近藤: いいですね。涙のゴール。スタッフは、ゴールする時に泣いてしまいますね。辛いですよね、48週。それをネットで中継したり。このアイディアに限らず、もう何かしら計画されているかとは思いますが・・・
野澤: 確かにそういう戦略、ストーリーが見えると面白いですね。「せんとくん」が一生懸命やってるよ、って共感し、応援してくれる人も増えるでしょうし。
近藤: 費用を掛けずとも、PRし、宣伝露出をかせぐ事は、通常のライセンスをする上でも大切ですね。ブランド力、発信力のあるキャラクターにはメディアが注目するので。「注目させる」事は「ブランディングの一環」になると思います。以前も話しましたが、首都圏以外のエリアでのプロモーション展開も非常に大事なので、自分が住んでいないエリアも意識する事が必要ですね。
屋木: 「こういう風に反応するよ」って想像できるプランはすごく説得力ありますね。皆がそう思える風な発想は難しいですから、そういう発想は確かに素晴らしい。
野澤: 前もって地方局にメールを送って、「来週出没しますのでよろしくお願いします」って。
稲葉: 「地元のご当地キャラの皆さんもご一緒に」と誘えば。
近藤: 地方のテレビ局や、地方紙、ミニコミ誌とか。それらへの発信も忘れてはならないと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以降、次回に続きます。どうぞお楽しみに。
今回が当ブログの2009年更新のラストになります。2010年は1/4週から再開しますので、なにとぞよろしくお願いします。
最終更新時間 2009年12月24日 10:37
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.blwisdom.com/mt/trackback/4199









